スペースシャワーネットワークが運営する東京・渋谷のライブハウスWWW。2010年のオープン以降、〈ダブダブ〉の略称で親しまれ、若手や中堅を中心に幅広いアーティストが出演、海外ミュージシャンの来日公演の会場としてもお馴染みで、今や渋谷という街を代表するライブハウスとして定着している。特にエッジーでインディペンデントな音楽のファンは、一度は足を運んだことがあるだろう。
そんなWWWが2014年8月から開催してきたレギュラーイベントが、〈NEWWW〉だ。ブレイク前の新人を中心にスタッフが独自の視点でブッキングしてきた〈NEWWW〉は、1,000円というチケット代の安さも魅力のひとつで、多様なオーディエンスへ最新の音楽に生で触れる機会を提供してきた。最新回のvol.34は2026年6月23日(火)に開催、HUGEN、Manda、brooksが出演する。
そこでMikikiは、〈NEWWW〉の12年の歴史をアーカイブする記事をお届けしよう。まずは前編として2014~2019年の開催回をライター松永良平(リズム&ペンシル)に論じてもらった。 *Mikiki編集部
今見たいバンドを揃える気概と矜持
〈NEWWW〉というイベントに行った最初の記憶は、2014年9月16日。出演は、トリプルファイヤー、藤井洋平 & The VERY Sensitive Citizens of TOKYO、Taiko Super Kicks。藤井洋平を目当てに行ったが、共演の2バンドも楽しみだった。とりわけセカンドアルバム『スキルアップ』をリリースしたばかりのトリプルファイヤーは、変質日本語ファンクとも呼ぶべき音楽性と、吉田靖直の特異なキャラクターがいわゆる〈東京インディー〉の枠を超えて認知され始めた頃だった。
〈NEWWW〉というイベント。入場チャージ1,000円で、有望と目されている3バンドが出演する、ということも初期にはまだそんなに把握されていなかった。
もちろんイベントの価格設定が、若い観客、なんとなく興味があるライト層にも寛容だという部分は、大きな売りではあった。だが、そうしたバーゲンプライスよりも、今見たいバンドが揃っていることがちゃんと前景化していたというべきだろう。
実際、〈NEWWW〉は、主宰であるWWWのスタッフにとっても実験の場であったはず。当時、まだ渋谷にできた比較的新しいライブハウスだったWWWのキュレーション性、これからの時代を担うバンドやアーティストを自分たちの目と耳とセンスで選び出し、送り出したいという気概。それを言葉にしてくどくど説明するのではなく、そのときどきの顔ぶれで物語る。その矜持がちゃんと意識されていなかったら、こういう試みは、企業的なプロモーションの持ちかけだったり、動員力目当てのブッキングによって、初期の精神性が容易に変質してしまったりするものだ。
旧来のライブハウスと違う刺激的な実験と体験の場
そもそも、このイベントがスタートした頃のWWWを思い返してみる。もともとここは、渋谷にあった独立系の映画館だったシネマライズ。吉祥寺にあったバウスシアターと並んで、海外のインディペンデントな話題作や音楽映画を積極的に上映していた。建築家の北川原温による外装や内部の構造はとても独特で、ライブハウスに転用するにあたってその意匠は可能な限り活かされた。
フロアにはかつて客席が配置されていた段差があって、どこにも死角が無い。また、元映画館ならではといえたのが、ステージ背後を大きなスクリーンとして使用できること。照明や映像効果でも大きなアドバンテージがあった。キャパとしては中規模かもしれないが、2010年代に登場した新しい表現者たちにとっても、観客にとっても、WWWは旧来のライブハウスとは違う体験の場となっていた。感覚的にいうと、2000年代は円山町(当時のO-nestやO-WEST)にあった新鮮で刺激的な場を、もうひとつ違う環境で宇田川町に切りひらこうとしていた。
Suchmos、カネコアヤノ、betcover!!……シーンの変わり目を表す顔ぶれ
2014年から2019年に〈NEWWW〉に出演していた顔ぶれをあらためて眺めていると、先見性だけでなく、シーンの変わり目だったことも実感できる。
ceroやシャムキャッツなどが結果的に牽引するかたちとなっていた、いわゆる〈東京インディー〉のシーンは、下北沢の各ライブハウスを舞台とした一大サーキットイベント〈Shimokitazawa Indie Fanclub〉(2010年~2015年)などでさらに可視化されていった。2015年前後といえば、ceroがシーンのゲームチェンジャーとなったサードアルバム『Obscure Ride』をリリースし、昆虫キッズ、森は生きているが解散、さらには、その次世代と目されるSuchmos、never young beachなどが登場してきた頃だった。

たとえば、イベント初期の2015年の春(4月15日)にはSuchmosが、2015年の春にこのキャパ(スタンディングで最大400~500人)のライブハウスに出演していた。デビューEP『Essence』をリリースしたばかりだった。共演は、京都での活動で話題を呼んでいた踊る!ディスコ室町、そしてファーストアルバム『WEEKEND SOUL BAND』リリースから間もない時期の思い出野郎Aチーム。メロウさとポップさを兼ね備えたネオソウル、ローカル、生活と社会を踏まえたファンキーソウル、それぞれの方法でジャパニーズソウルをやるバンドを3組揃えたのは、この時代の分岐点を感じさせるラインアップだった。このあと彼らが進んだそれぞれの道を考えても、普通に〈いいライブ〉だし、〈この瞬間〉の記録だったじゃないか。



2016年以降のブッキングからは、変わりゆくインディーシーンの流動性と、バンド同士の交流というよりそれぞれの際立った個性を感じる。音大で学んだ経歴を持つなど、ジャズ、クラシックのしっかりとした素地を持つシンガーやプレイヤーたちも頭角を表し始めたのも、この時期の特徴のひとつ。CHAI、カネコアヤノ(バンドセット)、betcover!!、中村佳穂など、2020年代以降はもっと大きな舞台へと移っていったアーティストたちも、しっかりとこのイベントで爪痕を残している。

コロナ禍以前の最後の回となった2019年8月5日、ぼくは〈NEWWW〉を見に来ていた。今も大ファンであるWool & The Pantsと、当時かなり気になっていた、んoonが出演する。もうひとつのバンド、木(KI)についてはほとんど知らなかった。だが、未知のバンドでもこのイベントなら見てみようという気持ちに自然となった。かつてそれは、信頼できるライブハウスにまつわる当たり前な感情だったのかもしれない。だけど、そんなふうに思えるイベントが今後も続いていくのは、やる側にも見る側にももっともっと重要になっていく気がしている。
〈NEWWW〉の歴史
vol.1 2014年8月6日 Awesome City Club/Yogee New Waves/Aun beatz
vol.2 2014年9月16日 トリプルファイヤー/藤井洋平 & The VERY Sensitive Citizens of TOKYO/Taiko Super Kicks
vol.3 2014年10月14日 吉田ヨウヘイgroup/YankaNoi/うてなキャンプ
vol.4 2015年1月21日 SANABAGUN./TOKYO HEALTH CLUB/Have a Nice Day!
vol.5 2015年4月15日 Suchmos/踊る!ディスコ室町/思い出野郎Aチーム
vol.6 2015年6月11日 D.A.N./never young beach/LUCKY TAPES
vol.7 2015年8月20日 DYGL/PunPunCircle/余命百年
vol.8 2015年11月20日 D.A.N./Have a Nice Day!/never young beach/Suchmos/トリプルファイヤー ※周年特別回
vol.9 2016年1月28日 MARQUEE BEACH CLUB/Gateballers/メシアと人人
vol.10 2016年4月27日 Klan Aileen/PAELLAS/MIRROR MOVES
vol.11 2016年7月26日 あっこゴリラ/CHAI/ヘンショクリュウ
vol.12 2016年10月12日 WONK/KIANO JONES/TOYOMU
vol.13 2017年6月15日 バレーボウイズ/MONO NO AWARE/カネコアヤノ(バンドセット)
vol.14 2017年8月3日 evening cinema/unizzz.../South Penguin
vol.15 2018年5月21日 odol/STEPHENSMITH/TENDRE
vol.16 2019年2月6日 I Saw You Yesterday/ARSKN/betcover!!
vol.17 2019年2月19日 さとうもか/ジオラマラジオ/中村佳穂
vol.18 2019年8月5日 Wool & The Pants/んoon/木
vol.19 2020年5月20日 Johnnivan/maco marets/YONA YONA WEEKENDERS ※公演延期
vol.20 2021年4月18日 illiomote/カメレオン・ライム・ウーピーパイ/a子
vol.21 2021年4月24日 YONA YONA WEEKENDERS/浪漫革命/E.scene
vol.22 2021年7月23日 Gokou Kuyt/SARA-J/Wez Atlas
vol.23 2021年11月14日 Tok10/DENYEN都市/SHO-SENSEI!!
vol.24 2022年10月19日 Bearwear/Bialystocks/浦上想起・バンド・ソサエティ ※公演延期
vol.25 2023年10月2日 えんぷてい/幽体コミュニケーションズ/離婚伝説
vol.26 2024年2月8日 ANORAK!/Ålborg/The ティバ
vol.27 2024年4月24日 HOME/Salmon Pink/Till Yawuh
vol.28 2024年10月9日 シャッポ/野口文/Half Mile Beach Club
vol.29 2025年3月24日 aryy/the bercedes menz/トップシークレットマン
vol.30 2025年5月27日 烏兎-uto-/Wepeg/眞名子新
vol.31 2025年7月30日 cephalo/SleepInside/与謝野
vol.32 2025年9月29日 Meg Bonus/sysmo/Veg
vol.33 2026年3月16日 cambelle/さらば帝国/メコン
LIVE INFORMATION
NEWWW vol.34

2026年6月23日(火)東京・渋谷 WWW
開場/開演:18:30/19:30
出演:HUGEN/Manda/brooks
前売:1,000円(税込/オールスタンディング/ドリンク代別)
e+:https://eplus.jp/newww-vol34/
LivePocket:https://livepocket.jp/e/newww_vol34
問い合わせ:WWW 03-5458-7685
Flyer design by YOKKE
PROFILE: HUGEN

2024年始動。TP(ボーカル/PC)を中心に構成される音楽プロジェクト。エレクトロニックミュージックを軸に、民族音楽や民謡などの要素を交えたオルタナティブな楽曲を制作している。縁や愛、優しさ――身近な感情や風景を、気取らずに言葉に乗せて歌うTPの歌詞も特徴のひとつ。結成2年目にして〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉の〈ROOKIE A GO-GO〉に出演。2026年はオーストラリアのフェス〈RISING〉や〈Vivid Sydney〉に出演。NHK Eテレドラマ「聞けなかった あのこと」では、寺尾紗穂との共作で主題歌も手がけた。ライブ活動や制作を精力的に展開中。
PROFILE: Manda

〈Manda〉とは、本質を有するものや心理を表すものを意味する。日本語では〈醍醐〉といい、発酵の最上級を指し、〈これ以上ない〉という比喩として使われる。
横浜・東京を中心に活動中。メンバーそれぞれが異なる風土・文化のアイデンティティを持ちながら、日本で育つ。ソウルフルで攻撃的なソロと、エスニックでありながら境界のないグルーヴを得意とする。それとは対照的に、社会/他者との接続を憂う静的な歌詞が特徴。活動2年目で〈りんご音楽祭〉や〈森波〉をはじめ、様々な国内イベントに出演。2025年には〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉の〈Gypsy Avalon〉ステージに出演。2025年8月1日に1st EP『Green Eye』をリリース。
PROFILE: brooks

2024年から活動開始。リズム&ブルースやサイケデリックロックをベースに良質なサウンドを追求する。2025年9月に1stアルバム『maison brooks』をリリース。また〈りんご音楽祭2025〉にも出演。