
暗いメルボルンと明るい東京
――ジェームズさん的に東京とメルボルンの音楽シーンの違いは感じますか?
ジェームズ「明るい人たちはまだ東京に残っています」
ermhoi「世紀末みたいな話……(笑)?」
――メルボルンの人は暗いんですか?
ジェームズ「オーストラリア人はスポーツにしか興味ないです。僕が好きなメルボルンにいるミュージシャンたちは、ほとんどみんな音楽を教えています(演奏が専業ではない)。ほかにベースになる仕事をやっています」
マーティ「僕はアデレード出身だから、外からメルボルンを見ると〈メルボルン・ダークネス〉という言葉があって……」
ジェームズ「〈メルボルン・ダークネス〉ね。僕は暗い。でも、明るくなっています。東京の周りの人たち、コミュニティのおかげで明るくなっています。メルボルンにはいいところもあるけど、住む場所ではない」
ermhoi「すごく面白い街だなって思うけどね。メルボルンの暗さはコロナ禍とは関係ない?」
ジェームズ「関係ない。もともと、ずっと無視されている気分を感じます」
ermhoi「メルボルンの人は褒め言葉とかを受け入れられないんだよね」
ジェームズ「アンコールがまったくない。有名な人がライブをやってもあんまりない」
マーティ「毎回アンコールをやるのは日本の文化じゃない?」
ジェームズ「メルボルンではたまにあるけど、ジャズバンドは絶対やらない」
マーティ「東京とメルボルンの違いは、東京は人が明るい、アンコールがある、だね(笑)」
ジェームズ「日本人のほうがアーティストやミュージシャンをサポートしています」
ermhoi「お客さんがサポートしてくれる感覚はあるよね。CDを買うとか物販を買ってくれるとかチケットを買って見にきてくれるとか。お客さんが主体的になってくれる感じが日本にはある」
ジェームズ「僕にとって東京はメルボルンよりいいですよ」
ermhoi「でも、オーストラリアもミュージシャンのレベルはものすごく高いと思います」
マーティ「ライブとかの仕事が少ないから、めっちゃ頑張ってるんだよね」
ermhoi「競争が大変なんだよね」
ジェームズ「そう。キャリアを積めないので、すごくユニークなものを作らないといけない」
ermhoi「お金を稼ぐ仕事は別にあるから、やる音楽のクオリティや意味を大事にしてるよね」
マーティ「ビジネスじゃないね」
ジェームズ「でも、たまに東京から離れて小淵沢とかに行くのも大事ですね」
マーティ「自然が大事よ~。東京に自然はまったくないもんね!」

マブダチの渡辺翔太、石若駿と作り上げた『Trio IV』
――マーティさんの新作『Trio IV: The Mountains, They Listen』についてもお伺いします。なぜ今回は石若駿さんと渡辺翔太さんとのトリオなのでしょう?

マーティ「駿とはザ・ラガフォーンズのツアーで初めて会いました。当時日本在住だったアーロン・チューライというコンポーザー/ピアニストが紹介してくれて。それが10年前。
駿とは現場が一緒になることが多いですね。去年なんか100何件一緒だった。駿は〈マイメン〉〈兄弟〉って言ってくれて、音楽を一緒にやるのはすごく安心。
翔太は、駿から紹介があったのが2018年の終わりか2019年に入ってから。駿が、〈翔太は素晴らしいピアニストで、いつか一緒にやってほしい〉って言ってて。当時、僕はいろんなライブをやっていて、たとえば早朝から名古屋競馬場でレースの間、1時間に1回、10分だけ演奏するとか。
そのとき、翔太は名古屋出身なので、〈一緒にライブをやろう〉ってブッキングしてもらって。僕の曲はそんなに簡単じゃないけど、最初のリハーサルから翔太はめっちゃすごいと思っていました。僕の曲も全部、演奏するのにぜんぜん問題なかった。で、翔太が〈僕の家に泊まってよ〉と言ってくれて、それからめっちゃマブダチになりました。毎年一緒にツアーをやったり、駿と一緒の現場も多くて。
じゃあ、駿と翔太とのトリオでやってみるかと思ったんです。2人とできたのはすごく嬉しい。すごく仲がいいし、音楽はなんでもできるし、なんでも話せる。すごく楽しいです」
――マーティさんの『Trio』シリーズは毎回メンバーが変わっていますが、それは常に違う音楽をやりたいからですか?
マーティ「そうですね。ジェームズもさっき言っていたけど、人のために曲を書くのが好きなんです。今回は翔太と駿をイメージして書きました」