結成20周年を迎えた3人の変わらない関係、いつもの話……盟友たちも歌声を添えた新作『orbis』には、祝福の音と愛おしさに溢れた時間がいつまでも循環している!!!

 京都を代表するインスト・バンド、jizueが結成20周年を飾る通算11作目のアルバム『orbis』を完成させた。活動初期には変拍子を多用したハードコア寄りの音楽性を打ち出していた彼らは、フェス出演などを重ねるなかで、よりダンサブルな要素を強め、ジャズやラテンが入り混じった独自の音楽性を確立。近年はドラマの劇伴を数多く手掛け、お茶の間にもリーチする存在になった。ファンからもっともリクエストが集まったという“sister”の再録を含む全11曲を収録した今作は、20年の重みを感じさせつつも、あくまで〈今〉のjizueにフォーカスするアルバムになっている。

 「これまではステージに立ってる側として、〈お客さんにこうなってほしい〉と思って曲を作ることが多かったのですが、私は2025年の1月からライヴの出演をお休みしていて。この1年半は客席からjizueのライヴを観てきて、それはすごく特別なことなんですけど、どんな曲を作ればいいかわからなくなってしまったんです。そこからだんだんと日記のように、〈いま、こんな感じ〉を曲にすればいいと思えるようになりました」(片木希依、キーボード)。

jizue 『orbis』 ビクター(2026)

 そんな片木のムードを象徴するのが、同じ関西出身の奇妙礼太郎がヴォーカリストとして参加した“愛のまにまに feat. 奇妙礼太郎”。片木が知り合いの俳優から言われた「人生は起こったことが全部正解だから、あんまり考えすぎなくてもいいよ」という金言を基に、奇妙が〈愛のまにまに 会いにゆけば それがそのまま歌になる〉と歌う、リラックスしたAOR調のナンバーだ。

 「それまでは〈ライヴで盛り上がる曲〉を考えてたんですけど、作った頃にマーヴィン・ゲイやはっぴいえんどとかをよく聴いていたので、その感じをそのまま出そうと思いました。でも奇妙さんの力を借りなかったら、ここまでストレートなことをやったり歌ったりはできなかったと思うので、奇妙さんとやから出来た一曲になったなって」(片木)。

 「何を歌っても奇妙さんらしくなるというか、どんな曲でも奇妙さんの歌にされちゃうんですよね。一緒にやってみて改めて、圧倒的な歌の力を感じました」(山田剛、ベース)。

 もう1人のゲスト・ヴォーカリストは過去にもコラボを経験したラッパーのShing02。7拍子の複雑なアンサンブルの上で、〈you’re the main theatre/君こそが舞台の主役〉とポジティヴな言葉を軽やかに紡ぎ出していく“SNEAKPEAK feat. Shing02”は実にスリリングな仕上がりだ。

 「昔、京都のJAPONICAっていうカフェでShing02さんと“真黒”のMVを撮影したことがあるんです。この曲も、みんなの行きつけのお店で楽しく騒いで、夢を語り合ったり、酔っ払ったり、そういう空気感にしたくて。Shing02さんはその場でリリックを書きながらラップを録っていって、めちゃカッコよかったですね」(井上典政、ギター)。

 さらに、「この20年を詰め込んだような曲が作りたかった」と山田が作曲したのは、盟友のNABOWAからヴァイオリンの山本啓が参加した、〈相変わらず〉なメンバーの関係を祝福するかのような“Same as Ever”。その一方、井上はアルバムのなかでもっともエッジの効いた“Valor”を制作の最後に作り上げた。

 「“Same as Ever”はもともと〈同じ会話〉みたいな仮タイトルだったんです。メンバーも高齢に差し掛かり(笑)、同じ会話を 繰り返すことも増えてきて、でもその感じがすごく愛おしいなと思うんですよね。20年っていう節目でもありますし、いつまでもくだらない話ができる、この愛おしい時間を曲にしたいと思って作りました」(山田)。

 「“Valor”のモチーフが出来たときはもう〆切間近だったんですけど、諦めないでやろうと思って、期限を延ばしてもらって。劇伴で僕らを知った人からしたら、〈こんなうるさい曲は聴きたくない〉と思うかもしれないけど(笑)、でも僕らはこうやって20年間やってきたし、自分はぜんぜん丸くなる気もないから、どうしても入れたかったんです」(井上)。

 アルバム・タイトルの『orbis』はラテン語で〈輪〉や〈世界〉を意味する言葉で、〈循環〉のイメージを込めたという。これまで積み重ねてきた時間や、さまざまな出会いと別れに思いを馳せ、それらを循環させながら、jizueはきっとこの先も30年、40年と続いていくことだろう。

 「僕は〈じいちゃんばあちゃんになってもjizueをやってたい〉と昔から言ってきたので、その願いも込めてます。そして、きっとそうなるであろうとも思ってるんですよね」(井上)。

『orbis』に参加したアーティストの作品。
左から、Shing02の2025年作『抒情詩歌 / JOJŌSHĪKA』(JJSK/WENOD)、奇妙礼太郎の2026年作『1976』(ビクター)

jizueの近年の作品を一部紹介。
左から、2026年のサントラ『エラー』(ランブリング)、2025年作『Mer』、2023年作『biotop』(共にビクター)