わざわざ曲を作って歌う必然性があるのかな?
――バンドやソロ活動を通して、坂本さんは女性や子どもなど他人へとボーカルを任せる曲をいくつも作ってきたじゃないですか。その点、今回の『ヤッホー』は坂本さんの声のみで歌われていますよね。
「何でかはわからないですけど、そう言われてみると今回は〈この曲は他人に歌ってもらいたいな〉とは思わなかったですね。 曲が必要としていなかったんだと思うんですけど。前は〈自分が歌うよりも女の人に歌ってもらった方が良くなりそうだな〉とか、そういう考えがあったんですけどね。僕が歌うと重くなりすぎるから、女の人に歌ってもらって軽さを出したい、みたいな」
――今回は意図的に重さを残したということですか?
「そうかもしれないですね」
――例えば冒頭の“おじいさんへ”は童謡チックですけど、坂本さん自身の声で歌うことによって皮肉のニュアンスが際立つというか。
「そうですね。まぁ、ちょっと自虐も入ってるんですけどね」
――坂本さんが〈おじいさん〉ということですか?
「色んな意味で取れるようにはしてます、ただ皮肉として捉える人が多いとは思うんですけどね。一応メッセージはあるんですけど……うーん、なんて言えばいいのかな。メッセージを正確に伝えるのが第一目的ではないというか。結局は曲として面白くて、楽しめたりノレたりすれば良いなって、ずっと思ってるだけなんです」
――『物語のように』の発表当時は「明るくやりたい」とよくインタビューで仰っていましたが、『ヤッホー』でもそのコンセプトは継続中でしょうか?
「そうですね。 なので基本的には自分が楽しくやれる音楽を作りたいんですけど、なかなかそれが難しく……細い道になってる感じで。楽しくしようと思っても、今回ぐらいのやつが精一杯っていうか、むしろ暗いみたいな(笑)」
――〈難しい〉というのは、主に歌詞ですかね?
「歌詞も難しいですし、〈わざわざ曲を作って歌う必然性あんのかな?〉って思っちゃうようなことが増えて。音に合わせて歌詞を考えているのは変わりないんですけど、例えば言葉遊びみたいなこともやる気があんまりしないというか、自分が楽しめなくなってきたんです。かと言って、重苦しいことも歌いたくないし。歌うことのハードルが高くなっているとは思います」
――去年“おじいさんへ”が先行シングルとして発表された時、自分を含めた周囲ではシリアスな反応が多かったんですよ。それは次の“あなたの場所はありますか?”でも同じで。
「今回は直接的な反応が多いっていうか、“おじいさんへ”を単に童謡っぽく受け取る人があんまりいなくて。今回のアルバムから急に社会的な歌詞を書いたわけではないし、昔とそんなに変わってないつもりなんですけどね。〈社会的ですね〉ってよく言われます」
――そういう反応って嫌ですか?
「いや、もうしょうがないですよ。出来ちゃったものはしょうがない。今回はそういう風になっちゃいました、それだけです」
――〈むしろ変わったのは聞いてる側だ〉という感じですかね?
「そこまでは言わないですけど、やっぱり自分で歌ってしっくり来るラインを探すと、ある程度は社会的なメッセージを含むようなところに落ち着いてしまうというか。アルバムについては、単に一曲ずつ作っていって、それをまとめたらこんな感じになっちゃいましたって感じです。曲順も聴きやすい流れを考えただけで、歌詞の内容を繋げて大きなメッセージを作るとか、そういうのはないです」
――『ヤッホー』を聴いてみると、朗らかな中にも“あなたの場所はありますか?”は大々的なダブワイズでパンチのある仕上がりになっているというか、強烈ですよね。
「フルートにはテープエコーをかけたんですけど、今回はボーカルにもかけたりして。テープエコーっていうのは割と昔から使ってて、ああいう風にかけるっていうのは、自分の中で定番っちゃ定番なんです。昔やってたような音をまたやっちゃったって感じで(笑)。〈新しいことに挑戦してみた〉とか、そういうのはないです」