『箒星図鑑』に載っている面々(音の部)
多彩なポップセンスが炸裂しまくる『箒星図鑑』と音的な共通項を感じさせる面々をここではピックアップ。まず、オールディーズ風味満点な“チョベリグ”でのチョベリキュートな彼女は〈カラーに口紅〉のコニー・フランシスみたい。ぜひ伊東ゆかりのカヴァーをしてもらいたい。
続いてドリーム・ポップな“美少女”は、名コンピ『音壁 JAPAN』に入ってそうなフィル・スペクター・サウンド系の――日本なら大滝詠一に通じる西海岸サウンド。ビーチ・ボーイズ風のコーラスもハマってる。一方、タランティーノの映画で流れてそうなサーフ・ガレージ曲“ブルーベリーシガレット”では超ワイルドに変身する彼女。〈ロックンロールで行くぜ!〉ってことでレッド・ツェッペリンの“Rock And Roll”のドラム・パターンを用意しちゃう素直さがグー。
そして、“なかよしグルーヴ”を聴いてふと浮かんできたのは、左とん平の険しい顔。というのも“とん平のヘイ・ユウ・ブルース”に通じる香ばしいファンキー・グルーヴが転がり出てきたもので……カッコイイんだこれが。 *桑原
『箒星図鑑』に載っている面々(詞の部)
吉澤嘉代子のシュールかつややレトロな歌詞の世界観のルーツを辿れば、そこには小さい頃から聴いていたという井上陽水の存在があるのは間違いない。そして、そのテイストをいまに受け継ぐ男性シンガー・ソングライターとしては星野源の名前を挙げることができ、くだらないの中に愛が溢れているのは、吉澤の歌詞との共通点と言えよう。
一方、少女の思いをコミカルに描くという意味では、東京カランコロンが思い出され、せんせいが“美少女”にピアノで参加しているのも納得(実は、女心を描くのが上手いのはいちろーだったりもするのだが)。そして、吉澤嘉代子と言えばやはり〈妄想力〉で、近年は大森靖子や水曜日のカンパネラなど、妄想女子たちの活躍が目立っており、曲ごとにさまざまな女性の姿を描いた黒木渚の『標本箱』は、『箒星図鑑』と通じるものがある。
しかし、どこか青さを残しつつも、夢見がちだった少女が徐々に自分を確立していったというストーリーから、同い年であるねごとの蒼山幸子の歌詞に、より強いシンクロを感じることができるように思う。 *金子