真夏の全国ツアー〈大江千里ソロコンサート2026年夏「ふたつの宿題~黒画用紙ではりつめて~」〉で探求する終わりのない〈宿題〉。

 ニューヨークを拠点に活動するジャズピアニスト・大江千里が、この夏、日本ツアーで再び帰ってくる。2026年7月、大江千里ソロコンサート2026年夏「ふたつの宿題~黒画用紙ではりつめて~」が北九州公演を皮切りに全国で開催される。ポップスのトップランナーとして時代を駆け抜け、47歳で渡米、ジャズの世界に身を投じた彼は今、〈三代目・大江千里〉として新たな音楽の地平を切り拓いている。その現在地を、来日前のニューヨークから語ってもらった。

 今回で4年目となる夏の日本ツアー。その原点について大江は「懐かしい気持ち」だったと振り返る。ニューヨークでジャズに没頭し、余分なものを削ぎ落とす日々の中で、かつて自分の音楽を生活の一部としてくれた日本の聴衆の存在が、ふと胸に浮かんだという。「遠く離れた場所でピアノを弾いている僕の背中を、いつのまにか静かに押してくれていた」。その実感が、日本での夏のツアーへとつながった。

 彼にとってこのツアーは単なる公演ではない。「移動教室」だという言葉が象徴的だ。ジャズという新たな言語を学び続ける〈途上〉にいる今の自分が、かつての聴衆と再会し、「今こんなに面白いことを学んでいる」と報告し合う場。それは音楽を介した、温かな循環の時間でもある。

 今回のツアータイトルに掲げられた「ふたつの宿題」は、約40年前に生まれた楽曲だ。当時は答えの見えない未来への不安と憧れを歌ったが、今、その意味は大きく変化している。「わからないことの面白さ、豊かさ」を知った今だからこそ、あえてこのタイトルを掲げたと語る。「当時の自分が出した宿題を、今の自分がどう解くのか。それを皆さんと一緒に楽しみたい」。黒い画用紙に音を置くように、試行錯誤の過程そのものをさらけ出す――そんな挑戦的な意図が込められている。

 では、その「宿題」の正体とは何か。大江は静かに言葉を選ぶ。「自分を驚かせ続けること。変わり続ける自分を面白がること」。かつては答えを見つけることがゴールだと思っていた。しかし今は、終わりのない学びこそが本質だと気づいたという。「答案用紙には消しゴムのカスがたくさん付いている。でもそれが愛おしいんです」と笑う言葉に、現在の境地がにじむ。

 2026年のツアーでは、新たな試みも予定されている。ニューヨークで制作中のアルバムでは、デジタルビートとジャズの生音が融合したサウンドに挑戦しているという。その最前線の実験を、あえて日本では「ピアノソロ」という極めてシンプルな形で表現する。「デジタルの熱量を、生身のピアノでどう翻訳するか」。その試みは、彼自身にとっても未知の領域だ。クラシック専用ホールという響きの豊かな空間で、どのような音が立ち上がるのか、大きな注目が集まる。

 また、恒例となった少年少女合唱団との共演も本公演の大きな魅力だ。子どもたちのまっすぐな歌声に触れるたび、「音楽を始めた頃の純粋な興味」を突きつけられるという。「伸び盛りの命の響きとピアノが混じり合うと、世代を超えた大きな呼吸が生まれる」。その瞬間、会場はしばしば涙に包まれるという。

 今回のコンサートについて大江は、「ブルックリンでの音楽との戯れを曝け出す場所にしたい」と語る。40年前の自分からの宿題に、今の自分が新たな筆跡で答えを書き込んでいく。試行錯誤と発見がリアルタイムで交錯するステージは、「文化祭前夜の教室のようなワクワク」に満ちたものになるはずだ。「ジャズなのにスタジアムのように、歌って、泣いて、笑ってほしい」。その言葉には、ジャンルを超えたエンターテインメントへの強い意志が感じられる。

 ポップスのシンガーソングライターとしての〈一代目〉、ジャズピアニストとしての〈二代目〉、そして今、両者を融合させた〈三代目〉。その到達点について大江は、「どちらの自分も嘘をつかずに同居させること」と語る。ジャズに没頭する中で一度は封印したポップスの要素。しかし削ぎ落とした先に残ったのは、「メロディと言葉を愛する自分」だった。「ジャンルの壁を壊して、今までで一番自由な音を鳴らしたい」。その純粋な好奇心こそが、現在の大江千里を突き動かしている。

 終わりのない「宿題」に向き合い続ける音楽家の現在進行形。その答案は、2026年夏、日本各地のホールで鮮やかに描き出される。

 


LIVE INFORMATION
大江千里ソロコンサート2026年夏「ふたつの宿題~黒画用紙ではりつめて~」

2026年7月11日(土)福岡・北九州市立響ホール
開場/開演:12:30/13:00

2026年7月14日(火)広島市南区民文化センター
開場/開演:18:00/18:30

2026年7月18日(土)大阪市中央公会堂 大集会堂
開場/開演:13:30/14:00

2026年7月19日(日)東京・赤坂 サントリーホール[特別公演]
開場/開演:17:30/18:30

2026年7月20日(月・祝)千葉・青葉の森公園芸術文化ホール
開場/開演:13:30/14:00

2026年7月25日(土)新潟市音楽文化会館
開場/開演:13:30/14:00

2026年7月29日(水)神奈川・ヨコスカ・ベイサイド・ポケット(横須賀芸術劇場小ホール)
開場/開演:18:00/18:30

2026年7月30日(木)埼玉会館 小ホール
開場/開演:18:00/18:30

2026年8月1日(土)富山・オーバード・ホール 中ホール[富山市民文化事業団主催公演]
開場/開演:13:30/14:00

2026年8月2日(日)愛知県芸術劇場コンサートホール
開場/開演:12:00/12:30

2026年8月3日(月)長野・八ヶ岳音楽堂・八ヶ岳音楽堂主催公演

2026年8月7日(金)兵庫・アクリエひめじ 中ホール
開場/開演:18:00/18:30

2026年8月8日(土)兵庫・ルネサンスクラシックス 芦屋ルナ・ホール
開場/開演:13:00/13:30

2026年8月9日(日)岐阜・サラマンカホール
開場/開演:18:00/18:30

2026年8月11日(火・祝)岡山・倉敷市芸文館
開場/開演:12:30/13:00

公演オフィシャルサイト:https://classics-festival.com/rc/performance/oe-senri-2026-summer/