コラム

メジャー・レイザー、天才ディプロがDJスネークら豪華ゲストと縦横無尽にダンスフロアを暴れ回る〈数歩先に進んだ〉新作

メジャー・レイザー&ジャックU Pt.1

メジャー・レイザー、天才ディプロがDJスネークら豪華ゲストと縦横無尽にダンスフロアを暴れ回る〈数歩先に進んだ〉新作

さまざまなシーンを縦横無尽に駆け巡る天才ディプロが、またまたレイザー少佐と一緒に帰ってきた! 今度はどこのダンスフロアで暴れてやろうか……?

 ケイティ・ペリーの次はマドンナ? 女性の趣味はわかるような、わからないようなディプロだが、音楽に関してはわかりすぎるぐらいわかる。アウトプットの形式や呼称はさまざまであっても、オールド・スクールなエレクトロも含むヒップホップやダンスホール・レゲエを中心に、今風の言い回しよりもひと回り大きい意味でのベース・ミュージックを貪欲に追求する姿勢は、昨年10周年盤も登場した『Florida』(2004年)で登場してきて以来、軸の部分では変わるものではない。そんなディプロにとってのレゲエを追求する場がメジャー・レイザーというのは衆知の通りだとして、プロジェクトの様相は今回のニュー・アルバム『Peace Is The Mission』において若干の変貌を遂げているように思える。

MAJOR LAZER Peace Is The Mission Mad Decent/ワーナー(2015)

 そもそもスウィッチとのコンビで始まった頃のメジャー・レイザーは、独自性のあるリディムを用意しつつ本場ジャマイカのDJやシンガーを中心に起用する〈ミュータント・ダンスホール〉的な側面を強調していた。が、スウィッチ脱退を経ての2作目『Free The Universe』が出る頃には、その楽曲や流儀が本場でも十分に認められた成果を受けてか、レゲエに由来するダブステップなどの要素も柔軟に取り込むようになり、そこから『Peace Is The Mission』に至っては、初期の明快な本場レゲエへの憧れから数歩先に進んでいる。先行ヒットとして欧州でNo.1を獲得(UKでも3位)しまくっている“Lean On”は、ゆったりしたテンポと不思議な妖気を漂わせたムーの歌唱も相まって、かつてのM.I.A.を連想させもするナンバーだ。同曲はマッド・ディセント入りから絶好調のDJスネークとの共同プロデュースによるもの。そんな手合わせの妙に違わず、アルバムにも鮮やかなコラボが多彩に用意されている。

 ワイルド・ベルの歌う悠然とした冒頭曲から、過去のレイザー少佐との雰囲気の違いはいよいよ明確になるだろう。が、続く“Too Original”では、初作から馴染みのジョヴィ・ロックウェルとストックホルム出身のエリファントがホットに絡み、ディプロ流のビッグなダンスホール・チューンを直球で打ち込んでくる。ウォルシー・ファイアによるミックステープの頃から縁のあったクロニックスによる“Blaze Up The Fire”、こちらも先行カットされていた“Roll The Bass”あたりも、曲名そのまんまに期待を裏切らない、超キラーなフロア直送サウンドだと言える。かつてエイコンに見い出されたブリック&レイスの片割れ、ナイラ(近年ではショーン・ポールとのコラボでもお馴染み)がポップな魅力を放つアイランド系R&Bの“Light It Up”も快調。その一方で、ジャマイカの人気シンガーであるトーラス・ライリーエリー・ゴールディングにマッチングしたエモーショナルなデュエット“Powerful”や、トラヴィス・スコットプッシャT2チェインズの3MCに加えて大ヴェテランのマッド・コブラを招いた“Night Riders”からは、敬愛する本場アーティストの魅力を新たな切り口から引き出そうというディプロの意図も見えてくるように思う。本編ラストは、サントラ『The Hunger Games: Mockingjay Part 1』で披露していたアリアナ・グランデとの“All My Love”にトリニダード・トバゴのソカ大使ことマシェル・モンターノを加えた強烈なリミックス!

 このように無条件に楽しいクロスオーヴァーなサウンドを携えて、メジャー・レイザーはまたしても君臨する。やはりディプロこそが現行シーンの最重要プロデューサーにして最強のパーティー野郎なのは疑いない。

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