ポスト・ミニマルと呼ばれて久しく時が経ち、アダムスの音もただミニマルをなぞった音だけではなくなった。現代色を強くしながらも聴き難さを生み出さないのは、近⇔現代の適度な音の使い分けと、下敷きたるミニマルの引き込み力を上手く混ぜ込んだ結果だろう。それにバッハのオラトリオから着想を得たからこその敬虔さが滲み出る。そこに〈猛毒〉ピーター・セラーズだ。「ニクソン・イン・チャイナ」や「ドクター・アトミック」を生み出した手腕は今も健在。マグダラのマリアとマルタに焦点を当て、初演時賛否両論を巻き起こしただけの事はある、強烈な内容に仕上げている。