新元号を用いたタイトルよりも、これが彼にとって20代最後の作品だという事実に深い感慨を覚える。本人名義での新アルバムでは、布施明の名曲“君は薔薇より美しい”へのオマージュに満ちた“平成の男”など昭和の香りがプンプンする清竜人的歌謡祭が大展開。レトロでゴージャスな“馬鹿真面目”やメロウなボサノヴァ“25時のBirthday”なども飛び出し、〈いったいここはどこ?〉と戸惑ってしまいそうになるが、どの曲も彼史上もっともロマンティックかつフレンドリーな性格をしていて、そこが可笑しくもあり、こそばゆくもある。しかし今の時代、こんな特殊性と独自性に溢れた歌世界が描ける人は本当に貴重だとつくづく思う。吉澤嘉代子を迎えたジェントルなバラード“目が醒めるまで”もやはり名曲。