
呼吸を感じ、息を合わせたXinU × Jairoのコラボステージ
彼らは一旦ステージを去り、その数分後、XinUと3人で改めて登場。ここから3曲がXinU × Jairoのコラボステージだ。
まずは今回のライブのテーマ曲とも言えるXinUの新曲“ECHOES & BEATS”。重く響くJairoのビートボックスとXinUの透明感あるボーカルが重なってひとつになる。3人の声の共鳴と反響。ひとりひとりに技術があれば必ずこのような共鳴と反響になるかと言えば、そうではない。互いの呼吸を感じること、息を合わせること、その大事さと共に、信頼がそこになくてはこうはならないだろう。
続いての“罠”では、XinUはボーカルをとるだけでなく、間奏部分でビート出しにも加わった。歌い終え、「Jairo、最高!」とXinU。

ここでXinUバンドのメンバーたちがインして、楽器と3声でのスペシャルセッションへ。曲はJairoの持ち曲“FLASH”だ。Jairoのビートボックスにギターやドラム、鍵盤やサックスが加わると、ファンキー度数がさらに増して、じっとしてなどいられなくなる。1番をYAMORI、2番をXinUが歌い、バンドの楽器演奏も熱を帯びて、そうそう味わうことのできないグルーヴが生まれていた。因みにXinUが歌った2番のバースは、この日のために彼女が書き下ろしたものだ。

シンガーXinUの個性の核とは
この3曲のXinU × Jairoのコラボが、この日のひとつのハイライト的なセクションだったことは間違いないだろう。冒頭で〈XinUのシンガーとしての個性の核となる部分を明確に伝えてくるライブ〉と書いたが、まさしくこのセクションにそれが如実に表れていた。XinUの、シンガーとしての個性の核。それは即ち、こういうことだ。
XinUは声に対するこだわりを明確に持っているシンガーだ。まず、彼女はパワフルに声を張り上げて歌うシンガーではなく、息遣いを大事にした上での〈歌い上げない〉美学を持つ。揺れは揺れとしてそのまま表現する。揺れが感情を表すものでもあるという認識のもとで歌っているように感じる。感情やメッセージを押し付けない。聴く者たちが自分なりにイメージすることのできる余白を残す。意図的にそれをやっているというよりは、元来の声質と性格もあって自然とそういう歌唱スタイルになっているのだろうが、だからこそ聴き手は彼女の思いに自分の思いを重ねることができる。
第二にXinUは言葉の〈響き〉を最優先して歌詞を書く。初めてインタビューしたときに、「自分で歌詞を書くようになってから日本のアーティストのいろんな曲を聴いて、音としての言葉のハマり方とか組み立て方を研究するようになった」「韻を踏んでみたり、英語の曲のようにサビの1音に2つか3つの言葉を乗せるのは可能なのかと試してみたり」と話していたのが印象に残っている。つまり彼女にとって、歌詞は意味を伝えること以前にまず音の響きとして美しいかどうかが重要なのだ。

第三にXinUはコーラスワークのこだわりが非常に強い。声の層やハーモニーで空気感を作ることを大事にしている。「高校のときは合唱部だったんですが、その頃アカペラのテレビ番組が盛り上がっていたんですよ。その影響で大学に入ってアカペラをやるようになって。歌うことが自分の表現になりました」。これも初めてインタビューしたときの言葉。そう、アカペラが彼女の歌唱表現の原点なのだ。だから「コーラスワークに相当拘って作っていますよね」という筆者の問いに対しても、「アカペラをやっていたので、そのアレンジのノウハウを活かしている感じです。アカペラの音楽から学習したことがたくさんあって、昔から貯めていたアイデアが今になってちょっとずつ出てきている。学生のときに自分で編曲もしていたので」「ベースラインとかもアカペラに置き換えて考えるんです。そのやり方が今のコーラスワークに繋がっていて。“オモイオモワレ”もギターリフの間奏部分をアカペラで埋めてみようと考えながらコーラスを組み立てていきました。その作業がすごく楽しかったですね」と答えている。
そのように声の多層で作られた象徴的な楽曲が2ndアルバム『A.O.R - Adult Oriented Romance』に収録された“ロマンス”だったわけだが、その曲がどのように作られたかを訊いたときには、こう話していた。「最初はアルバムのイントロとして30秒くらいのアカペラがあったら素敵なんじゃないかと話していたんです。でも作り始めたら2倍3倍に膨らんでいって、アカペラだけのセクションまで作りだしちゃって。2~3時間で録音を終わらせるはずが、音の積み重ねとかに凝っちゃって、結局4日かかりました(笑)。1パートを3声で録るから、4つラインがあったら3 × 4=12で12トラックになって……。でも楽しくてしょうがなかった」。そう、このように音や声を積み重ねる作業が、彼女にとっては〈楽しくてしょうがない〉ことなのだ。
息遣いを大事にする。言葉の響きを最優先する。声を音として捉え、それを重ねることを楽しむ。これがXinUの、シンガーとしての個性の核であり、魅力の核でもある。そしてそのことを改めて実感できたのがこのライブであり、とりわけJairoとの共演セクションから〈響き〉と〈重ね〉の妙が強く伝わったものだった。〈声の響かせ方〉の達人であるYAMORIとJohn-Tのふたりと声を重ね、3声で全てを表現する。その試みはXinUにとってどれほど創造的なことだっただろう。どれほど「楽しくてしょうがない」ことだっただろう。「響いて 鳴らして 重ねて これだけでいい」と“ECHOES & BEATS”で歌われるが、まさにそのとき〈これだけでいい〉とXinUは実感していたに違いない。