西海岸の鬼才MCによる2年半ぶりの新作。複雑怪奇な感情が入り乱れるとされるリリックも考察意欲を掻き立てるのだろうが、フライング・ロータスやサンダーキャットを含む制作陣の助力を得て、PとGなファンクや70年代前衛ジャズ的な要素を織り込みながら淀みないフロウでリズミカルに展開していく楽曲は、ラストを飾る故2パックとの擬似対話まで極めて音楽的で、予備知識不要の親しみやすさがある。ビラルやスヌープの怪演にラプソディ嬢の気高いラップ、ジョージ・クリントンやロナルド・アイズレーの降臨も説得力を持つアーバンで壮大な音楽絵巻は、黒人の尊厳回復を謳ったとして同一視されるディアンジェロの『Black Messiah』以上に多彩でイマっぽい。これぞ〈アルバム〉と言いたくなる会心の一枚。