アントニオ・カルロス・ジョビンなどボサノヴァ黎明期からピアニスト/ソングライターとして活躍する重鎮ジョアン・ドナート初のスタンダード集は、ボサノヴァ、ジャズのスタンダード曲をピアノ・トリオを基に管楽器を加えた編制で録音。
スタン・ケントンに憧れ、ジャズやラテン、ブラジルのミュージシャン達と数多くの共演してきたドナートの音楽性は、ジャズは勿論のことボサノヴァやサンバのリズムを注入した独創的な音楽スタイルを確立し「奇才」とも「天才」とも称された。ピアニストとしてもソングライターとしても素晴らしく、ヴォーカリストとしても温かみ溢れる歌声が魅力的なドナート。本作は様々な魅力を持つドナートのインストゥルメンタルのスタンダード集ということで歌声を聴く事はできないが、いつでもどこでもどなたにでもソっと寄り添う音楽が詰まったオススメの1枚。《イパネマの娘》《WAVE》などのジョビン作品や、《スマイル》《いそしぎ》を収録。生誕80年の節目の新録作品。
そして、ピアニスト矢崎愛の最新作は彼へのオマージュ・アルバム。96年にブラジル・サンパウロに移住し現地の音楽学校卒業後にジャズ/コンテンポラリー・クラシックのピアニストとして活動。初リーダー作『Solos e Duos』はオリジナル曲を中心に、敬愛するジョアン・ドナートの未発表曲《Nagoya》なども収録した素晴らしいジャズ・ボッサ作品となった。
本作ではジョアン・ドナート自身の他、フィロ・マシャードやタチアナ・パーハなどブラジルの音楽シーンの代表的アーティスト達も参加。邦人ブラジリアン・ピアニストとして現地でも高く評価される彼女の大傑作といえる。
追記だが、自身の活動の他にもヴィブラフォン奏者アンドレ・ジュアレスのジャズ・カルテット、ダンス・カンパニー「タンゴ&パッション」など、多くのグループに参加。歌手の中平マリコ作品の楽曲アレンジ、プロデュースやピアノ教室「サビア会」主宰など幅広い活動も見逃せない。