【PEOPLE TREE】
エレクトリック・ライト・オーケストラ
ロックンロールをシンフォニックに表現してみよう、きっとそこには誰もまだ見たことのない魔法のような世界が広がっているはずだから――希望を胸に、エレクトリック・ライト・オーケストラは飛び立った。あれから45年。ジェフ・リンの描く煌びやかな光は、いまなお私たちを虜にし続ける。しばしの休息を挿み、大いなるコスモスをめざして離陸のサインが点灯しはじめた。夢の時間はまだ終わらない……

★Pt.1 コラム〈ELO/ジェフ・リンの足跡〉はこちら
★Pt.3 ディスクガイド〈ELOを知るための10枚〉はこちら

 


TWILIGHT, I ONLY MEAN TO STAY
革新的なのか、保守的なのか。ELOサウンドの構成要素を分析してみよう!

 ELOの最大の特徴と言えば、ロックにストリングスを融合させたシンフォニックな音世界。グループ内に弦楽隊を置くという、かつてないアイデアを発案したのはロイ・ウッドだ。ムーディ・ブルースピンク・フロイドらによる〈ロックmeetsオーケストラ〉系の作品と一線を画していたのは、外部の楽団とコラボするのではなく、ひとつのバンドとしてビートルズ“I Am The Walrus”のような音を作りたいという野心から生まれたユニークな方向性だった。やがてジェフ・リンが舵取りを行うようになると、フィリー・ソウル的なアプローチなどストリングス・パートをよりポップに活用し、バンドの独自性はいっそう強まっていく。コーラスを大々的にフィーチャーしたロック・シンフォニーって点では、『Pet Sounds』期のビーチ・ボーイズもELOのルーツとしてみなすことができよう。

 もうひとつELOサウンドを紐解くうえで重要なポイントとなるのが、古き良きポップス/ロックンロールの伝承者としての側面。チャック・ベリージェリー・リー・ルイスフィル・スペクターエヴァリー・ブラザーズといった米国の偉大な先達へのオマージュを真っ直ぐに表明する姿勢は、そのプロダクションの根幹を支える大切な要素である。トレンドに乗ってディスコ・サウンドやシンセ・ポップに接近している時ですら、50~60年代のヒーローたちに抱く憧憬は不変。ジェフ・リンの書くメロディーが、どれも高い普遍性と強度を持ち得るのは当然のことだろう。そんな男がもっとも敬愛するアーティストこそ、トラヴェリング・ウィルベリーズのメンバーでもあったロイ・オービソン。ELOのニュー・アルバム『Alone In The Universe』でもロイになりきって歌うロッカ・バラード“I'm Leaving You”が登場するし、変わらぬ愛の深さには胸が熱くなるほどだ。 *桑原吏朗