巨匠ジョン・ウィリアムズは、協奏曲の〈名人〉なのかも。

YO-YO MA, JOHN WILLIAMS, NEW YORK PHILHARMONIC 『ギャザリング・オブ・フレンズ』 Sony Classical/ソニー(2022)

 クラシック界には、作曲家と指揮者の両方で活躍した〈レジェンド〉も多いが、今年90歳となるジョン・ウィリアムズはその知名度において別格。誰もが認めるスクリーン・ミュージックの巨匠であり、近年はウィーン・フィルとベルリン・フィルという最高峰の名門を、各々の殿堂で指揮して自作曲を演奏するコンサートを大成功させてきた。この度、そんな彼の映画音楽以外の作品(コンサートホールのための純音楽)を充実させる、ファン待望の録音盤2タイトルが登場。それぞれが現代屈指のスター演奏家とのコラボ・アルバムなのも素晴らしい! 先ず(発売日順に)1枚目はヨーヨー・マとの『ギャザリング・オブ・フレンズ』。本盤の目玉は、1994年7月タングルウッドのセイジ・オザワ・ホールのこけらおとしでボストン交響楽団によって初演された“チェロ協奏曲”の再録音。多様性とコントラストを持つマの天才的なチェロを想定して書かれ、切れ目なく演奏される本作を、幾度もの再演で修正と調整を重ねた新ヴァージョンで楽しめる……特に情感豊かなテーマに彩られた第4楽章「ソング」の輝かしい“歌”が余韻を残すはず。他にも、バーンスタインのある〈伝説〉にインスパイアされて生誕100周年に書かれた“ハイウッドの幽霊”をニューヨーク・フィルで聴けるのもポイント。

ANNE-SOPHIE MUTTER, JOHN WILLIAMS, THE BOSTON SYMPHONY ORCHESTRA 『ムター・プレイズ・ジョン・ウィリアムズ』 Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2022)

 2枚目は前述のウィーン・フィルとの演奏会にも招き、ドイツ・グラモフォンには映画音楽集の名盤も既に残している〈女王〉との『ムター・プレイズ・ジョン・ウィリアムズ』。こちらの目玉は、ジャズ的なセンスにも優れた彼女を想定した上で「ロマンチックな無調をアメリカ風に表現する様式」(※ライナーより)を追究して書かれた“ヴァイオリン協奏曲 第2番”の世界初録音。もちろん新編曲された“映画テーマ選集”も聴きどころ。特にコール・ポーター作曲の“So In Love”のオーケストラ版を思わせる壮大な“『ロング・グッドバイ』のテーマ”が個人的にはツボかも。