名盤『Wallflower』がコンプリートな形で再登場です! 

 ピアニストとしても高い評価を受けるダイアナ・クラールが、演奏もアレンジも手掛けずにヴォーカリストとしての自身に集中して取り組んだ今年2月の最新アルバム『Wallflower』。そのアプローチを提案したのはプロデューサーのデヴィッド・フォスターだったそうだが、彼女が属するヴァーヴの会長としてではなく、もちろんミュージシャンとしてのサジェスチョンだったのは言うまでもない。同作にはデヴィッドがピアノを弾くナンバーも多く収められ、往年のポップ/ロック・ナンバーを取り上げたり、ポール・マッカートニーからの未発表曲提供というトピックもあったりして、故郷カナダでもUSでも大きなヒットを記録したのだった(関係ないけど、ポールの89年作『Flowers In The Dirt』では、ダイアナの夫君エルヴィス・コステロとデヴィッドが居並ぶ奇縁もあった……ことにいま気付いた)。

DIANA KRALL Wallflower: The Complete Sessions Verve/ユニバーサル(2015)

  今回〈The Complete Sessions〉としてリパッケージされた同作には、新たに8曲が追加。そのなかでも気になるのはジョニ・ミッチェルニール・ヤングというカナダの先達のナンバーだ。最近のデヴィッドが故国にこだわった作品を多く作っているのには理由があるのか……?

 

 

 

『We Love Disney』に抜擢されたヴァーヴの新星! ブレない歌声で次代のジャズ・シーンを席巻するよ!

 豪勢なディズニー・トリビュート盤『We Love Disney』がビッグネームのひしめく強力な内容になるなかで、ボーナス・トラックながらも“Bein' Green”をパワフルな歌唱で披露してくれているのが、ここで紹介するブレナ・ウィテカー。アメリカはカンサスシティに生まれた彼女は11歳の頃にシンガー・デビューを果たしていたという筋金入りのジャズ・ガールで、その後はブロードウェイで学ぶためにNYへ移住し、そこからミズーリに戻り、その後LAで活動していたところを御大デヴィッド・フォスターに見初められたという現代のシンデレラ(?)でもあります。そんなブレナが憧れてきたのはペギー・リーエタ・ジェイムズといったレジェンダリーな歌い手たち。確かにオールドタイミーな演奏の世界にも入り込んでいける歌の支配力の強さと芳醇なコクのある柔軟なヴォーカリゼーションには、偉人への憧れと経験の豊富さを窺わせる部分が見え隠れするようにも思えます。

BRENNA WHITAKER Brenna Whitaker Verve(2015)

  で、まだまだヴェールの向こうに隠されている彼女の世界をいよいよ全開にしてきそうなのが、今回のファースト・アルバム『Brenna Wittaker』であります。デヴィッドの目論みではマイケル・ブーブレに続くジャズ界のスターとなるのは必至!ということですが……その全貌が明らかにされるのはもうすぐです!

 

 

 

名作映画のラヴソングをテーマにした新作は、もちろん盟友デヴィッドのプロデュース!

いわゆるクラシカル・クロスオーヴァーの領域において、日本でも熱い支持を得ているイタリアのテノール歌手、アンドレア・ボチェッリ。彼とデヴィッド・フォスターの縁は、セリーヌ・ディオンとのコラボ“The Prayer”(99年)を通じて深まり、クロスオーヴァー路線の際にはデヴィッドがプロデュースを担当するという関係を長年かけて育んできた。このコンビで取り組む作品には毎回わかりやすいチャレンジが用意されていて、例えばラテンをテーマにした一昨年のヒット作『Passione』では、ジェニファー・ロペスネリー・ファータドをデュエット相手に起用し、エディット・ピアフとの疑似共演も実現させるなど、このヴェテラン歌手の持ち味を親しみやすく届けるための工夫がなされていたものだ。

ANDREA BOCELLI Cinema Sugar/Verve/ユニバーサル(2015)

  そして今回登場の『Cinema』はそのまま映画音楽を主題にしたクロスオーヴァー作品で、「ティファニーで朝食を」「ゴッドファーザー」「グラディエイター」などの名作からラヴソングを選曲。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の〈デボラのテーマ〉にはアリアナ・グランデ、「エビータ」の“Don't Cry For Me Argentina”にはニコール・シャージンガー(よく考えると、デヴィッドが仕掛けたエデンズ・クラッシュ出身だ!)を招待。声楽に馴染みのない人もチェックしてみるべき一枚だ。

 

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