インタビュー

GRACE MAHYA、初の単独名義によるハッピーなラヴソング揃えた全編スタンダード歌唱集『Love Songs For You』を語る

GRACE MAHYA、初の単独名義によるハッピーなラヴソング揃えた全編スタンダード歌唱集『Love Songs For You』を語る

編集一切なし! スポンテイニアスな演奏を高音質ハイエンド・サウンドで

 “ハートフルでスムージーな弾き語り”を標榜し、デビューしたのが10年前。しかし初めからその声はダークかつブルージーで、ピアノはクラシカルな高踏感を漂わせていた。ソウルやゴスペルを思わす深みある発声なのに、常に伴奏がフュージョン系奏者だったため“スムーズ歌手”をイメージされたのである。

 「クラシック以外に聴かなかったからジャズを知らず、T-SQUAREさんの出す音がジャズなんだって…。彼らの伴奏はとても贅沢な体験でしたが、私の思うジャズってもっとブルースやソウルな感じなの。黒人になろうというのでなく日本のインターナショナル・スクールからパリへ留学し、ドイツの国立音大を卒業した女の子の出す音。大震災がありとても5周年をお祝いする気になれなかった時、安ヵ川大樹さんが作品だけでも残そうと宮川純くんも含めた小編成ジャズ・バンドで録音してくれ、そこでふと自由になれたんです」

 初めて自分で選曲し、編曲し、アコースティックで自由度の高い伴奏を得た。そこで芯のある粘り強いその声にスポットが当てられ、それから5年。マーヤにとって、また大きなステッピング・ストーンとなろう1作を完成させる。前年のセッション作が妖艶なスタンダードばかりを取り上げたことで評判を呼んだが、今回は初の単独名義による全編スタンダード歌唱集。

GRACE MAHYA Love Songs For You KING/キング(2016)

 「どうもいつもダークな方向へ偏りがちだけど、今回はハッピーな内容のラヴ・ソング集にしようと決めたんです。そこでどんな自分が引き出されるか興味もあったし、それをライヴ感覚の、気心知れる仲間との即興的録音でやってみたかった。というのもプロデューサーでありドラマーの大坂昌彦さんの提案で、前作を上回るDSD11.2MHz録音に挑戦しようとなったの。収録後、一切編集が利かないんです。普通なら緊張する場面だけど、それが全員のナチュラル・ハイを呼び、スポンテイニアスな演奏が生み出され、楽しさを前面にしたレコーディングの場を出現させていました」

 むしろ、何かハプニングでも起きないかと期待するように、大胆かつ自由な空気が飛び交う。こんなアッパーな気分に浸れる《あなたと夜と音楽と》を聴いたことがないし、ベースとデュオでやった《ジャスト・スクィーズ・ミー》のフェイク・シングは極上のグルーヴを生む。《ハレルヤ、アイ・ラヴ・ヒム・ソー》はいかにも彼女らしいゴスペル・シングで、思わずため息の出そうなピアノ・ソロや、活気あるシャフリング・ドラムがそれへ追い討ちをかける。酒場での語り《ワン・フォー・マイ・ベイビー》では、相変わらずブルージーな声で本格的な泥酔客にも変身した。むろん、10周年を祝える大作になったのは言うまでもない。 

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