小田和正を元気付けた斉藤哲夫の“グッド・タイム・ミュージック”
「クリスマスの約束2006」は、有明コロシアムで収録された。ゲストは、いきものがかり、斉藤哲夫、スキマスイッチ、松たか子という4組。いきものがかりが小田と共演した曲は、彼らの2006年3月リリースのデビューシングル“SAKURA”だ。吉岡聖恵が堂々とした歌いっぷりで、情感あふれる歌声を披露し、小田が優しく見守るように、丁寧にコーラスをつけた。新たなる始まりのエネルギーが詰まった歌声と、36年以上にわたって、日々更新し続けながら深みを増している歌声との世代を超えたハーモニーが麗しく響きわたった。

松たか子との共演は“みんなひとり”と“to U”の2曲。“みんなひとり”は竹内まりやが作詞・作曲した楽曲だ。“to U”はMr.Childrenの櫻井和寿が作詞し、小林武史が作曲したBank Bandの曲で、〈ap bank fes〉のコンセプトソングでもある。「クリスマスの約束2006」のテーマである〈message〉を象徴する曲でもあるだろう。空に向かって羽ばたく鳥のような、みずみずしさと潔さを備えた松の歌声と、大地に降り注ぐ甘雨のような、深みと柔らかさを備えた小田の歌声とが溶け合い、優しく美しい歌の世界が出現した。小田が作詞・作曲した“ほんとの気持ち”でも、2人の歌声の相性の良さを実感した。
小田が「摩訶不思議」と表現したのは、斉藤哲夫との共演だ。斉藤が19歳の頃に書いた“悩み多き者よ”を、長い歳月を経て、56歳の斉藤と59歳の小田が歌っている。それぞれの声のニュアンスを活かしたコーラスアレンジも絶妙だ。名曲は時が過ぎても色褪せない、ということだけではない。いぶし銀のような深みのある輝きを放っていく。「素晴らしいね。いやあ、まいった」と、小田が斉藤に称賛の言葉をかけた時、画面越しに大きくうなずきたくなった。
「(『クリスマスの約束』の準備で)くじけそうになった時、この曲から元気をもらいました」という小田の紹介で演奏された“グッド・タイム・ミュージック”は、小田と斉藤とバンドのメンバーによるアカペラのコーラスが始まった瞬間に、音楽の魔法が全開になった。これこそまさしく、〈グッド・タイム・ミュージック〉だ。
小田とスキマスイッチが「クリスマスの約束」のために共作した“僕らなら”は、3人での制作風景の映像が流されたのちに演奏された。3人での初共作、そして初披露という初めてづくしとなったステージで、彼らは緊張感を見事に集中力に変換していた。丹念な歌声、コーラス、演奏に、客席全体が耳を澄まして聴き入っている空気までもが画面から伝わってくるようだった。スキマスイッチの代表曲“全力少年”では、還暦間近の小田も含めて、少年のようなひたむきさで、全力で音楽を奏でる姿に胸を揺さぶられた。歌で描かれたメッセージをそのまま3人が体現していた。
後半は小田のみでのステージとなり、〈message〉というテーマに沿った“伝えたいことがあるんだ”、KAT-TUNへの提供曲“僕らの街で”、未放送曲の竹内まりやのカバー“元気を出して”などが演奏された。音楽に込められたメッセージは、作り手、演奏者、聴き手、それぞれの中で咀嚼されて、共有・共鳴されながら広がっていく。「クリスマスの約束2006」は、音楽の持っている懐の深さを堪能できる作品だ。