――これまでに録音してきたもので、特にリズムに関して意欲的なアプローチを心がけた曲があれば教えてください。
「“Alo Alo”や “Doralice”、あとはリオーネル・ルエケとのデュオで”I Can’t Help It”を歌うときなどは、特にリズムに注意しています。リオーネルは私のリズム感やタイム・キーピングの感覚を後押ししてくれるので、一緒に歌うのはいつだってワクワクします」
――あなたの歌は、ダイナミズムを抑えて、狭いレンジのなかで繊細に声をコントロールすることで、音楽に豊かな情感をもたらしているような瞬間があるように思います。そのスタイルを見つける転機となった出来事があれば教えてください。
「どんなときも、自分の声に対しては、正直で偽りのない状態であろうとする直感に従ってきました。これまでの道は、もっともピュアで素朴な声を見つけ、その声のパワーと美しさを実現し、そして自分ならできると信じていることにチャレンジし続ける、というものでした。私の声はほかのアーティストのように大きくはないかもしれませんが、精いっぱい鳴り響かせているつもりです。8年生(中学2年)のときの英語の先生が、卒業アルバムに書いてくれた言葉がいまでも胸に残っています。〈君はなんて静かなパワー(の持ち主)なんだ〉って。若い人に敬意を示し、ほかの人のような歌い方(演奏)をしたり、ほかの人の真似をしなくとも、(彼らは)そのままで良くて、価値があるということに気付かせてくれるなんて、本当に素晴らしいことだと思います」
――今回の企画盤には、さまざまなアーティストとのコラボレーション曲が収録されていますよね。
「ここに選ばれたすべての作品に、素敵な思い出があります。これまで幸運にもご一緒できたアーティストの方々やプロジェクトの数々を思い起こさせてくれますし、今後のキャリアもますます広げていけるよう、刺激になっています。マルチなアーティストとしては、いろんなプロジェクトで共演できるのはいつでも嬉しいことですが、私にとってもっとも大事なのは、誠実であると認められる内容にすることです。依頼を受けた歌については愛情を注げるものにしたいと思っていますし、テクニカルで感情的、そしてスピリチュアルな側面で個人的に繋がれる部分を見つけられるよう、自分でも努力をしています」
――特に印象的だった曲/コラボレーションがあったら教えてください。
「マーク・ジュリアナの“This One Is For You”で歌えたのは、特別な意味を持っていますね。マークは私の夫ですし、〈この曲を君に〉と名付けたのは、私たちの息子であるマーレイのために書かれたものだからなんです」