Photo by(株)フォトスタジオアライ 豊嶋良仁

宏美デビュー50周年、良美デビュー45周年、ともに祝う喜びに満ちたコンサート

 岩崎宏美がデビュー50周年、岩崎良美が45周年を記念した特別コンサートを9月28日に昭和女子大学人見記念講堂で観た。共演は、栁澤寿男が指揮する京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団と、ピアニストの上杉洋史。これだけ長いキャリアがあるのに、姉妹デュオは最近ようやく実現したとのことで、さらにフルオーケストラの伴奏で歌うことも珍しく、「ご褒美」だと語った言葉が意外だった。

 コンサートは、ザ・ピーナッツの“恋のフーガ”で始まる。ここでも意外な選曲の印象があったが、イキイキと展開されていく輪唱に「子供の頃によく歌っていた」という姉妹の姿が浮かんでくる。幕開けから昭和歌謡の洗礼を受けるカタチで、観客も嬉々として手拍子で参加する。2010年代からポップシンガーがオーケストラと共演するコンサートがブームになっているけれど、これはなかなか見られない光景だ。歌謡ショーのような雰囲気に驚いたが、2曲目以降は、また違った。

 2曲目からはそれぞれのヒット曲を入れ替わり歌っていく。岩崎宏美の“ロマンス”につづいて、岩崎良美はデビュー曲“赤と黒”と“青春”、“タッチ”をメドレーで。そして、岩崎宏美がMCでデビューを巡る父親とのエピソードを語りつつ披露した“思秋期”。若手時代から高い歌唱力が評価されてきたシンガーだけれど、大人になったいま慈しむように歌う“青春”に自分の10代が蘇り、思いの外感傷に浸ってしまう。近くの男性もしきりにハンカチで涙をぬぐっていた。

 フランス好きを自認する岩崎良美がフランス語で歌う“シェルブールの雨傘”、岩崎宏美が50周年記念で自ら歌詞を上杉洋史と共作した“永遠のありがとう”で、休憩に入る。

 2部は、松任谷由実の“卒業写真”のデュエットから始まる。観客の年齢層は幅広く、女性客も多かったが、2人と同世代の人にとってはまた“青春”が思い出される曲だったはずだ。

 次の曲がまた異色だった。岩崎良美が長年歌ってきたアニメ「おさるのジョージ」の主題歌を2人で歌うのだけれど、歌の振り付けを観客も一緒に。照明担当に「会場を明るくして」とお願いすることで、観客を巧みに引き込む岩崎宏美は、さすがライヴに慣れている。会場が一気にほがらかな雰囲気に包まれる。

 もう1曲ザ・スリー・ディグリーズの“天使のささやき”でデュエットしたあと、岩崎良美が“Prologue”、岩崎宏美が“聖母たちのララバイ”をそれぞれ歌う。「2人で歌えることが幸せ」であり、由紀さおり・安田祥子姉妹から“後継者”と言われていると話して、“トルコ行進曲”なんて難しい曲は歌えないけれど、今後も子供の頃から姉妹で歌ってきた曲を歌っていきたいと語る。オリジナル以外の選曲にこれで納得し、2人のもうひとつの音楽史に触れる思いがした。

 彼女たちからうかがえたのは昭和のTV番組で人気だった歌謡曲、洋楽のヒット曲の影響だ。まだまだ隠されたレパートリーがたくさんありそうだ。さらなる進化を期待できる余白も大いにあるだろう。シリーズ化されていくことを望みたいが、まずは11月22日には兵庫県立文化センター大ホールでの公演が予定されている。

 


SETLIST
チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」より
ポロネーズ
恋のフーガ(岩崎宏美&岩崎良美)
ロマンス(宏美)
赤と黒〜青春〜タッチ(良美)
思秋期(宏美)
シェルブールの雨傘(良美)
永遠のありがとう(宏美)
ラヴェル:「クープランの墓」よりリゴードン
卒業写真(岩崎宏美&岩崎良美)
おさるのジョージ(岩崎宏美&岩崎良美)
天使のささやき(岩崎宏美&岩崎良美)
プロローグ(良美)
聖母たちのララバイ(宏美)
ごめんねダーリン(岩崎宏美&岩崎良美)
見上げてごらん夜の星を(岩崎宏美&岩崎良美)

 


LIVE INFORMATION
岩崎宏美50周年・岩崎良美45周年『岩崎宏美・岩崎良美ファンタスティックオーケストラコンサート』

2025年9月28日(日)演昭和女子大学人見記念講堂 ※この公演は終了いたしました
開場/開演:14:00/15:00

2025年11月22日(土)兵庫県立芸術文化センター大ホール
開場/開演:13:15/14:00

■出演
岩崎宏美、岩崎良美

■指揮
栁澤寿男

■管弦楽
京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団(東京)
兵庫芸術文化センター管弦楽団(西宮)