惰性にならず、謙虚なままで
そして、挑戦的な試みは、ヴォーカリストの井上花月、ドラマーの礒本雄太にも大きな成長をもたらしている。
「2作目までは、私という人間が熱を持ちすぎないように一歩引いた感じをめざしていて、その匙加減の調整に苦労したんです。今回は、歌詞における主人公の目線とナレーターの神的な立ち位置、それから歌う私、作者である迅くんという4つの視点を同じバランスで歌おうと意識していました」(井上)。
深く聴き込むとストーリーが浮かび上がる歌詞は、具象と抽象を巧みに使い分けることで想像力を遊ばせる余白を生み出しているが、リスナーがそれぞれの解釈で歌詞世界に没入できる作品になっているのは、複数の視点や役割を違和感なく見事に演じ分けた井上花月のヴォーカル、その名唱名演があってこそ。
「ドラマーとしては、自分の価値観やプレイスタイルの柔軟性が強まったというか、表現世界が拡がっているように感じます。生ドラムで叩いてたところを打ち込みに変えたり、逆に打ち込みを生ドラムに置き換えたり、その両方を重ねて鳴らしたり。電子音が正確無比に配置されているからこそ、生ドラムを意図的にグリッドからズラして揺れを活かすなど、ビートの選択肢が何倍にもなりましたね」(礒本雄太、ドラムス)。
「結局、私たちは3人とも曲の奴隷なんです(笑)。2オクターヴの高さだろうが、どれだけ低かろうが、曲に求められたらその声を出さなきゃいけない。だから、作品制作もライヴも本当に必死にやっていますよ」(井上)。
アルバム前編と後編で作風を大きく変化させたLaura day romanceだが、どちらの作品においても揺るぎないメロディーの普遍性が物語るように、素晴らしい音楽の前ではオーセンティシティーやモダニティーの違いさえも大きな問題ではないのかもしれない。
「機材や技術、音楽の定義などは常に刷新されていくと思うんです。だから、自分の表現を刷新していくのも自然なことだし、引き続きやっていきたい。自分たちとしては近未来的なものとオーソドックスでルーツ的なものを分けて考えてはいなくて、すべてのものは繋がっているし、〈あれが格好よくなって、これが格好悪くなって〉というのも、寄せては返すものだと思う。そのことをふまえたうえで、惰性で音楽を作らず、どんなアプローチを用いようが、謙虚な姿勢で学んでいきたいと思っています」(鈴木)。
Laura day romanceのニュー・アルバム『合歓る - bridges』(ポニーキャニオン)
2025年2月に配信リリースされたアルバムのCD盤『合歓る - walls』(ポニーキャニオン)
Laura day romanceの作品。
左から、2022年作『roman candles|憧憬蝋燭』、2020年作『farewell your town』(共にlforl)
左から、井上花月が参加したスカートの2024年のEP『Extended Vol.1』(ポニーキャニオン)、鈴木迅が楽曲提供した上白石萌音の2024年作『kibi』(ユニバーサル)