ロック的な美意識から離れて
オクトーンを通じてクライヴ・デイヴィスの主宰するJと契約したマルーン5はマット・ウォレスと共にファースト・アルバム『Songs About Jane』(2002年)をレコーディング。バンドを一躍スターダムに押し上げることになる同作からは、当時のビート感を備えたブルーアイド・ソウル風味の“This Love”をはじめ、アダルト・コンテンポラリー調のラヴソング“She Will Be Loved”、比較的ロック色の強いファースト・シングル“Harder To Breathe”、そして日本でも特に人気がある先述の“Sunday Morning”という4曲が今回の『The Singles Collection』にセレクトされている。なお、シングル群の人気に後押しされた初作『Songs About Jane』は、リリースから26か月後の2004年9月についに全米TOP 10入りを果たした。
アダムの華のある存在感やクリアでタフなヴォーカル、ポップで隙のないソングライトのセンスを押し出したマルーン5は、いわゆる従来のロック・バンド的な美学からはかけ離れたもので、すでにロック系のメディアから手厳しく評されていたが、そもそも最初から彼らがそういうバンドでないことは明白だった。ローリング・ストーンズを筆頭に名だたる面々とステージを共にした彼らは、そのことを2007年の2作目『It Won’t Be Soon Before Long』でより明快に示すわけだが、同作に先駆けては、ツアー生活に伴う腕の不調からライアンは2006年9月にバンドを正式脱退し、ミッキー・フリンが加入するという交代劇もあった。
その2作目からは軽快にファンキーな“Makes Me Wonder”が初の全米1位を獲得。アクの強い“Wake Up Call”とポリス × バックストリート・ボーイズ風の“Won’t Go Home Without You”も含む3曲が今回のベストに収まっている。
次なる3作目『Hands All Over』(2010年)で起用したのは、90年代からロック/カントリー界で実績を誇るプロデューサーのロバート・ジョン“マット”ラング。曲作りの面で厳しく鍛えられたというアダムは、ここに“Misery”を残した。そして、商業的に失速したアルバムへのテコ入れで作られたのが、クリスティーナ・アギレラとコラボしたエレポップ・ディスコ“Moves Like Jagger”(2011年)だ。シェルバック&ベニー・ブランコがプロデュース/共作したこの曲の全米No. 1ヒットによって、同時代のコールドプレイやライアン・テダー率いるワンリパブリックと並ぶ、プロダクション主導のポップメイカー集団という方向性は定まったと言えるのかもしれない。