レコード屋に行ったら、まず最初に激安のセール・コーナー、いわゆるエサ箱をチェックします。
それは音楽を知れば知るほど魅力を増していくマジック・ボックス……エサ箱に始まりエサ箱に終わるというディガーも多いのではないでしょうか。
ということで、最近100円で見つけてビビった1枚。
イルミン・シュミット & ブルーノ・スポエリ『Toy Planet』(90年発表)
スポエリは、マニアックな発掘音源に定評のあるアンディ・ヴォーテル主宰のファインダーズ・キーパーズが再発した70年代の作品『Gluckskugel』や、レア音源をコンパイルした『Teddy Bar / Lilith』などのアルバムでも知られるスイスのマルチ奏者。70年の大阪万博にも出演したというジャズ・コンボ、メトロノーム・クインテットの一員としてのキャリアもありつつ、商業音楽からエクスペリメンタルな作風までを自在に行き交うビザールなイージーリスニング風サウンド(ワードが矛盾してますが)が面白いんです。
そんな彼が、あのカンのキーボード奏者であるイルミン・シュミットとアルバムを作っていたという事実を不勉強な僕はその日のエサ箱で知り、大きな衝撃を受けたのでした。
基本的には両者が演奏するシンセがふんだんに使われた(いまであれば)バレアリックだったりコズミックだったりするムードがベースとなりつつも、ジャズメンとして鳴らしたスポエリのソプラノ/テナー・サックス、そしてリリコン(エレキの吹奏楽器)が時折艶っぽいブロウを聴かせる“The Seven Games”“Two Dol”、突如放り込まれる強烈なエレクトロ・タンゴ(?)“Yom Tov”、アシュラ(マニュエル・ゲッチング)“Sunrain”あたりのメディテーションを奇妙な夢が少しづつ食い潰していくような“Springlight Rite”、清々しいアンビエント・ジャズ“When The Waters Came To Life”など、一筋縄ではいかない聴きどころ満載のアルバムとなっています。
こんな出会いが思いがけずやってくるからマジック・ボックス巡りはやめられない……
今週末はどんな盤が待っていることやら。