『Fan Of A Fan The Album』のバックグラウンドにあるもの
ジャケのヴィヴィッドな色合いからして言わずもがなだが……本作のイメージを形成するアートワークやオーヴァーサイズ感のあるブックレット内のファッション、ヘアスタイルなんかを目にすれば、年季の入ったリスナーならクリス・クロスのことを思い出すのではないだろうか? 当人たちは共に89年生まれなのでクリス・クロスの活躍をリアルタイムで記憶していないにしても、それこそ80年代末から90年代半ば頃にかけてのカラフルでポジティヴなR&B/ヒップホップのあの感じが蘇ってくるという人は多いと思う。
まあ、“Ayo”のMVはバッド・ボーイ黄金期を思わせる90年代後半の映像にオマージュを捧げていたりして時代考証(?)に一貫性はないのだが、本人たちにとっては広い意味で〈子供の頃〉に親しんできたあれこれを表現しているのだろう。さらに年少のレイ・シュリマーにも同じようなノリは感じられたので、大まかな意味での90年代的なヴィジュアル感はこっちのフィールドでも主流になっていくかもしれない。
もちろんそれ以上に今作の背景となっているのは、ブラック・ヒッピー軍団を筆頭にYGやキッド・インクのようなイイ感じのスターを次々に輩出してくる、ここ数年に渡った西海岸ヒップホップ・シーンの好況だろう(“Rack City”でDJマスタードをメジャーの舞台に引き上げたタイガも、当然その立役者の一人である)。みんな大好きなケンドリック・ラマーのニュー・アルバム『To Pimp A Butterfly』もリリースされたので、この界隈の賑わいについてはまた改めて紹介したい。