
TOMOOが考えるJ-POPの定義は〈甘辛〉
──『TWO MOON』ではブラックミュージックからの影響を反映したアレンジが多かったですけど、『DEAR MYSTERIES』ではよりJ-POP的な楽曲が増えた印象です。本作にも様々なアレンジャーが参加していますが、それぞれどのようなオーダーで制作を進めていったのでしょうか?
「曲がフラットな状態から始まってブラックミュージックとJ-POPに枝分かれしていったのではなく、そもそも楽曲の構成自体がJ-POP的なものが多かったんですよ。“あわいに”は個人的にJ-POPだと思いますし、“コントラスト”と“エンドレス”もめちゃくちゃJ-POPだなって。
特に“コントラスト”は高校生が主人公の青春モノである『アオのハコ』という作品から生まれたものだったので、それに合わせて自分にとっての10代の頃の感覚を呼び覚まそうとしたんです。そうしたら自ずと当時聴いていたJ-POPが出力されたんですよ」
──なるほど、面白いですね。
「それでアレンジも小さい頃から観ていたアニメの編曲を担当されている江口亮さんに頼みました、〈最初にアニメの曲をやる時は江口さんに頼む〉って決めていたので。
個人的にカラッとした風景を描きたい時は自分に根付いたブラックミュージックを選択したくなるんですけど、冷たくて湿度のある風景を想定しているとブラックミュージックから離れていく傾向にあるんですよね。“高台”なんかは古いJ-POPというか、もはや合唱曲ですし(笑)」
──元々抱えていたもののうち、様々な要素が重なって今出てきたものがJ-POPであると。
「はい、複合的な理由でこうなったんですよ。Jの景色しか知らない状態で作っていた昔の曲を投入したのと、頂いたチャンスのテーマがあんまりブラックミュージックの景色じゃなかったっていう。“エンドレス”もタイアップのお話を頂いた『全領域異常解決室』がテーマ的にファンキーではないし、ピアノ弾き語りがいいっていう判断になったんです。
“LUCKY”はブラックミュージックがベースなんですけど、サビでは『CITY THE ANIMATION』をイメージして、子供の頃に観ていたアニメのエンディングに求めている大衆感みたいなのを入れた結果、J-POP的になったと思っています。
それと、〈TOMOOってこんな感じなのかな〉っていう薄ぼんやりとした像が『TWO MOON』によって見えてきたと思うんです。ちょっとファンキーな雰囲気なのかな、みたいな。その反動も若干あるんじゃないかって。なので自分の好みが変わったわけではないです。例えば『DEAR MYSTERIES』だと“Present”はディキシーランドジャズを意識したのもあって、楽曲自体が洋楽チックな作りになっています」
──この機会に、TOMOOさんが考える〈J-POP的〉なものについて伺いたいです。J-POPは定義も広いですし、音楽的な側面から見ればブラックミュージックの要素もJ-POPの中には組み込まれている。なのでTOMOOさんがどのような想定をしてJ-POPを作っているのか気になります。
「んーーー……歌謡み? 歌謡みが残っているかどうか、ですかね」
──〈歌謡み〉ですか。
「メロディーラインが洋楽っぽくないというか、〈英語は当てはまらなそう〜〉みたいな高低差があるのがJ-POPなんじゃないかと。シンプルに反復するんじゃなくて、メロディーに山谷があるんですよ。景色の展開もあって、山の次は川です、川の次は野原です、その先で丘になって海まで行きました……みたいな。そういうのって洋楽的じゃないと思います」
──なるほど。
「それと、メロディーの高低差による味の濃さですよね。J-POPって甘辛じゃないですか? 〈塩とコショウだけでいけるやろ〉じゃなくて、醤油と砂糖とみりんとお酒の応用によって味付けされているというか。すき焼きなのか焼き鳥なのか、それとも照り焼きやみたらし団子なのか、っていう。そういった料理に甘さと辛さが同居しているように、J-POPにも温かさと切なさが同居していると思うんです。そしてその割合は決まっていて、ハッピーとシリアスが絶妙にミックスされる塩梅は必ずある。それを表現しているものがJ-POP的なんじゃないですかね」