97年に移籍して以来、スクエアプッシャーが約20年ほど籍を置き続けているワープ。そんな老舗のブランドを代表するアーティストといえば、リスナーそれぞれによって認識は多様なはずだが、ここ数年の風潮だとフライング・ロータスやラスティの名を挙げる人が多いのではないか。いずれも2014年にはアルバムをリリースしており、特に2007年にワープ入りした前者は決定的な『You're Dead!』によって大絶賛を浴びたのも記憶に新しいし、2010年に契約した後者による『Green Language』も新境地を拓く内容となっていたものだ。そのように時代の顔役がワープのイメージを更新しているのは確かだが、一方で長年その看板を背負っていた大御所アクトたちの活躍が目立ったのも2014年の傾向だった。
まず、89年の“Dextrous”でワープ入りした在籍最長のナイトメアズ・オン・ワックスは、結成25周年を記念したベスト盤『N.O.W. Is The Time』にてキャリアを総括。さらにスクエアプッシャーと同じく97年に契約したプラッドは、これまた結成25周年という節目に発表した『Reachy Prints』でインテリジェント・テクノの粋を見せつけている。そしてテクノ・レジェンドとなると……もちろんワープ云々ではない昨年のサプライズ・ニュースとして、エイフェックス・ツイン久々のアルバム『Syro』の登場を思い出す人も多いだろう。そこで別格の規模感をアピールした後、今年に入ってからはヒップホップ色を濃くしたEP『Computer Controlled Acoustic Instruments Pt.2』のリリースも続いている。ちなみにそのエイフェックスの活動停滞と入れ替わるようにしてワープ・デビューしたクラークも、昨年アルバム『Clark』を発表。往時は期待のニューカマーと目されたものだが、彼もいまやキャリア15年に迫るヴェテランの域である。よく考えると2014年はワープの25周年イヤーでもあったはずだ。華々しく〈Warp 20〉を掲げてアニヴァーサリー感を演出していた2009年に比べて、昨年そうした動きを見ることはなかったが、それを起爆剤にする必要もないほどアップカマーとヴェテランが共に理想的な作品を残したことこそが、何よりのセレブレーションだったのかもしれない。
つまりレーベルの次代は、2013年の『Silver Wilkinson』や以降の『The Green EP』で評価をよりいっそう手厚くしたビビオや、セカンド・アルバム『Hinterland』を発表したばかりのローンレディといった、〈Warp 20〉期にレーベルの門をくぐった面々に託されているということでもある。ヤング・タークスから移籍して2013年に初のアルバム『Ilp』を出したクウェズ、同じくホットフラッシュから移籍してきたマウント・キンビー、さらに『R Plus Seven』で話題を撒いたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーなど、まだ(ワープにおける)直近の動向が見えない連中もいるものの、こうして振り返ってみると、相当にヴァラエティー豊かな話題作をコンスタントにリリースしてきたことがよくわかるだろう。
一方、その2014年の新規リリース組だと、オウテカやボーズ・オブ・カナダなど往年のワープ的な音響を持ち合わせた作風で注目されたのが、パテンの移籍作『Estoile Naiant』だ。また、ブライアン・イーノとカール・ハイド(アンダーワールド)のコンビも昨年ワープ入りし、『Someday World』と『High Life』(Opal)を立て続けに放って話題となった。そして、アンダーグランドのスーパー・グループ=フューチャー・ブラウンは、シングル“Wanna Party”を経て、今年に入ってファースト・アルバム『Future Brown』をリリースしたところである。
なお、スクエアプッシャーの新作に続くのは、これまた2014年ディール組のノジンジャ。シングル“Tsekeleke”やブリープのコンピ『Bleep:10』(Bleep)参加も記憶される彼は、シャンガーン・エレクトロを推進するソウェトのクリエイターで、5月末にはアルバム『Nozinja Lodge』が届けられる予定だ。そして6月にはハドソン・モホークのニュー・アルバム『Lantern』がいよいよ登場する。EPの『Satin Panthers』を発表した後は、TNGHTでの活動やカニエ・ウェスト周辺のプロデュースで多忙だったものの、往時はフライング・ロータスとも並び称される名前だっただけに自作にも本腰を入れてくれることを期待したい。