太陽に愛されよう! 規格外のバズを記録して躍進した3人の夏映え必至な新作『Sunshine』は豊かな音楽性と過去最高の心地良さで満たされている!
もともとメンバー自身のアイデンティティを前に出さないことを選択し、名前と顔を隠したJとTを名乗るコンビで始まったのも今は昔――そこからジョシュ・ロイドとトム・マクファーランドがフロントマンを務めるバンド編成のコレクティヴへと発展し、ライヴ・パフォーマンスも通じてその名を広く浸透させてきたジャングル。「特に新しいことをやってはいない」と本人たちも語っていた通算5作目『Volcano』(2023年)の発表後には、数年来のコラボレーターとして同作にも貢献していたリディア・キットーが正式加入してトリオへと発展している。その『Volcano』は本国UKだけでなくUSでもプラチナ認定を受けるキャリア最大のヒット作となり、新たなアンセム“Back On 74”も生み出して彼らは世界的な人気を確たるものにした。
2024年には〈最優秀ブリティッシュ・グループ〉部門で初めてブリット・アワードを授かるという栄誉にも輝いたが、デビュー作の時点で全英TOP 10ヒットを飛ばしてマーキュリー賞にもノミネートされるなど、商業的にも批評的にも初速で大成功を収めたようなグループにとって、こういう右肩上がりのステップアップは異例のことにも思える。そうした好況を受けて彼らは世界各地でアリーナ公演を開催し、数十万人の観客を前にパフォーマンス。〈コーチェラ〉や〈グラストンベリー〉を含むフェス出演もさらなる支持拡大の基盤となった。
年明け早々に“Keep Me Satisfied”を配信した2025年に入ると、ジョシュとリディアの二人は(2023年から始動していた)別ユニットのローデッド・ハニーとして初のアルバム『Love Made Trees』をリリース。さらにジョシュはクークスの“Echo Chamber”をプロデュースし、そこにも助力したリディアはリトル・シムズの“Only”に客演、その一方でトムは単独でピクシーやジェシー・ウェアを手掛けるなど、ここしばらくは二手に分かれたような動きが目立っていた。
そんな前提があったからこそ、今年に入って活動を再開したジャングルから新曲“Carry On”が届いた際には、大きな喜びと、ちょっとした安堵があったような気がする。とは言いつつも同曲はジョシュとリディアの二人で作られたハーモニー・ポップで、それに続く5月のハウシーな“The Wave”にもトムは不参加。この7月に配信されたばかりの最新シングル“Someday, Somewhere”ではようやく3人が揃ってヴォーカルを担い、トムはアディショナル・プロダクションの形でもクレジットされている。まあ、実際のところ、前作『Volcano』の時点でトムの関わりは限定的になっていたわけで、制作面における現在のジャングルのバランスはそういう感じなのだろう。
そうした段階を踏まえていよいよ完成したのが、グループにとって通算5枚目となるニュー・アルバムの『Sunshine』だ。ニュー・ディスコやコンテンポラリーなソウル/R&Bを融合させた初期からのダンサブルな作風に加え、リディア加入後に顕著になってきたリゾート感覚やソフィスティ・ポップ的な曲調の振り幅は前作を継承したもの(もちろん“Back On 74”で成功した影響は大きいはずだ)。直球なアルバム・タイトルが示すように、陽光の降り注ぐ季節や開放感に溢れた眩しいシチュエーションがよく似合う作品で、ベタなことを言うなら暑い夏を過ごすのには打ってつけの楽曲集となっている。ロマンティックなグルーヴが流れる先述の“Someday, Somewhere”について本人たちは「もっと良いことが訪れるという気持ちを持ち続けることについて歌っている。ジャングルらしい夏の終わりの楽観主義、少しの憧れ、少しの逃避、そして願わくば人々が夢中になれる何かが詰まっているんだ」とコメントしているが、その説明は収録曲それぞれに共通して当てはめることのできる特徴でもあり、あるいはアルバム全体のテーマのようなものになっているのかもしれない。
ジョシュとリディアが全曲のプロデュースを手掛け、マルチ・ミュージシャンの両名が大半の演奏も担当。全11曲のうち9曲にアディショナル・プロダクションという形で関与しているトムは2曲のコライトも手掛け、先述した“Someday, Somewhere”に加えて長閑な旅行気分の“Where Are You Now”でヴォーカルに参加。さらには冒頭の“Come Back To Me”とラストの“Heavy On My Soul”でもコーラスも名を連ねる。多くのゲストを迎えていた前作に対して今回の客演は“Romeo II”に迎えたバスのみで、ジョシュとリディアのタイトな関係性から生まれた成果の大きさも推し量れよう。
そんな状況がどこへ繋がっていくのかはさておき、ドゥワップやレトロ・ソウル、ブラジリアン、ダブの要素も取り込んで過去最高の楽園音楽集に仕上がった『Sunshine』の甘い麗しさの前には無条件で降参するしかない。現実が厳しければ厳しいほど、この眩しさに引き込まれる人は増えていくことだろう。
メンバーたちの参加した作品を一部紹介。
左から、リトル・シムズの2025年作『Lotus』(AWAL)、クークスの2025年作『Never/Know』(Lonely Cat)、ジェシー・ウェアの2026年作『Superbloom』(EMI)
ジャングルの作品を紹介。
左から、2014年作『Jungle』、2018年作『For Ever』(共にXL)、2021年作『Loving In Stereo』、2023年作『Volcano』(共にCaiola/AWAL)、ローデッド・ハニーの2025年作『Love Made Trees』(Vetra/AWAL)
