ますます幅広くなるマシュー・ハーバートの作品たち!
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VARIOUS ARTISTS Globus Mix Vol.5 - letsallmakemistakes Tresor(2000)
淡泊なれどグリッチーなビートが中毒性の高いミニマル・テクノ~ハウスを90年代から量産してきた彼の面目躍如たるミックスCD。多名義に渡る自作曲を挿みながら、イゾレー、セオ・パリッシュ、プラスティックマンなどを繋ぐファンキーなノリは、一周回ってイマっぽい! *北野
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DOCTOR ROCKIT The Unnecessary History Of Doctor Rockit Accidental(2004)
95年のEPを皮切りに多数の作品を発表したドクター・ロキット名義の、レア曲も含むベスト盤的なコンピ。生活音や楽器を織り込んだ遊び心全開のクリック・ハウス/エレクトロニカは、ひねくれた表題にピンときた人には逃れられないファニーな魅力が全開。 *杉山
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ダニ・シシリアーノを迎えた98年作『Around The House』での歌ものハウス路線を押し進め、手術音など〈身体〉に関する具体音や、フィル・パーネルらジャズ奏者のプレイを交えながらエレガントに着地した代表作。メロディアスな名曲揃いなので、『The Shakes』で彼を知った人は手に取るべき。 *北野
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本名名義における初アルバムのテーマは、〈食〉にまつわる問題提起。りんごを食べる音、水、3万羽の鶏、サーモンの養殖場――あくまで日常に根差した食のシーンから録った音をジャズ・ハウス/アヴァンギャルドな形に再構築し、巨大なフード産業の危険性を表現してみせた。 *杉山
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『Bodily Functions』に続いてダニ・シシリアーノがヴォーカルで参加したハーバート名義の本作では、ギターからシリアルに至るまで635にも及ぶ素材を使用。大々的に導入したオーケストラ・サウンドと声が絡み合うポップな世界観は、最新作『The Shakes』にもっとも近いと言えそう。 *杉山
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その名の通り、映画やショート・フィルム、舞台に提供したスコアを集めた作品。そのため、ビッグバンド・スタイルの演奏を細切れにした“Singing In The Rain”から、アンビエント風の“Nicotine”まで音楽性は幅広い。ペネロペ・クルス主演映画「マノレテ 情熱のマタドール」に提供した楽曲も。 *杉山
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THE MATTHEW HERBERT BIG BAND There's Me And There's You !K7(2008)
〈大所帯のビッグバンド=古典〉と〈サンプリング=現代〉とを融合させるプロジェクトの2作目。ここでは400人の演奏家を起用しつつも、その両要素が自然に溶け合い、スウィング・ジャズ、コンドームの破裂音、政治的なモチーフなどが渾然一体となって巨大な昂揚感を生んでいる。 *杉山
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〈One〉3部作の端緒を切った本作では、完全に自分ひとりで作品を作り上げるというコンセプトゆえに、初めてヴォーカルにも挑戦。細めながらも意外と味わい深い歌声が、親密な空気を纏った演奏にマッチしていて、シンガー・ソングライターとしての彼が楽しめるレアな一枚に。 *北野
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MATTHEW HERBERT Recomposed By Matthew Herbert : Mahler Symphony X Deutsche Grammophon(2010)
カール・クレイグ&モーリッツ・フォン・オズワルドに続き、クラシック音楽の再解釈盤に登板。マーラーが絶望の淵で作った未完の大作を、カーラジオでかけて再録音するなど、チープな手法と難解さとを対比させて作家の人間性を表現。 *杉山
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90年代に使用していた名義を14年ぶりに引っ張り出した3作目は、大手スーパーのベストセラー商品の音をサンプリング。おおよそメロディーが生まれ得ないであろうパッケージの開封音や、コーラ、ネスカフェなどを使って有機的なケミストリーを編んでいく前衛的な一枚だ。 *杉山
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戦場カメラマンがリビア空軍に爆撃を受けた際に録音した、わずか10秒の音源を素材に作られた問題作。サイン波や細切れのノイズのように加工された音響が不穏な空気を生むなか、時折それを切り裂くように登場する爆発音には背筋が凍る。キャリアにおいてもっとも過激な作品かも。 *北野