こちらの写真は2024年1月24日の東京ドーム公演より
©Masanori Doi

ビリー・ジョエル、圧倒的な100回目のMSGレジデンシー公演がパッケージ化!

 世界でもっともピアノの前が似合うアーティストを考えるとしたら、間違いなくその一人に挙がるのはビリー・ジョエルだろう。言わずもがなの“Piano Man”をはじめ、ピアノから生まれた名曲やヒット曲は数知れず。ステージでも彼の姿は常にピアノと共にある。旺盛にレコーディングを重ねていた時期ももちろんだが、特に『River Of Dreams』(93年)を発表して従来のサイクルを外れて以降のビリーはライヴでの演奏活動を表現のメインにしてきたわけで、そうなってから30年以上もの時が流れている。

 そのようにライヴとは切っても切り離せないビリーだけに、さまざまな時代の名ステージに触れることができる映像/音源は数多い。古くは2008年のシェイ・スタジアム公演を収めた『Live At Shea Stadium』(2011年)が名高いだろうし、遡ればVHS時代の「Live At Yankee Stadium」(90年)は2022年になって『Live At Yankee Stadium June 22 & 23』としてアップデートされた。音源のみの作品でいうと2006年のMSG公演を収めた『12 Gardens Live』があったし、72〜2008年のライヴ録音から厳選した『Live Through The Years』の日本独自CD化も快挙だった。さらにはもともと〈RSD〉限定LPだった『Live At The Great American Music Hall 1975』が『Streetlife Serenade』(74年)の日本独自50周年記念盤に同梱されていたのも記憶に新しい。こうして振り返ってみると当然ながら往年の勇姿を収めた作品がメインとなるが、このたび紹介する映像作品は近年の姿を収めたライヴ作品の決定版となるだろう。地元NYのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)における記念すべき100回目のレジデンシー公演が「The 100th: Live At Madison Square Garden (The Complete Concert)」としてBlu-rayに完全パッケージ化されたのだ(DVDは輸入盤のみ)。

BILLY JOEL 『The 100th: Live At Madison Square Garden (The Complete Concert)』 Legacy/ソニー(2026)

 そもそもMSGにおけるビリーのレジデンシー公演〈Billy Joel At The Garden〉は、2014年1月から毎月の定期開催を11年にわたって継続し、100公演すべてのチケットをソールドアウトさせてきたという〈史上最大のアリーナ連続公演〉。そんな前人未到の第100回目の公演は、一夜限りの東京ドーム公演から2か月を経た2024年3月28日に行われたもの。開催から3週間後には米CBS-TVで80分に編集された特別番組が放送され、のべ1,000万人が視聴した(後にエミー賞で3部門を受賞)。今回のパッケージ化にあたっては〈コンプリート〉の名称に相応しく、TV未放映だった11曲のパフォーマンスも追加した総尺150分に及ぶステージがたっぷり楽しめる。

こちらは2025年の写真
©Myrna Suarez

 映像を観てとにかく圧倒されるのは、手首にバンドライトを光らせた観客の盛り上がりと、大舞台ながらも親密な会場の雰囲気だ。長年の演奏仲間も含むバンドを従えたビリーは、ホームならではの特別な空気感も味方につけながらエンターテイナーとしての円熟と力量、ミュージシャンシップを存分に発揮し、もはやスタンダードと化している各時代のヒット・ナンバーや隠れた人気曲までを自由自在に披露。そんな鉄壁のセットに、当時17年ぶりの新曲としてリリースされた“Turn The Lights Back On”も違和感なく収まっている。また、特別ゲストのスティングを迎え、彼の“Every Little Thing She Does Is Magic”など2曲を共演しているのも観どころだろう。

 なお、レジデンシー公演は2024年の7月24日に104回目の公演をもって終了。その後のビリーは昨年5月に正常圧水頭症(NPH)という脳疾患と診断されて療養中だが、今年の1月にはフロリダ州ウェリントンの祝賀行事で自身のカヴァー・バンドの演奏に飛び入りし、3月には自身の功績を讃えてカーネギー・ホールで開催された〈The Music Of Billy Joel〉にも姿を見せた。無責任に多くを望むべきではないと思いつつも、今回の作品でここまで素晴らしいパフォーマンスを見せつけられたら、やはりステージでの完全復活にも期待したくなってしまうのではないだろうか。

ビリー・ジョエルのライヴ作品。
左から、90年のヤンキー・スタジアム公演の模様を収めた『Live At Yankee Stadium June 22 & 23, 1990』、2008年のシェイ・スタジアム公演の模様を収めた『Live At Shea Stadium』(Columbia/ソニー)、72〜2008年のライヴ音源をコンパイルした『Live Through The Years (Japan Edition)』(ソニー)

左から、ビリー・ジョエルの74年作の50周年記念盤『Streetlight Serenade 50th Anniversary Deluxe Edition』、2024年のシングル“Turn The Lights Back On”(共にColumbia/ソニー)、6月26日にリリースされるスティングのニュー・アルバム『The Night Watch (Live At The Rijksmuseum)』(A&M/ユニバーサル)