ゴシックといってもさまざまで……THE MORTALに通じる闇を抱えた作品たち

PLASTICZOOMS 『CHARM』 felicity(2009)

ルックスも含め、ゴシック~ポジティヴ・パンク由来の〈黒の美学〉を継承する日本の若手代表。バウハウスの曲名を名乗るLillies and Remainsなど、2010年代直前にはオリジナル・ニューウェイヴの影響を受けた新世代が続々と登場したが、なかでも本作はもっとも黒く塗り潰された一枚。ウルテリアのリミックスも◎。 *土田

 

デヴィッド・リンチ 『Good Day Today / I Know』 Sunday Best(2011)

言わずと知れた映画監督のCDデビュー作。ここで注目したいのは以降の作風にも通じる奇怪なダウンテンポ“I Know”のほうで、トリップ・ホップ風のスモーキーな仄暗さは、THE MORTALのミディアム群が持つ空気感と通じるのでは? なお、ジャケットは4AD作品で知られるヴォーン・オリヴァーが担当。 *土田

 

SAVAGES 『Silence Yourself』 Matador(2013)

70年代のポスト・パンク・サウンドを受け継いだUK出身の女性4人組バンド。重苦しいほどの緊張感に貫かれたギター・サウンドが真正面から斬り付けてくる。スージー・スーそっくりのヴォーカルも存在感を放っていて、リスナーを闇に引きずり込むようなハイテンションの演奏は圧巻だ。 *村尾

 

sukekiyo 『IMMORTALIS』 FIREWALL DIV.(2014)

進化し続ける重鎮バンドのフロントマンが始動したバンド形態のソロ・プロジェクトという点ではTHE MORTALと同様。だが、初期ポスト・パンクの如きロウな音像と欧州的な退廃を纏うTHE MORTALに対し、sukekiyoはどこかポスト・ロック的。詞が内包する〈闇〉も日本的な陰惨さがより濃厚かと。 *土田

 

BAT NOUVEAU 『Metamorphoses』 Bat Nouveau/Hands And Moment(2014)

THE MORTALと同じ匂いの……つまり、性急なギター・リフで扇動するポジティヴ・パンクからメランコリックなサイケ・ロックまで、オールド・スクールなゴシック感を志向する豪州発のバンド。どうやらバウハウスも一目置いているらしいけど、音を聴くまでもなく、好き者はまずジャケ買い必至でしょ。 *土田

 

VIET CONG 『Viet Cong』 Jagjaguwar(2015)

解散したノイズ・ロック・バンド、ウーマンのメンバーが結成したバンド。ノイジーなギターとパワフルなドラムが生み出す混沌としたサウンドは、ポスト・パンク~ゴシック・ロックを独自に消化したもの。デビュー前にはバウハウスをカヴァーしていたそうだが、彼ら独自のアート・センスが随所で光る。 *村尾

 

AUTHOR & PUNISHER 『Melk En Honing』 Housecore(2015)

フィリップ・アンセルモのプロデュースで、彼のレーベルより届けられた一人インダストリアル・ユニットの最新作。地の底から轟くノイズとドゥーミーなウワモノが立ち上げる音世界はとにかくダウナー。時々宗教音楽のような旋律も覗かせ、その耳触りはBPMを異様に落としたゴシック・ロックとも。 *土田