6人編成の新体制となって早2年。KIRINJIがこれからの季節を彩る素敵なサマー・シンフォニーを、シングルとコンピレーションでそれぞれ届けてくれました。Mikikiでは最新取材&コラムの2本立てで、生命力と機知に富んだKIRINJIの2015年夏モードに迫ります。(Mikiki編集部)

★コラム「KIRINJIが6人で編んだコンピ『SIXTH×SIX』を読み解く」はこちら
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新たなクルーによる〈進水式〉から早くも2年。そして、アルバム『11』から1年。KIRINJIが今年も……というより、いつになく夏らしい便りを届けてくれた。まずは自身が所属するレーベルであり、ジャズ、ボサノヴァイージー・リスニングなど幅広いカタログを所有しているレーベル、ヴァーヴの音源から〈夏〉をテーマにメンバー6人で編んだコンピレーション『KIRINJI presents SIXTH×SIX –SUMMER EDITION–』、続いてフィジカルとしては5年ぶりとなるシングル“真夏のサーガ”をリリース。あいにく欠席となったギターの弓木英梨乃を除く5人のメンバーに、ゆる~りと話を訊いてみました!
 

KIRINJIの最新アーティスト写真
左から田村玄一、楠均、弓木英梨乃、千ヶ崎学、コトリンゴ、堀込高樹

 

KIRINJIのみなさん、夏はお好きですか? 

――今回、メンバーが選曲した夏向けのコンピがあって、続いてのニュー・シングルも夏がテーマになった曲ということで、ここはひとつ〈夏はお好きですか?〉的な、普段あまり質問されないようなことからお訊きしようかと思うんですが(笑)。

堀込高樹「女性誌っぽいですね、そういう質問(笑)。でもまあ、夏はね、わりと好きですよ。好きなんだってことを最近思い出しました」 

――最近、ですか。

高樹「やっぱり、レコードを買い漁ったり楽器を弾き始めるようになると、どうしてもインドアになってしまうじゃないですか。大学生のころからはそういったものに夢中になってたから、夏ってあまりピンときてなかったんですけど、でもまあ、子どもとかできてからね、いっしょに虫を捕りに行ったりとか、川遊びに行ったりとかしてね、楽しいわけですよ。まあ、自分も子どものころはそうやって夏を満喫してたんで、ああ、夏って楽しかったよな、そうだよなっていうことをとくに最近思い出しますね」 

田村玄一「むかしは、夏を謳歌せんと、貪欲にあちこち出かけたりしてましたもんね。いまはどうやって体力の消耗を抑えて、健康に過ごすか……ってことをいちばんに考えますから(笑)。クルマのなかでヴェンチャーズとかビーチ・ボーイズとか聴いてると、やっぱイイなあって思ったりするんですけど、とくにレジャーに行ったりはしなくなったかな」 

高樹「でも、玄さん、ハワイとか好きですよね」 

田村「ハワイアンのバンドを手伝ってた時期もあったから、それの関係でよく行ってたりはしてたんですけど。でもまあ、ハワイの夏って日本の夏とは湿度も違ってて、暑いんだけどカラッとしててイイよね」

楠均
「とくに東京の夏は湿度が高いなあって思うので、聴く音楽も、湿度感を下げてくれるような、乾いた感じの、ドライでクールな感じのものを欲しますよね。コンピ(〈SIXTH×~〉)で選んだフレッド・アステアとかチャーリー・パーカーもそうだし、スタン・ゲッツのわりと静かめなアルバムとかは寝苦しい夜に良いですよ」

【参考音源】チャーリー・パーカー&ディジー・ガレスピーの52年作
『Bird And Diz』収録曲“An Oscar for Treadwell”


千ヶ崎学
「僕はあまり夏が得意じゃなくて……」 

高樹「いつもぜいぜい言ってる感じだもんね(笑)」 

千ヶ崎「(笑)。でも、嫌いじゃないし、それこそ僕も子どものころは山遊びに行ったり、夏を満喫してましたから。でも、海水浴は昔から苦手でしたね。暑いときに暑いところにいくのは苦手で。音楽だったら、ブラジルものの、わりと賑やかなものが聴きたくなりますね」 

コトリンゴ「私は……夏は好きですけどね、食欲がなくなってくるから、アイスばっかり食べてバテてるっていう(笑)。海は好きなんですけど、日本の海水浴場って怖くて。若者が怖そう(笑)」

高樹「たしかに、怖そうだよね(笑)」


生命力とスケール感に満ちた夏の歌
 

――さて、ニュー・シングルの“真夏のサーガ”ですが、いわゆる南国のリズムや上モノを乗せた類のサマー・ソングではなく、〈夏の音〉がする曲だなあと思いました。 

KIRINJI 真夏のサーガ Verve/ユニバーサル(2015)


 

※試聴はこちら 


高樹
「イントロは清涼感があるし、キラキラしていて、夏の光の感じがすると思うんですけど、後半になるにしたがって盛り上がっていって、飽和していくんですよね。それがこう、暑さっていうか、クーラーの部屋から表に出たときのような感じかなって(笑)。シングル曲ということで言えば、もっと早めに盛り上がる部分、サビを持ってきたほうが良いと思うんだけど、ABC形式の構成を繰り返すよりも、だんだん盛り上げてちょっとずつ景色を変えていって、いちばん最後にマックスが待ってるっていうほうが聴いてて盛り上がるし、この曲の魅力が伝わるんじゃないかな……っていうことをみんなに話して、セッションしながら作っていったんですよ。具体的にここは誰かをメインにフィーチャーしてみたいなことはしてないんだけど、曲が盛り上がっていくにしたがって自然とプレイヤーの感情も高まって、結果的に各楽器が有機的に絡まって。うん、そこは良かったなあって思いますね」

千ヶ崎「あとはこれ、シンプルな曲ではあるんですけど、シンプルなコード感のどこにベースを入れるかっていうのを最初からすごく吟味されてた状態だったんですよね、高樹さんにデモを聴かせてもらったときから。オシャレなコードを積んでいくっていう構造ではなくて、メロディーはシンプルなFなんだけど、ルートがFだったりAだったりっていう、場面場面でメロディーとの関係を吟味していて、それはびっくりしましたね」 

――結構、フィニッシュまでには時間がかかったんですか?

高樹「なんだかんだでかかってますね」 

千ヶ崎「ライヴ・リハからですもんね」 

高樹「そう、4月の〈ARABAKI ROCK FEST.15〉で初めてやったので、そのリハのときから練ってた感じですね。そのときはまだサビでドンと聴かせる感じだったんですけど、それをまあ、見直そうっていうことになって。そのあとも何回かライヴでやってた気もするんだけど、実際には5月の〈GREENROOM FESTIVAL '15〉の前にレコーディングしてるんですよね」

 【参考動画】KIRINJIの2014年作『11』収録曲“進水式”のMV
“真夏のサーガ”のシングルCDではボーナストラックとして、〈KIRINJI TOUR 2014〉から
11月15日の昭和女子大学人見記念講堂でのライヴ音源を“進水式”含めて4曲収録
 


――レコーディング作業はわりと神経質なものになったんじゃないかと想像するんですが、夏っぽい質感であるとか、微妙なニュアンスを出すにあたってとくに工夫された部分はあるんですか?

「ドラムの場合、夏っぽい音っていうのはよくわからないんですけど、まあ、今回はわりとむっちりした低音ではなく、トンッと抜けていく音というか、チューニングというよりは僕のドラムがそういう音になってきたっていうところが功を奏したかも知れないですね。それが夏らしさになってる……かも(笑)」 

高樹「どうかなあ(笑)。たぶん、ドラムで夏っぽさが出てるとすれば、後半で矢野(博康。〈7人目のKIRINJI〉と言っていいサポート・プレイヤー)さんが鳴らしてるロート・タムじゃないかな。あれ、ちょっとヴァン・ヘイレンを思わせる感じだし(笑)、雷がゴロゴロ鳴ってる感じというか、暑さを感じさせてますよ(笑)。あとはブラスも大きいんじゃないかな。千ヶ崎くんとコトリさんに協力してもらってアレンジしたんですけど、入れて良かった。夏感が出ましたね」 

――歌詞のなかにも〈閃いて落雷〉なんていう言葉が出てきますけど、この曲には自然のなかから聞こえてくるような響きとか揺らぎがあるというか、ちょっとしたビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』でもあるかなあと、そんな印象で。 

高樹「最初にも言いましたけど、子どもたちを連れて森や川で遊んだりとかしててね、たとえばヘビがカナブンを狙ってるの見たりすると、夏って生命力に満ち溢れてるんだなっていうのを実感するんですよ。だから、夏の歌を作るんだったら、そういうものを感じられるものにしたいなっていう、それはまあ、“夏の光”(2010年発表のアルバム『BUOYANCY』の先行シングル)のときからそういう気持ちだったんですけどね」

【参考動画】キリンジの2010年作『BUOYANCY』収録曲“夏の光”のMV


コトリンゴ
「1月ぐらいに、今年一年どういう活動をするかっていう話のなかで、フェスにいっぱい出たいねってみんなで言ってたんですけど、この曲はすごく野外フェスにピッタリの曲だなって思いました。なんか、シャーッ!感みたいな」 

高樹「シャーッて(笑)。でもまあ、ノスタルジックな感じというよりも、もうちょっとこう、いま眼前にある夏みたいな。やっぱり、フェスで演奏するっていうことは意識しましたね。野外で演奏するっていうことで、広がりがある音っていうことと、だんだん盛り上がっていく感じっていうの、そういうのが頭の隅にあったんでしょうね。ポップスっぽいっていうよりもトランシーな感じっていうかね」 

――音の広がりということで言えば、そこはキリンジからKIRINJIになってさらに得た強みですよね。カップリングのインスト“水郷”も含め、まさにそれが活きたシングルだと思います。

高樹「“真夏のサーガ”が自分のなかでイギリスっぽいメロディーのものだなって思ったから、そこから繋がってアイリッシュ的というか牧歌的な音楽とか良いかなあと思って作ったんですよね。ただ、それだけで終わると退屈だから、曲の真ん中にひと味加えて、景色が移り変わっていく感じを出して。川下りしてる感じのイメージとか、マイク・オールドフィールドみたいになるといいかなあとか、まあ、そういうことを考えながら作ってました。やっぱり、6、7人並んで、それぞれがアピールするようにっていうことで曲を作ったりアレンジをしてるから、当然広がりっていうのは出ますよね。以前は泰行が中心にいて、それを支えるバンドがあるって感じ……いまはまあ、僕が中心になってやってますけど、見え方としては6人、ないし矢野さんを加えた7人で見せるっていうことでやってるので、スケール感は単純に人数が多い分だけっていうところはありますよね」

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