昨年、配信とアナログでリリースされたシングル“Forever”が大きな話題となり、東京発の新世代バンドのなかでネクスト・ブレイク候補の筆頭に躍り出たYkiki Beat。平均年齢22歳の5人組である彼らは、フォスター・ザ・ピープルやパッション・ピットが引き合いに出されるメジャーなポップ感覚と新旧インディー・ロックの先鋭性を現代的にミックスしている。
「“Forever”は初めてメンバー全員で録音した曲なんですよ。以前はパソコンの画面に向かってアレンジを詰めていたんですけど、みんなで作ったことで、一気に広がりが出て、ライヴでもいままで以上に大きな手応えがあったんです」(Nobuki Akiyama)。
「以前はAkiyamaが曲を書いて、アレンジも指示していたんです。それが今回の制作では、全員が録音のプロセスに能動的に参加したことで、曲の雰囲気も変わりましたし、ライヴも変わりましたね」(Kohei Kamoto)。
大学の音楽サークルに所属していた5人が結成から3年で辿り着いたアルバム『When the World is Wide』は、CDデビュー作にして、ウィーザーやブロック・パーティを手掛けるトム・マクフォールがミックスとマスタリングを担当。その未知なる可能性がアップリフティングに躍動する名曲“Forever”も、これまで以上にバンドが向かう先を明るく照らし出している。
「今回のアルバムを作っている時は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやジョイ・ディヴィジョン、ジーザス&メリー・チェインを参考に聴いていたんですけど、アレンジによって、その時代っぽさやその時々の興味が曲に出るのは自然なことだと思いますし、僕らもそういう部分を削ろうとは思っていないんです。ただ、その時代の雰囲気だけを落とし込んだ賞味期限が短い音楽を作るつもりはないので、いつの時代、どんなアレンジであっても、その魅力が際立つような、タイムレスなメロディーにこだわっていますね」(Akiyama)。
オルタナティヴ・ミュージックの流れを汲むカッティング・エッジな表現と融合させた、スケールの大きいポップ感覚と普遍的なメロディー。それらに加え、メロディーのフロウを実にスムースなものにするネイティヴに近い発音の英語詞もYkiki Beatの大きな武器だ。
「高校生の頃からバンドをやっていて、英語で歌うことが日本人のバンドにとってチャレンジであることを感じていたし、ほとんどのバンドがその課題をクリアしていないなと思ったんです。僕はその後もバンドを続けようと思っていたので、その頃から英語の発音を重点的に勉強したんですけど、イギリスのバンドをよく聴いていた影響で、発音はイギリス英語が土台になってますね」(Akiyama)。
米国フィラデルフィアの映像集団、アウト・オブ・タウン・フィルムズがライヴを撮影するために来日するなど、作品リリース前の段階から海外でも反響を巻き起こしてきたYkiki Beat。グローバルな意識があたりまえになっている彼らは、海外進出もあたりまえのこととして捉えているところが実に頼もしい。
「フェニックスやテイム・インパラは理想としているバンドの一つですね。フェニックスはフランス出身でありながら、イギリスやアメリカ、日本でも評価されていますけど、僕らが生まれ育った日本、なかでも東京はいろんな人種がいて、何でも手に入るグローバルな街だと思うんです。そこで生活しながら作った音楽はグローバルなものになり得ると思うし、今回のアルバムは、そういうインターナショナルな感覚で作品を作りました。ただ、僕らは今後、NYを拠点に活動していこうと思っているので、今後はまた意識も変わっていくんじゃないかと思いますね」(Akiyama)。
Ykiki Beat
Nobuki Akiyama(ヴォーカル/ギター)、Kohei Kamoto(ギター)、Yotaro Kachi(ベース)、Mizuki Sekiguchi(ドラムス)、Koki Nozue(シンセサイザー)から成る5人組。2012年に東京で結成。2013年に初のEPとなる『Tired of Dreams』を配信リリースし、口コミで話題を集める。翌2014年は、2月にサマー・キャンプの来日公演にオープニング・アクトとして出演。9月には7インチ・シングル“Forever”を発表し、そのリリック・ビデオが多くのメディアでピックアップされる。その後、12月にはドラムスの前座も務めるなど活動範囲を着実に広げるなか、このたび、ファースト・アルバム『When the World is Wide』(Pヴァイン)をリリース。