ボブ・ディラン登場前夜のグリニッジ・ヴィレッジを舞台に、デイブ・ヴァン・ロンクをモデルとした名もなき男ルーウィン・デイヴィスの1週間の彷徨を追う。音楽プロデューサーにT=ボーン・バーネット、コーエン兄弟の音楽映画としては『オー・ブラザー』が容易に想起されるが、本作はギミック的な笑いを排した正攻法な作法である。しかし、この二つの映画がプロットという点で共鳴し始める。というか、実は同じ有名な物語を語っているのである。容易に気づけないのは、キャリー・マリガンや、全編に登場する猫の可愛さに目を奪われてしまうからだけではなく、コーエン兄弟の円熟によるものだ。猫の名前をお聞き逃しなく!