大型フェス出演や海外ツアーをはじめ、ドラマの劇伴なども評価されるインスト・バンドの10作目。軽やかなピアノがドラマティックに展開する“Ri:ng”、陽だまりのような柔らかい演奏で琴線に触れる“Hiraliou”など、プログレ、ロック、ジャズを変幻自在に操る演奏力とテクニックに脱帽するばかり。アヴァンギャルドな変拍子のリズムでヒリヒリと疾走する“Thoth”が白眉。
2006年の結成以来、シーンのトップランナーとして国内外で活躍する京都発のインストゥルメンタルバンド、jizue(読み:ジズー)。今作は2年振り通算10枚目のフルアルバムで、メンバーの片木希依(ピアノ)が当面の間ライヴ活動を休止することもあり、ファンにとっては聴き逃せない作品だ。最近は映画やドラマの劇伴を担当するなど活躍の場を広げているだけに、フランス語で〈海〉を意味する今作のタイトル名は、まさに言い得て妙なネーミング。メロディアスでありながらもアグレッシヴでプログレッシヴな音楽性で綴られる壮大で抒情的な世界。来年の結成20周年に向けて進化を続けるjizueの〈今〉がここに在る。