ワープきってのエクスペリメンタリストが奥深く潜り込んだテクノロジーと感情の狭間

 昨年の編集盤『Feast / Beast』を間に挿み、2012年の『Iradelphic』以来となるオリジナル・アルバムは、ストレートに『Clark』と題されている。今年の春に出たEP所収の“Superscope”(アルバムには未収録)は昨今のクラーク・サウンドらしいフィジカルなモードを反映したものだったが、アルバムはその側面も内包しつつヴァラエティーを増強。安直に分類するなら、ハード・テクノに舵を切った『Turning Dragon』(2008年)と有機的な『Iradelphic』を両獲りしたような……フロアからベッドルームまで機能性に幅を与えた楽曲がアルバムに流れを作っているのだ。〈集大成〉と呼ぶのももっともらしいが、ここにきてセルフ・タイトルを冠した理由はそんなところにもあるのかもしれない。 

CLARK 『Clark』 Warp/BEAT(2014)

 そんなわけで、アルバムにはいままでにない物語性が備わり、一曲ごとの関係性が場面転換のダイナミズムを生み出している。本人の「音楽とは彫刻のようなもの。まさに運動量が最高潮を迎える瞬間を捉えようとするようなものだ」という弁を勝手に借りれば、硬質なビートの躍動する瞬間を繊細なプロダクションが彫り出してループしたかのようなダンス・トラックが特に素晴らしい。『Turning Dragon』以降のフロア感覚を全開にした“There’s A Distance In You”、機能美に富んだシンセ・ファンク“Banjo”などは、そのエッジーな好例じゃないだろうか。一方、要所で紡がれるピアノのメロディーや自然音、そして本編ラストに訪れるビートレスの“Everlane”で極まるアンビエントな音像にクラレンス・パークの風景を思い出す人もいるかもしれない。いずれにせよ、これは文句ナシに彼の最高傑作と呼んで差し支えないだろう。

 

▼クラークの近作

左から、2008年作『Turning Dragon』、2009年作『Totems Flare』、2012年作『Iradelphic』、2013年の編集盤『Feast / Beast』(すべてWarp)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ