インタビュー

高校生ポップ・マエストロ、シンリズムのインタヴューを独占先行公開! 生い立ちから最新シングル“心理の森”まで語り尽くす

高校生ポップ・マエストロ、シンリズムのインタヴューを独占先行公開! 生い立ちから最新シングル“心理の森”まで語り尽くす

作詞/作曲/編曲から楽器演奏までをマルチにこなす、現役高校生のポップ・マエストロが神戸に現る――まさに彗星の如くシンリズムが僕らの前に登場したのは、2014年に入ってすぐのこと。同年2月にAno(t)raksより配信された『処方箋ep』から垣間見えたのは、シティー・ポップAOR渋谷系スムース・ジャズフュージョンボサノヴァなど、ある種の洗練が必要とされるジャンルと、10代ならではの瑞々しさを湛えたエレクトロ・ポップインディー・ポップが違和感なく同居した高度な音楽性だった。そして多くのリスナーの胸には、その後も発表され続ける楽曲群を通して、こんな想いすら去来したはずだ――〈いま我々が耳にしているのは、巨大な才能のまだほんの一部分かもしれない〉。膨らみ続ける一方だったこちら側の妄想と期待に応えるように、マエストロにとって初の全国流通盤となるファースト・アルバム『NEW RHYTHM』が、いよいよ5月20日にリリースされる。シンリズムはどのように生まれ、これまでに一体どれほどの音楽を吸収し、どういったバランスで創作を行っているのか。Mikikiとしても待ち焦がれた初対面の瞬間に、彼はたっぷりと自身や作品のことについて語ってくれた。今回は、いちアーティストとしてのシンリズムの実像に迫りつつ、今年のレコード・ストア・デイに7インチ・シングルとしてカットされた“心理の森”の話題まで掘り下げる、本邦初となるロング・インタヴューをお届け!

★ファースト・アルバム『NEW RHYTHM』の世界に迫ったインタヴュー後編はこちら

シンリズム NEW RHYTHM Ano(t)raks/FAITH(2015)


 

――今回シンリズムが遂にMikiki初登場ということで、まずはイントロダクション的にご自身のことをじっくりうかがっていきたいと思います。アルバム用の資料が届いたときに驚いたのが、赤ちゃんの頃にブラジルのポップ・アルバムがお気に入りだったという話で。これはどなたのアルバムですか?

「アーティスト名は曖昧なんですけど、お父さんが持っていた盤で。たぶんお父さんもジャケ買いかなんかで買った作品を、僕が泣いてたときにかけたら泣き止んだって」

――ボサノヴァっぽい感じの?

「いや、どちらかというとポップスですね。ボッサじゃなくて、ブラジルのポップス」

――そうなんですね。〈若きポップ・マエストロ〉と言われるシンリズムさんですが、スタート時点からやっぱり先に行ってたんだなって、その話を知ったときにすごく思って。

「そのときの記憶はほとんどないんですが、最近お父さんの部屋からCDを何枚か適当に持ってきて聴くということをやってたら〈なんかこれ聴いたことあんねんけど〉って。そしたら〈それ小っちゃい頃に聴かせてたやつやで〉と。軽くは覚えてるのかな」

――お父さんの影響はかなり大きいんですね。

「そうですね。もともとお父さんも、シンセサイザーを学生の頃に買って、練習もせずにいきなり曲作りを始めたりする人だったので」

――お父さんの若い頃って、シンセもいまと比べるとかなり高価な楽器だったはずですよね。

「すごくお金を貯めて買ったと話していました」

――お父さんはまだ作曲を続けているんですか?

「いまは作っていないですね。本当は歌モノを作りたかったらしいんですけど、一回チャレンジして自分で聴いたら恥ずかしくなってやめちゃったらしいです。それで歌モノは作らずにインストを趣味で作っていたような感じ。僕が楽器をやりたいと言い出したとき、お父さんはギターを弾けないので〈息子にやらせて上手くなったら使ったろ〉みたいなつもりだったらしいんですけど、僕がそのまま自分の曲作りを始めちゃったので〈もういいかな〉と話していました」

――お父さんがやりたかったことを、偶然とはいえ引き継いだ部分があるんですね。ちなみに、ご自宅にはお父さんのレコード・コレクションが充実してるんですか?

「買ったものがレコード棚に収まりきらなくなって。棚もそんなにいっぱいあるわけじゃないので、平積みのような形で部屋に置いてある感じですね」

――幼少期から音楽に囲まれた環境で育ったということですね。

「小学校の頃はまったく音楽に興味がなかったんです。だから、自分の家にいろんな音楽があることには気付かなかったですね」

――まさに訊きたかったのが、意識的に音楽を聴き出す前までの時期に好きだった音楽の話で。普通のアニメソングなんかも好きだったんですか?

「アニメの曲でサンボマスターの曲なんかは結構気に入って車で聴いたりしました。「NARUTO」のオープニングで使われていた曲(2004年のシングル“青春狂騒曲”)。あとはディズニーランドの曲やサントラみたいなCDを借りてきて、それをテープに録音して車で聴くっていうことはありましたね」

【参考動画】サンボマスターの2004年のシングル“青春狂騒曲”

 

――そうだったんですね。でもそこから、中学生でベースを皮切りに楽器を始めるわけですよね。何かきっかけがあったんですか?

「中学では吹奏楽部に入ったんですが、その前に小学校の頃に音楽会などでいろんな楽器に挑戦する機会があったんです。合唱とは別に楽器を演奏するということで、オルガンやアコーディオンとか、パーカッションやスネアなどの楽器担当を立候補制で決めるのですが、立候補者が多い場合はオーディションになるという。立候補しなかったらリコーダーをやらされるんですが、僕はリコーダーも別に嫌いじゃなかったけど、ほかの楽器もやってみたくて、スネアやアコーディオンなどをいろいろやって、その勢いで楽器全般の演奏を始めた感じです」

――なるほど。きっかけは部活動だったんですね。

「音楽はやっていて楽しかったので、吹奏楽部に入ったら楽器に触れるし。それで吹奏楽部に入ったときに、小学校からずっと一緒の友達がいて、その子がパーカッションに入ったんです。パーカッションの子って絶対ドラムをやるので、これでドラムはいるな、と。その子とは別にもともとドラムを叩ける友達がいて、そっちの子はギターもできて、じゃあギターをやってもらおうっていうことで〈これでバンド出来るやん!〉と話していたんですが〈でもベースいないやん〉って。そこで〈じゃ俺がベースやるわ〉みたいなノリでした」

――てっきりお父さんがベーシストだった影響なのかなと思っていました。

「ベースはまったくやったことがなかったです」

――資料にあった、影響を受けたベーシストやアーティストの欄に、アークティック・モンキーズだったり元アークティックのアンディー・ニコルソンの名前があったのはちょっと意外でした。これはその当時そのあたりのロックが好きだったんですか?

【参考動画】アンディー・ニコルソン在籍時のアークティック・モンキーズによる
2005年のファースト・シングル“I Bet You Look Good On The Dance Floor”のライヴ映像

 

「影響を受けたアーティストというか、カヴァーをしてたんですよね。〈このアーティストに絶大な影響を受けました〉みたいな人は、僕の場合はあまり言えないんです。だから〈カヴァーしたことによって、いま(の自分のスタイル)があるのかな〉という意味で、一番最初に3~4曲ぐらいカヴァーしていたアークティック・モンキーズを挙げました」

――あれはそういう意味でのチョイスだったんですね。

「いまは活動していないんですが、高校の友達と小学校から一緒の友達と組んでたバンドがあって、そのバンドはアークティック・モンキーズみたいな音楽をやりたいと思って曲を作ってたんです。ただ僕の声質的にあまり激しすぎる音楽は合わなくて。アークティック・モンキーズも激しい曲からネオアコ寄りの曲まであるじゃないですか。だから曲調も徐々にそっち(ネオアコ)寄りのものになっていって、ドラムを叩いてた子が激しい音楽が好きだったから、大人しめになっちゃって抜けたりしたんですけど。でもアレンジ的にはUKロックみたいなサウンドはけっこう好きですね」

――ベーシストの話でいうと、スチュワート・ゼンダーポール・ターナーのようなジャミロクワイの歴代ベーシストの名前も挙がっていて。ここにはいまの音楽性に通じるものをちょっと感じます。

【参考動画】スチュワート・ゼンダー在籍時のジャミロクワイによる94年のシングル“Space Cowboy”

 

「どちらかというと後半はブラック寄りというか、ベースがすごく動く音楽のほうが楽しくなって。最終的に“処方箋”なんかもジャミロクワイのイメージでベースは弾いています」

――ギターもオフスプリングから始めたと書いてあって、ちょっと意外でした。いまはパンクは聴かないですか?

【参考動画】オフスプリングの99年のシングル“The Kids Aren't Alright”

 

「たまに意識的に聴こうかなというか、気分を替えたいときに聴いたりします」

――最近聴いたのは?

ウィーザーとか。あと最近見つけたそっち寄りというか、……このバンドが最近……(iPodを探る)」

――あ、テイム・インパラですね。

【参考動画】テイム・インパラの2013年のシングル“Mind Mischief”

 

「っていうのを見つけて」

――いまのシンリズムの音楽とは真っ直ぐには結びつかないイメージですが、そのあたりの音楽も聴いてるんですね。話を戻すと、楽器を覚えてから作曲を始めることになるわけじゃないですか。これもきっかけみたいなものはあったんですか?

「僕的にはフレーズが難しい曲とか、段階的にやりたい曲を見つけたらカヴァーにトライする感じだったんですが、徐々にやっていくなかで中学3年ぐらいにはギターやベースも簡単なフレーズだったら弾けるようになってきて、お父さんから〈もうそろそろ曲作ってもイケるんじゃない?〉と言われたんです。僕は曲を作ることはあまり考えてなかったんですけど、言われてから作ってみようかなって。それが中3なので、3年ぐらい前」

――そもそもの話なんですが、曲作りはいつもしてるんですか? それとも〈ここで曲作りしよう〉と期間を設けるとか。

「たまたまほかのアーティストの音楽を聴いてて、テンションがアガって〈やろう!〉ってならないと全然進まなかったりするんですよね、僕の場合。〈もうそろそろやっておかないとヤバイ〉みたいに意識してしまうとあんまりアイデアが出てこない場合も多くて。出てきた場合もまったくダメだったり。音楽には何かしら触れているようにして、モチヴェーションを上げていくようにしていますね」

――なるほど。ともかく、そうやって作曲を始めた2年後くらいにはAno(t)raksから『処方箋ep』や『superfine』が出ていることを考えると、やっぱりすごいタイム感でここまで来てるんだな、と改めて感じますね。その後に〈10年代現行インディー・アーティストたちによる、リアル・メロウ・ポップス集〉をコンセプトとするAno(t)raksのコンピ『Light Wave ‘14(Vol.1)』に参加していたのも印象的でした。話は少し変わりますが、TwitterでLampの方とやり取りしていましたよね。

 

「初めての東京でのライヴで、岸野雄一さんの企画で神保町の試聴室でやったイヴェントがあったんですが、そのときにたまたまLampの染谷大陽さんが観に来ていて。それでちょっとお話しをさせていただいたんですよね」

――そうだったんですね。そうしたリリースやライヴを経験したうえで、現在の制作チームと出会ったことがさらに大きなステップアップの契機になったんですね。今年1月には “superfine”を7インチ・シングルでリリースして、今回発売された7インチ・シングル“心理の森”に繋がってくると。ちなみに、A面の“心理の森”の原曲を作ったのが中3だったということに驚いたんですが……。

 【参考動画】シンリズム “心理の森”

 

「一番最初に自分で作って楽器屋さんに置いてもらったデモにも入ってる曲です」

――ストリングスのアレンジもすごく凝ってて。イメージしたアーティストはいますか?

「ストリングスは冨田ラボさんみたいなイメージで作りたくて。日本のシティー・ポップ寄りの楽曲を出したいと思って作ったんですよ」

――タイトルの語感がおもしろいと感じたのですが、このタイトルにした理由や歌詞の世界観のイメージを教えてください。

「学校で、相手に言われたことに対して深く考えすぎちゃうことがよくあるんです。そこで、これを歌詞に出来るんじゃないか?みたいな発想がもとからあって。考えすぎちゃってわからないという状況を〈森〉に例えています」

――そうだったんですね。ではB面の“Beautiful Sunday Morning”についてですが、こちらの曲はホーンやコンガだったり、楽器類の彩りが豊ですよね。こうした緻密なアレンジは作った当初からあまり変わってないんですか?

【参考音源】シンリズムのファースト・アルバム『NEW RHYTHM』ダイジェスト
※44秒あたりから“Beautiful Sunday Morning”が試聴可

 

「あんまり変わってないと思います」

――すごいですね……。“Beautiful Sunday Morning”はどんなイメージで作った曲ですか?

「これは明るくて壮大な感じの曲を作りたくて、同じ楽器が鳴ってるんじゃなくていろんな楽器がちょこちょこ出てくるイメージで曲を作ってみようと」

――この2曲にも象徴的なんですが、〈10代ならではの感性〉と〈10代とは思えない完成度〉が共存するのがシンリズムの個性のひとつだなと思って。ちょっと意地悪な質問かもしれないですけど、このギャップを意識して曲を作ることはありますか?

「僕の場合は、いま自分が聴いてて興味を持った音楽を自分の楽曲にも活かしてみようという気持ちで作っている段階なので、そこまでは意識していないですね」

――シンリズムさんは声が素敵で、聴いていると10代の感じがするんですけど、例えばもし細野晴臣さんみたいなバリトン気味の声だったとしたら、作る曲も変わってくるのかな?と思ったんですよね。自分の声質も意識して曲を作ってるんですか?

「もともと僕も歌モノは作りたいけど、僕自身が歌うとことはあまり考えていなくて。正直ほかに誰か歌ってくれる方がいたら、その人に任せようと思っていたんですけど、一人で作ってたから自分で歌うしかなかったんです。だからもし声が違ったとしても、(曲は)そのままだったかもしれない。やりたい曲があったらそういう雰囲気の音楽をやろうって気持ちで、いまでも意識して取り組んでいるので」

 


 

ということで、今回のインタヴューはここまで。近日公開予定の記事では、シンリズムがファースト・アルバム『NEW RHYTHM』についてたっぷりと語ってくれているので、こちらもお楽しみに!

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