2回目の「クリスマスの約束」を後押しした櫻井和寿からの手紙
1回目の「クリスマスの約束」は放送後から大きな反響があり、2回目以降へと番組を継続させる大きな原動力となった。2002年の放送では、小田の直筆の手紙が受け取ったアーティスト側に負担をかけてしまうのではないかとの配慮から、あえてゲストへ共演の依頼はせず、小田が1人でバンドとストリングスとともにライブを行うスタイルで収録された。番組では同年4月に発表したベストアルバム『自己ベスト』がオリコン1位になったことへの感謝の気持ちを表して、小田が選んだ曲のカバーに加えて、『自己ベスト』の収録曲も多く演奏された。

1回目の最後に流れた“この日のこと”が2回目の公開ライブのオープニングナンバーだ。この番組への小田の熱き思いがそのまま歌に乗って届いてきた。この年、番組で選ばれた曲は実にバラエティに富んでいた。椎名林檎“ギブス”、中島みゆき“化粧”、松任谷由実“海を見ていた午後”、宇多田ヒカル“First Love”、MONGOL800“小さな恋のうた”、吉田拓郎“今日までそして明日から”、Mr.Children“HERO”など。小田の自作曲では、1回目の「クリスマスの約束」でカバーした楽曲のアーティストたちの影響から生まれたという“キラキラ”も披露された。自分よりも若いミュージシャンたちからも学ぶ、小田の謙虚かつ貪欲な姿勢が印象的だった。
小田が櫻井和寿からの手紙を紹介する場面もあった。その文面で胸を打たれたのは〈小田さんの音楽と、僕らの音楽はもう繋がっているのだと思っています〉という櫻井の言葉だ。櫻井からの手紙を読んだのち、小田はこう語る。「櫻井くんや達郎くんからもらった手紙は僕の宝物です。何度もくじけそうになりましたが、どれだけ手紙に励まされたか知れません」。
音楽も手紙と同様に、コミュニケーションツールとしての機能が備わっている。その機能が働くのは、観客に対してだけではない。楽曲を丁寧にカバーすることは、作者へのリスペクトを伝えることでもあるだろう。番組ではカバー曲の練習風景も挿入されていて、小田がカバーする曲と全力で対峙していることも伝わってきた。終演直後のインタビューでの小田の言葉がすべてを物語っていた。「今日分かった。闘いだよ。外からでは分からないだろうけど」。
ゆずとの共演・共作も実現した3回目の「クリスマスの約束」
2003年の「クリスマスの約束」ではエポックメイキングな出来事があった。3回目にして初めてゲストが登場したのだ。SMAP“世界に一つだけの花”、一青窈“もらい泣き”、松山千春“恋”などを演奏したあとに、「歴史的な瞬間を迎えました。『クリスマスの約束』、初めてのゲストを迎えます」という小田のMCに続いてゆずが登場し、3人が並んでギターを弾きながらゆずの“夏色”を演奏した。世代を超えた3声のコーラスは爽快かつ痛快で、3人が自転車を漕ぎながら坂道を下る光景が見えてきそうだ。演奏し終わった瞬間の3人の笑顔も最高だった。
ゆずとの共演はこれで終わりではない。〈ゆずおだ〉というユニットを組み、楽曲まで一緒に作っていた。曲のタイトルは番組と同名の“クリスマスの約束”。この曲は観客と視聴者に向けた、3人からのクリスマスプレゼントでもあったのだ。楽曲の制作風景を収めた映像が会場に流れたのち披露されて、人間味あふれる温かな3人の歌声が聴く者の心まで包み込んでいくようだった。小田とゲストとの共作が実現する音楽番組という点でも、「クリスマスの約束」は画期的だったのだ。

ゲストとの共演はゆずだけでない。財津和夫とのチューリップ“青春の影”、根本要(スターダスト☆レビュー)との“木蘭の涙”という貴重なコラボレーションも実現した。それぞれの楽曲の素晴らしさ、歌唱の見事さとともに、楽曲に対する小田のリスペクトも伝わってきた。「クリスマスの約束」は、多くの人が〈なんといい曲なのだろう〉と、演奏された曲自体を再認識するきっかけにもなった番組ではないだろうか。リアルタイムで聴いていた世代にとっては説明不要の名曲であっても、世代が違うと知らないケースもあるだろう。この番組には〈名曲の再発掘〉という意義もあったように思う。