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【架空のJ-Pop考】第4回 〈えとたまらじお〉テーマ曲 “ソルラルくれにゃ!” をBorisのAtsuo、AZUMA HITOMI、シャムキャッツ夏目が斬る!

 

キャラクター・ソング(キャラソン)とは、アニメやゲームなどの劇中の役柄/登場人物として声優が歌った楽曲のこと。このキャラソン市場が拡大を続ける近年、音楽自体も大きな進化を遂げているらしい、どうやらおもしろいことになっているらしい! しかしその音楽には、実際に作品を観たりゲー ムに親しまない限り触れることはないわけで。でもその扉を開く第一歩をなかなか踏み出せない……何から手をつければわからない……という人もいるでしょう。 そんな貴方のために、Mikikiではキャラソンという名の〈架空のJ-Pop〉にフォーカスし、一見アニメ/ゲームとは相容れないフィールドで活躍する3名のミュージシャンに、TOWERanime新宿のバイヤーと編集部スタッフがセレクトした1曲を自由にレヴューしてもらいます。さまざまな意味で目から鱗な発見があるかもよ!

そして今回からBorisAtsuoさん、AZUMA HITOMIさん、シャムキャッツ夏目知幸さんの3名にレヴュアーを一新してお届けします!

 


 

【今月のお題】

ソルラルBOB blue moment ポニーキャニオン(2015)

〈干支〉をテーマに、十二支の動物と猫がモチーフとなった13人の美少女キャラが登場するTVアニメ「えとたま」は、キャラソンも十二支よろしくヴァラエティー豊か。ここでレヴューしてもらう“ソルラルくれにゃ!”は、「えとたま」を盛り上げるために放送されているラジオ番組「えとたまらじお ~ソルラルくれにゃ!~」のテーマソングで、スペイシー&ロッキンな長尺イントロからハイテンションなラップに突入する、アニソン/キャラソンではお馴染みの〈何でもアリ!〉な展開がインパクト十分の一曲です。

Mikiki編集部より:ソルラルとは、劇中では〈萌力〉を意味し、「えとたま」の登場人物にとってはとても必要な力らしい。気になる人はアニメを観てください! 韓国の旧正月(ソルラル)と何か関係があるのでしょうか……

“ソルラルくれにゃ!”は2曲目

 

普段アニソンを聴かない方はかなりびっくりするナンバーかと思いますが、エモーショナルなサビのメロディーや絶妙なコーラス・ワーク、間奏パートに登場する干支の覚え歌的なリフレインなど、作品の世界観に寄り添いつつ、さまざまな音楽的要素が見事に調和していることがわかるでしょう。

作曲は、現在アニソン・シーンでもっとも勢いのあるコンポーザーのひとり、Junky! ボカロ界隈を中心にしたネット上の投稿曲で脚光を浴びたJunkyは、その後数々のアニメ作品へ楽曲を提供しており、本連載第2回で取り上げた「ひなビタ♪」シリーズにも参加しています。

「えとたま」のキャラソンは“ソルラルくれにゃ!”以外のナンバーも素晴らしいのですが、ある意味どれもが問題作(!?)とも言えるものです。ぜひ併せて聴いてみてください!

【参考音源】TVアニメ「えとたま」キャラクター・ソング・ミニ・アルバム
『激メシ!!わがにゃの晩ごはん』ダイジェスト音源

 

【参考音源】TVアニメ「えとたま」キャラクター・ソング・ミニ・アルバム
『ETMファイティングクライマックス! 本気の師匠チャレンジ編』ダイジェスト音源

 

 

★Atsuo(Boris)

皆さんオーストラリアって北海道ぐらいの大きさと思ってません? 隣町へ行くのにも飛行機で2~3時間。5都市で6連続ライヴ、毎日3時間ぐらいしか寝られない超過酷なオーストラリア・ツアーから帰国し、今回からタカマガハラ記念メイド喫茶干支店長カップ〈架空のJ-Pop考〉に参戦するBorisのAtsuoデスです。

課題曲は“ソルラルくれにゃ!”。本編OP曲も担当するボカロP文脈出自のJunky氏による、日常(Butハイテンション)×ケモノ美少女×3DCGバトル・アニメ「えとたま」の応援ラジオ番組のテーマ曲にして本編エンディング曲のCDカップリング曲。オープニング曲とエンディング曲が別の円盤(CD作品)という時点で複雑ですね。リリース作品の枚数を増やして荒稼ぎ!というわけではなく、ラジオ番組サイドでも同氏へ楽曲を依頼する熱の入れようです。

アニメ作品内のキャラクターが歌うオリジナル楽曲ということですが、“ソルラルくれにゃ!”は〈えとたまらじお〉のパーソナリティーも務めるにゃ~たんさん、も~たんさん、うりたんさんのお三方がヴォーカルを担当しています。もともとボカロP出身だけに、それぞれのキャラクター設定、背景を読むシャーマン的役割のJunky氏は今作でラップ的手法まで導入。CVの肉声が持つ荒々しくダイナミクスのあるラップ・パートと、ケロケロなオートチューン激修正ヴォーカル・パートの対比によってリスナーを飽きさせない構造になっています。ソルラル収集のため、ラジオ番組内でもお便りコーナーを開設するにゃ~たんさんの本末転倒ぶりも歌詞内でちゃんとイラッとさせてくれる。ピッキング・ハーモニクスの引っかけを多用するメタル・ギター・リフは、Junky氏の代表曲も彷彿とさせ、気合いの入り具合も伝わってきますね。ハイテンションなだけでもなく、間奏明けには〈子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥+猫〉を呪術的に繰り返す目眩パート、左右に広がるディレイがヤバイ。酩酊。そして最大のエンディングへ。

このアニメ番組、前半の日常パートは2Dで描かれ、後半のバトル・シーンは白組によるハイクォリティーなセルライク3DCGという異色作。しかもバトル・シーンはアダルト・モードからプリティ・モードへと〈Kawaii変形〉を採用(二頭身、SD化の歴史の始点として「軽井沢シンドローム」は挙げられているのだろうか?)。ハードウェアの計算速度、容量、ソフトウェアの機能的問題がクリアされ、リアルさのみを追求する必要がなくなったCG業界に〈自由に描ける〉時代が見えてきている?と思わせるクォリティー。そこに加えて、作品世界への動員力、推進力として〈Kawaii〉が最終兵器のように、無限エンジンのように機能している――グローバル感出して〈Kawaii〉表記にしてますが、どうしても〈萌え〉と言えない……。実は〈燃え〉るほうしかわからないのです……。

〈日本一うるさいアニメ〉〈日本一うるさいラジオ番組〉をめざす、この「えとたま」(及び〈えとたまらじお〉)。爆音を十字架として背負うバンドのメンバーとしては縁を感じざるを得ません。うるささではうちのバンドも負けませんよ。LAのフェスでは最前のオーディエンスがゲ○吐いてました。あ、逆プロモーションだ、これ……。

 

PROFILE:Atsuo


92年より活動する3人組ロック・バンド、Borisのドラマー。ほぼすべて自身で録音する断続的なスタジオ・セッションを通じ、限定アイテムやUSビルボード・チャートにランクインする作品を発表。毎年行っている海外ツアーに加え、ナイン・インチ・ネイルズのUSアリーナ・ツアーのサポートや数々のコラボレーション、映画「リミッツ・オブ・コントロール」(2009年)や「告白」(2010年)への楽曲提供など、国内外で幅広く活躍。2014年に最新作『NOISE』をリリース、現在もワールド・ツアー〈Live Noise Alive〉を続行中。また、ニコニコ生放送で配信中のアニメ「ニンジャスレイヤーフロムアニメイション」では第1話のエンディング・テーマとして“キルミスター”を提供、配信も開始した。9月22日にはイヴェント〈leave them all behind 2015〉に出演。

【参考動画】Borisの2014年作『NOISE』収録曲“Vanilla”

 

 

★AZUMA HITOMI

こんにちは。AZUMA HITOMIです。

わたしはアニメの主題歌でデビューしたのですが、最新のアニメにはついて行けず、アニソンがクラブ・イヴェントでかかってもその文脈がまったく読めずに盛り上がれないタイプの、電子音楽好きなシンガー・ソングライターです。今月からよろしくおねがいします!

※TVアニメ「フラクタル」のオープニング曲“ハリネズミ”でデビュー(2011年)

まず。音源を聞く前に、想像してみました――きっと、女の子の声の語りのパートが盛りだくさんで、曲調がいきなりコロコロ変わる、ミュージカルのような、情報量がとにかく多い曲で、シンセの音もデジタルでギンギンの、音圧どうやってそんなに稼いでいるんだ、と驚いてしまうようなミックスで仕上がっている曲だろうなあ! 1回聴いたら疲れるんだろうなあ!

……いざ聴いてみると、予想は半分しか当たっていませんでした。まず出だしのウィスパーなコーラスから、〈にゃあ!〉という可愛い掛け声が始まるまでの1分間、思った以上にわくわくしてしまった。ああ、この曲は超エモいエレキ・ギターがポイントになる曲なんだな、と教えてくれます。ラップと8ビートの畳み掛けるような展開ではとにかく声が可愛すぎて思わず笑ってしまいましたが、スラップ・ベースやチップ・チューンっぽいシンセ音など細かいところまでアレンジがおもしろいです。サビに突入したならば、とてもキャッチーでメロディアス。核になっているエレキ・ギターの音とリズムの疾走感もなんか切ないし楽しい! そして落ちサビかと思えばコーラスとともにいきなり干支のラップ(!)が……! でもこの頃にはわたしの脳みそも回転が速くなっていて、次は何が来るのか?と先回りしながら聴いているので、そのラップも〈おお! なんだこれは!〉とテンション・アップのツールとなっているのでした。

こうやって常に曲を追いかけながらフルスピードで頭を回転させる聴き方は、わたしにとって新鮮でした。同時に、何度か聴いていると、もはや曲を追いかけずにただただ音に浸るという聴き方で〈静かにハイになる〉という楽しみ方も発見しました。耳は疲れると思いますが、こうやって延々と聴き続けるのもなんだか正しい鑑賞の仕方なのではないかと思えてきます。実際、音を聴きながらこの文章を書いていますし、勉強しながらのBGMにするのも効果アリかも。音の情報を過剰に入れ続け、それを意識的に無視することで気を散らすことなく集中して机に向かえる、ような気がしたりして。

情報量の多さのヴェクトルがいまだ未知の方向を向いている〈キャラソン〉。興味深いです! 来月はどんな曲に出会えるのでしょうか。おたのしみに!

 

PROFILE:AZUMA HITOMI


88年、東京生まれのシンガー・ソングライター。大学進学後、ライヴを中心とした音楽活動を本格的に開始し、2010年にMaltineより“無人島”を発表。2011年にTVアニメ「フラクタル」のオープニング曲“ハリネズミ”でメジャー・デビュー。2013年の初フル作『フォトン』では初回限定盤にbanvoxさよならポニーテールGalileo Galileiらが参加したリミックス集も同梱して話題に。2014年には最新作『CHIRALITY』をリリースしたほか、矢野顕子『飛ばしていくよ』に楽曲提供&矢野とのステージ共演、Buffalo Daughter大野由美子らとのユニット=シンセサイザー・カルテットでアルバム『Hello Wendy!』を配信で発表するなど、幅広く活動中。6月20日(土)には東京・Club Asiaで行われる〈YATSUI FESTIVAL! 2015〉へ、7月19日(日)には東京・渋谷Gladにて〈サワソニ Vol.12〉へ出演予定。詳しくはこちらへ!

【参考動画】AZUMA HITOMIの2014年作『CHIRALITY』収録曲“食わずぎらい” ライヴ映像

 

 

★夏目知幸(シャムキャッツ)

純粋に音源に対しての文章を……というオファーを頂きましたが、やっぱり音楽を聴くときって視覚的なインプットもかなり大事だと思うんで、アニメのホームページを開いてみました。かわいい女の子たちが干支の動物に扮して(?)いました。僕は丑年です。〈結局巨乳が好きかも〉という最近の気づきもあり、やっぱり牛の娘が好みです! 舌出してますし、なんかお茶目です。で、それくらいの前情報のみを得ていざ音源を聴くと、最初に〈にゃあ〉ときたので、おや! 猫じゃん!と。干支じゃねえ!と。そういえば牛に目を奪われていたけれど、真ん中に猫耳の少女がいる……確認しました。俄然アニメのストーリーが気になってきます。

ネズミはどこへ?と思っているとマイクリレーが始まり、お目当ての牛ちゃんらしき声が登場。乳頭(?)がどうのと言っている。最高だ(乳頭じゃないとしてもまあいい!)。ところで、ネズミは? 僕は浦安出身なので、やっぱりアニメの主人公って言ったらネズミなんですよね――あ、そういうことか。日本のアニメ、ついにネズミを追いやりにきたか――と考えてるうちに、マイクリレーはどんどん進みまして、サビ。〈いまから13年後〉という歌詞。おや……ということはネズミが追いやられているわけじゃないみたい。えええ、ならばこのマイクリレーにネズミの声も聴こえてくるはずだと集中しても次から次へと曲は展開。ギターもドラムもベースもシンセもフルスロットルでまくし立てる。おおお。そして思う――そういえばバンド・スタイルで演奏されている。

※編集部より:劇中にはネズミ(の干支神)も登場しますが、“ソルラルくれにゃ!”には猫&牛&イノシシの干支神のみが歌っています説明不足で申し訳ありません……

Aメロは基本ラップです。速弾きやらあの独特なメタルっぽいギター奏法もマスターした御茶ノ水の楽器屋さんの店員みたいな見ためのルーツ(THE ROOTS)の前で、ジュラシック5に憧れた干支女子たちがマイクリレー……みたいな絵を思い浮かべたり。あ、いかん。ネズミを見つけねば。あれ……いない……わからない。この、Aメロの合いの手みたいのなのがネズミかな? いや、もしかしてこのギター・ソロをネズミが担当している可能性も? 僕の知っているネズミはかなり万能だからなあ。あ、Cメロきた。あ、曲終わった。怒涛です。

ラップ部分はキャラの特性を理解していたほうが入ってくるだろうし、フックがすごくイイという感じでもないので、アニメを観ていないと楽しめない曲かなあと感じましたが、どんなアニメなのかはとにかく気になりました!

 

PROFILE:夏目知幸


2009年にアルバム『はしけ』でCDデビューしたシャムキャッツのヴォーカル/ギター。自主制作のCD-R作品群やシングル2曲を発表後、2011年にミニ作『GUM』を、翌2012年にフル作『たからじま』、さらにライヴ会場限定発売のスタジオ・ライヴ音源なども含めてコンスタントにリリースを重ねる。2013年にはTurntable Filmsとのスプリット12インチ・シングル“シャムキャッツ×Turntable Films”を発表。ディアフーフマック・デマルコなど海外アーティストとの共演も精力的に行う。2015年には前作『AFTER HOURS』の〈その後〉を描いた最新ミニ・アルバム『TAKE CARE』をリリースしている。6月21日(日)の〈YATSUI FESTIVAL! 2015〉をはじめ、イヴェント出演も多く決定しているので、詳しくはこちらをチェック!

【参考動画】シャムキャッツの2015年のミニ・アルバム『TAKE CARE』収録曲“GIRL AT THE BUS STOP”

 

 

 【番外編! 今月のお題候補たち】
残念ながらお題盤にはならなかったものの、ぜひ聴いていただきたい楽曲をTOWERanime新宿の樋口による解説付きで紹介します!

 

西明日香,田中真奈美 TVアニメーション「ハロー!!きんいろモザイク」キャラクターCD Music Palette 1 忍*アリス flying DOG(2014)

TVアニメ「ハロー!!きんいろモザイク」のキャラソン集第1弾。同作では、日本のことが大好き!なイギリス人の女の子、アリス・カータレットが全編英詞で送る珍しいタイプのキャラソン“きみいろスノウフレーク”がオススメ。ビートルズやオアシスを彷彿とさせるメロディーと繊細なアレンジ、そこに重なるキュートすぎるヴォーカルの取り合わせがエレガントでエクセレント! キャラソンにはさまざまな国籍を持つキャラクターが歌う、そのお国柄を反映させた楽曲も多々存在しますが、やっぱり英詞というのは珍しいですね……!

 

 

橘田いずみ,花澤香菜どう考えても私は悪くない KADOKAWA メディアファクトリー(2013)

TVアニメ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」の主人公・黒木智子(CV:橘田いずみ)が歌うエンディング・テーマ“どう考えても私は悪くない”と、友人キャラクター・ゆうちゃん(CV:花澤香菜)が歌ういわゆるアンサー・ソング“私がモテないのは可愛くないからだよね?”――いずれも同様のトラックながらまったく異なるアレンジ&各々のキャラクター視点で歌われる歌詞で仕上げられた、対の構成となるシングル。キャラソン史上でもあまり例のない実験的な作品です。アッパーな“どう考えても私は悪くない”はクラムボンミトが編曲を担当していますが、一方の“私がモテないのは可愛くないからだよね?”はミトと牛尾憲輔agraph)から成るアニソンDJユニット=2 ANIMEny DJsがアレンジを手掛けており、前者とは対照的なファンタスティック仕立てになっています。

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