4 the SUMMER in you
[ 特集 ]夏フェスを聴こう、2015。
今年もこの季節がやってきました! 楽しい日々をもっと楽しくするために、スケジュール調整といっしょに耳の夏支度もそろそろ始めませんか~!?
Tjiros
烈風を起こすT字路sのエンターテイメント・ブルース!
「日本全国津々浦々でたくさんのライヴをやってきたけれど、結成5年を経て定番となってきたカヴァー曲も増えてきたので、一度ひとつの作品にまとめてみようと思って」(伊東妙子、ギター/ヴォーカル:以下同)。
伊東妙子と篠田智仁(ベース)の激情ブルース・デュオ、T字路s。彼らの日本語曲カヴァーといえば、烈風吹き荒ぶライヴの呼び物でもある。ということから、異貌のカヴァー・アルバム『Tの讃歌』は、T字路sのハイライトを並べてみせた〈ザッツ・エンターテインメント〉的な作品と呼ぶことも可能かと。それにしても、これほど痛快極まりないものになるとは。啖呵の歯切れの良さでこちらの耳を釘付けにしてしまう伊東が話を続ける。
「実際に取り組んでみて、大変なものに手を出してしまったと血の気が引きましたよ。オリジナルは出来上がった時点で曲の世界観も自然と出来上がっているけど、カヴァーの場合はその曲に込められた思いや世界観を解釈したうえで、T字路sらしさを出していかなきゃならない。それを12曲ですから。なかなかの難産でした」。
とはいえ、本作は〈らしさ〉のオンパレードだ。森進一の数倍ドスが効いた“襟裳岬”のやさぐれぶりはどうだろう。伊東の裸系の歌唱が冴え渡る越路吹雪の“愛の讃歌”はもっと壮絶。「全世界のシャンソン愛好家に〈全然わかってない!〉って怒られるだろうねと話していました。我々ならではの開き直りかと」と笑うが、この美しく混濁した世界はひたすら胸を衝く。ゲストの佐藤良成(ハンバート ハンバート)による郷愁を誘うフィドルをフィーチャーした浅川マキの“少年”やブルーハーツの“夕暮れ”も素晴らしく、優しさに満ちた叫びに心が締め上げられる。
「今回は好きな曲をたくさんカヴァーするので、ここは唸るように低く、とか歌い方にも変化をつけようと試みたんです。でも出来上がってみたら、我ながらあまり差を感じなかったですね。結局は、〈メーター振り切っちゃったわ〉的な、良くも悪くも全力投球な作品になっていて。〈自分不器用ですから〉といったところでしょうか」。
東映時代の高倉健的な男気や侠気を反映し、胸のすくような作品となった『Tの讃歌』。本作を引っ提げて、今夏は〈フジロック〉〈RISING SUN〉などに出演する彼ら。最後にその意気込みを。
「我々を知ってる人も知らない人も、聴くつもりの人もそうでない人にも、多くの人のお耳に届けられる貴重な機会。コンディション万全でズバッと振り抜きたいですね」。
ズバッと振り抜いた二人のカッコ良さったらない。思いっきりうっちゃられること間違いなしだ。