新鋭から重鎮まで、国内外のアーティストの名演を至近距離で堪能できるビルボードライブではこの秋も様々な公演が開催される。本稿では、2025年9月から11月にかけて行われる公演より、3組のギタリストのステージにスポットを当てていく。


 

押尾コータロー

押尾コータローだけにしか演出できない四季をテーマにしたコンセプトライブ

まずは日本を代表するアコースティックギターの名手、押尾コータローが9月26日(金)と27日(土)にビルボードライブ大阪、10月3日(金)と4日(土)にビルボードライブ東京にてコンセプトライブ〈ACOUSTIC GUITAR NIGHT ~Four Seasons Story~〉を開催する。

2023年から毎年この時期に行われている同公演は、春夏秋冬をテーマに、1ステージごとに特別なセットリストが組まれるという、まさに一期一会のパフォーマンスが約束されたライブだ。

押尾の演奏レパートリーはオリジナルやカバー、そして今年6年半ぶりにニューアルバム『PICK POP II ~meets the WORLD~』をリリースしたDEPAPEPEとのユニットDEPAPEKOでの楽曲など関連作も含めても膨大な数におよぶ。

今回のライブの予想も兼ねて、そんな豊富な演奏レパートリーの中から四季を感じさせる楽曲をいくつか挙げていこう。例えば、メジャー3作目『Be HAPPY』(2004年)に収録された“桜・咲くころ”は優しいアルペジオの音色が春の木漏れ日を連想させ、2005年のアルバム『Panorama』のオープニングを飾る“Departure”などは疾走感のあるストロークを聴くたび真夏のアスファルトを駆け出していくようなイメージが想起される。

他にも、センチメンタルなメロディーラインが木枯らしの吹く秋の哀愁を感じさせる“セピア色の写真”(2006年作『COLOR of LIFE』収録)、メジャー1作目に収録され、ボディヒットも絡めた激しいパートも聴きどころな坂本龍一“Merry Christmas Mr. Lawrence”のカバーなどはそのまま冬の選曲として披露するかもしれない。

筆者も過去にとあるイベントにて押尾のパフォーマンスを至近距離で直視したことがあるが、曲を聴くだけでなく、繊細かつ大胆なフィンガーピッキングを眺めているだけでも瞬く間に時が過ぎてしまうほど魅了されてしまった。ステージと観客との距離が近いビルボードライブであれば、ボディヒットの音すらマイクを通さずとも聞こえるだろう。四季折々の選曲と圧倒的なテクニックを、ぜひ直接体感してもらいたい。

 

サニー・ランドレス

サニー・ランドレスは貴重なソロセットで9年ぶりに来日

かのエリック・クラプトンに〈最も過小評価されているが、最も進化した音楽家〉と言わしめた米ニューオーリンズを代表するギタリスト、サニー・ランドレス。彼の来日公演が、10月18日(土)と20日(月)にビルボードライブ東京にて行われる。

ランドレスといえば、やはりスライドギター、しかも彼が編み出した独自の奏法〈ビハインド・ザ・スライド〉が有名だろう。スライドバーを弦に当てている最中、バーとナットの間にある弦を押さえることで多様なコードとフレーズを奏でられるこの奏法は、ブルースギターの表現の領域を広げてみせた。

現在74歳のランドレスは、80年代後半からジョン・ハイアット、マーク・ノップラーらのレコーディングやツアーに参加して腕を磨いてきた。その当時から他のギタリストたちを圧倒するほどのオリジナリティとテクニックを獲得してはいたが、彼の名が大きくフィーチャーされることになったのは2004年、クラプトン主宰の〈クロスロード・ギター・フェスティバル〉に出演した際のこと。そこでのプレイとクラプトンからの愛ある紹介によって、改めて〈スライドギターの魔術師〉の異名とともに世界が彼を認知したのだ。

今回の来日は2016年以来、9年ぶりになるようだ。この間にジェイク・シマブクロの作品に参加したり、2020年には最新のスタジオアルバム『Blacktop Run』をドロップ、直近では今年7月にライブ盤『Live At The 2025 New Orleans Jazz & Heritage Festival』もリリースしているので予習盤としてオススメだ。

なお、今回のビルボードライブ公演はランドレスのみのソロセットで行われるとのこと。バンドセットでは味わえない、ソロならではのエネルギッシュなステージが拝めるに違いない。