今回は、最新作『BED ROOM』にリミックス2曲を追加収録した『BED ROOM/alternative』をiTunes限定でリリースしたCICADAと、同作で“Naughty Boy”のリミックスを手掛けたPARKGOLFの対談をお届けします! 4月に行われたCICADA『BED ROOM』ツアー・ファイナルにはPARKGOLFが出演するなど、かねてから気になる存在だったという両者。このたび、Mikiki編集部はその共演ライヴの開演前にお邪魔して取材を敢行しました。取材当日はリミックス音源の完成前だったため、それにまつわる話を詳しく聞くことはできなかったのですが、後日“Naughty Boy”のリミックスが出来上がってのコメントを双方からもらったので、そちらも対談の最後に掲載しています。併せてご覧ください!
――今日はPARKGOLF(以下、パーゴル)さんを囲んで……という座談になりますので、よろしくお願いします(笑)。まずはパーゴルさんがCICADAを知ったきっかけを教えてもらえますか?
PARKGOLF「僕が2.5Dでイヴェント(〈YASHIBU〉)をやった時に、2.5Dの中川(義和、2.5D management)さんからヤバいバンドがいる……という話を聞いて。それからCICADAの音源を聴いて、その後にイヴェントで会って……というのが最初ですね」
――パーゴルさんがCICADAをすごく気に入っているという話を聞きました。
P「めっちゃ聴いてますよ」
CICADA「ありがとうございます!」
――具体的にどういうところに惹かれたんですか?
P「僕はヒップホップが好きで、その流れでR&Bも好きなんですが、バンドで90年代R&Bっぽさみたいなのが出ていたのが個人的にすごく新しくて、その90年代R&B/ヒップホップが混ざってる感じがめっちゃイイなと」
――バンドに反応されているのが意外でした。
P「バンドはやりたかったんですけど、楽器を練習するのがちょっと……みたいな感じで、辞めたんです(笑)」
――そうだったんですね(笑)。じゃあそれから一度もバンドは組まず……?
P「組もうかって話になって、組まずに終わった感じですね(笑)」
――やはり楽器がネックでしたか(笑)?
P「そうですね(笑)。その頃からヒップホップを作っていたので、そっちのほうへ行くことになりました」
――CICADAの皆さんはパーゴルさんのことはもちろん以前からご存知だったと思うのですが、どういう印象でしたか?
木村朝教(CICADA/ベース)「初めてパーゴルさんのライヴを観たのが去年の年末にあった〈YASHIBU vol.1〉で、その時にCDを持って挨拶させてもらって。DJというとトラックを流して、エフェクトかけて……というイメージだったんですけど、もっとライヴ感というか、生っぽさがいいなと思いましたね」
若林とも(CICADA/ギター&キーボード)「バキバキで……(笑)」
一同:笑
及川創介(CICADA/キーボード)「ライヴは本当にカッコイイんですよ」
木村「去年、城戸と〈StarFes.〉に行って、そこでDJ KRUSHのライヴを観て、その場で音を作っていく〈生〉なパフォーマンスに魅力を感じたのですが、そういった生演奏感のあるライヴをパーゴルさんにも観せてもらって感銘を受けました。それで共演したいなと思ったんです」
――なるほど。バンドとDJとではもちろん編成も違いますが、お互いに通じている部分はあると思いますか?
木村「ありますね。サンプラーを使ってたり……」
若林「僕がサンプラーを使っているんですが、エフェクトのかけ方とかが下手で、音が鳴りすぎると怖くてヴォリュームを絞っちゃう(笑)。で、2回目の〈YASHIBU〉の時にパーゴルさんの手捌きを見て……」
城戸あき子(CICADA/ヴォーカル)「みんなでPARKGOLFさんを目の前でちゃんと観ておこうって(笑)」
若林「微動だにせず(笑)、へぇ~そうやってやるんだ~と」
――直接教えを乞うことはしなかったんですか?
若林「人見知りなんで……全然」
一同:笑
――じゃあこの機会に訊いてみてはいかがでしょうか(笑)。ところで、パーゴルさんがバンドと共演するというのは……。
P「最近はちょっと増えてきたかなという感じですね。神聖かまってちゃんのの子さんをフィーチャーしたtofubeatsの楽曲(“おしえて検索”)や、SEBASTIAN X(“こころ”)のリミックスをやったりしたので、そういうのもあって……かなと」
――CICADA“Naughty Boy”のリミックスを今回手掛けられましたが、これは〈この曲で〉というオファーがあったんですか?
P「いや、自分で選びました。単純にこの曲が好きだったので。実はもう1曲とどっちにしようか迷って、“Colorful”」
――鮮やかで明るい感じの曲がお好きなんですね。
P「あ、そうですね」
――(取材当日はリミックスの完成前だった)どんな仕上がりになりそうですか…?
P「う……どんな……バキバキに(笑)」
城戸「曲は自分たちだけで全部作っているので、他の人の手が加わって自分たちにないエッセンスが入るというのがまず楽しみですね」
――CICADAは誰かにリミックスをお願いすること自体が初めてなんですね。
城戸「そうです。自分たちでリミックスはするけどね」
木村「創介がセルフ・リミックスします」
若林「気分転換に」
及川「リミックス楽しいですよね」
P「楽しいですよね。僕、自分で曲作るのも好きですけど、よりリミックスのほうが好きかもしれないです」
――へぇ~。実際リミックス・ワークも多いですもんね。
P「そうですね、色々とやらせてもらってます」
――パーゴルさんのリミックスは何が飛び出すかわからないワクワクがあります。
P「ハッとさせたいというのはありますね」
――リミックスするにあたって意識していることはあるんですか?
P「原曲を損なわないように、というのは絶対意識してます。勝手なリミックス曲のイメージなんですけど、やっぱり原曲ほどは聴かれないじゃないですか。聴くにしても後回しになるものというか。だからなるべく(原曲より)短くしたいっていうのはありますね。間奏部分を消して、1番→サビ→2番とある場合は1番と2番をくっつけてサビに持っていったりとか、時間が大事じゃないかなと。なるべくコンパクトにしたいというのはあります」
CICADAとPARKGOLFがコラボするなら……
P「曲作りってどういうふうにやってるんですか? バンドの場合ってよくわからないんですよね」
及川「若林がデータを作ってくるんで……」
P「データって?」
若林「メトロノームとアコギと歌だけの……(笑)」
及川「絶望的なデモが送られてくるんです、超ヤバイっすよ(笑)」
一同:笑
及川「それを聴いて僕がアレンジしていく感じです。この間、白馬に乗ったモンゴルの馬賊みたいな曲が送られてきて、速攻ボツになったっていう(笑)。もうヘンなのがたくさん送られてくる」
P「フフフ」
城戸「それを創ちゃんがカッコ良くアレンジして、こういうの出来たからってみんなで聴いて、みんなでアレンジして、スタジオで合わせる」
P「へぇー」
――まあでもバンドによって作り方はまちまちですよね。
木村「そうですね、スタジオに入って作る人もいますし」
――CICADAにはそういうプロセスが(笑)。
及川「若林のデモを公開するアカウントをSoundCloudに作りたいです」
――あー、気になる気になる。
木村「それをパーゴルさんにリミックスしてほしい」
一同:笑
――ハハハ、それはいろんな意味でおもしろいですね。斬新!
及川「パーゴルさんがどこまでできるか」
――どこまで曲にできるか(笑)。若林さんがパーゴルさんにデモを送って……。
若林「恥ずかしくて聴かせられない(笑)」
P「歌詞はデモの時点で出来てるんですか?」
及川「そういう時もあるし、ランラン系の時もある」
P「ああ、なるほど。でもバンドは曲が出来るまでに何人かを通しているから、おもしろいですよね」
及川「当初想定していたものと出来上がったものではだいぶ変わってきますね。パーゴルさんは1曲どれくらいの期間で作るんですか? まちまちだと思うんですけど」
P「まちまちですけど、3日か4日くらいで1曲出来るかな……。気合い入れると1週間とか1か月かかるのもあるんですけど」
及川「今回のアルバム(『Par』)の曲はそんなにループものではないですよね」
P「展開のあるものが多いですね」
及川「仕掛けが細かくあるような曲も早くて4日くらいで出来ちゃうんですか?」
P「そうですね」
及川「それはすごいなー」
――音の要素も多いですよね。
及川「それでもすっきりしてるっていうのがすごくカッコイイ。左右に振られる感じがすごく効果的だし、仕掛けもたくさんあるし、インパクトがある。生演奏ではできないDTMのイイところがたくさん入ってる」
P「生演奏ができなかったぶん、そこに行くしかなかった(笑)。作る時は飽きないようにしたいと思っていて、ずっと同じところを聴いて作ってるとだんだん飽きてくるから、ハッとするような展開を付けるようにしていますね。でももっと音数は減らしていきたいですけど。何にもいらないくらいの……(ニヤリ)」
――無音(笑)。
P「無音とか……ムホホホホ。謎の感じでどんどん行きたいですね(笑)。SoundCloudで曲を聴く人は、SoundCloud上にはいっぱい(曲が)あるんで、インパクトがないとどんどん飛ばされるんです。だからそのぶんキメの部分を多く作ったり、聴かせる部分をちゃんと作らないと聴いてもらえないというのがあって。最近はそれ勝負みたいになっている。だからこそもっと音数を減らして、そこから離れたいなと思っています」
――ああ、なるほど。確かにSoundCloudでのリスナーの作法を意識するとそうなってしまうんですね。ちなみに、CICADAとパーゴルさんとでライヴ共演ではなく制作の現場でコラボしてもおもしろそう。
及川「やりたいですね」
P「おもしろそうですね」
――もしやるとしたら、どんな感じになりますかね?
及川「まずパーゴルさんにCICADAに加入していただいて……」
一同:ハハハハ(笑)
――そこから?
若林「俺のエフェクターのつまみとかいじってもらって(笑)」
――それをパーゴルさんにやってもらうんですか(笑)? そうじゃなくて……。
木村「パーゴルさんの曲を生演奏で落としたりしてみたいよね」
P「ああ……」
木村「たぶんドラム死ぬけど(笑)」
櫃田良輔(CICADA/ドラムス)「どうにもなんねえ(笑)」
及川「でも、そういうのいいかも。(櫃田に)練習しよ!」
P「でも……何かやりたいのでよろしくお願いします」
CICADA「よろしくお願いします」
――ハハハ(笑)。なんだか上手くまとまりませんでしたが、このへんで!
~“Naughty Boy” PARKGOLFリミックスが完成して~
from PARKGOLF
“Naughty Boy”の原曲は休符やキメが多い曲で、僕自身も自分の曲で休符やキメを多く使うことから、それをどうやって目立たせようかというのがいちばん難しかったです。なので、CICADAではあまり使わなさそうなコードを少し使ってみたり、〈DTMっぽさ〉を意識したりしました。原曲がスムースなぶん、Remixはクセのある方向で仕上がったな〜と思います。
また何かで一緒に楽しいことができればと思います、ありがとうございました!!
from CICADA(及川創介)
PARKGOLFさんに“Naughty Boy”をリミックスしてもらい、なんだか嬉しいような恥ずかしいような。気付けば何回もリピート再生していて、もうハイハットの打数までバッチリ記憶しちゃってます(笑)。彼の音楽には前から惹かれていて、物事の反比例を音に落とし込んでるというか、細かさに内包された引きの美学があると思います。音楽に付く定員は多いようで少ないもので……。足された音には引かれる音が鉄則じゃないですか。それをサラリとこなしているところに、とてもヤラれますね。原曲とはまた違った物語を聴かせていただきました。