OPUS OF THE YEAR 2015
【特集】2015年の100枚+
ゆく年くる年。ゆく音くる音。ゆきゆきて音楽――2015年もいい作品は山ほどあった!という毎度の感慨と共に素敵な新年を迎えたいものです。でも、まだ安心し……ないでください、ここで紹介する作品を聴かずして、新しい年はやって来ないですよ!
★Pt.1 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 1⇒25
★Pt.2 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 26⇒50
★Pt.3 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 51⇒75
★Pt.4 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 76⇒100
TRENDY TALK
改めて、2015年ってどうだった?

出嶌「毎年恒例というか……話すことが年々なくなっていくような気がするね。結論を最初に言っておくと……トレンドみたいなのがもうないというか、この10年ぐらい言われてた〈細分化〉以上に〈断絶〉みたいなものを感じることが多かったかな」
山西「それが結論ですか?」
北野「トレンドがないのがトレンドっていう?」
出嶌「まあ、それでも大まかな傾向はあるんじゃないの? あるのかね?っていうことです。それで今年も100枚選んでみました、というページです」
土田「今回もそれぞれ100枚をピックアップして、それを集計した感じですよね?」
出嶌「そうだね。で、みんなに挙げてもらって、ざっとリストを見たらいつも以上にわりと近い感じの印象を受けたんだけど、まず個々がどう選んだかってとこだね」
土田「1年分のバックナンバーを見直しつつ選んでたんですけど、まずは今年のキーワードらしきものにハマりそうなものと、話題作をまず最初に挙げていって、そこに作品単位で良かったと思うものを追加していって、という感じです」
山西「空気読んで選んだ部分もありつつ、世間的に〈これは聴かなきゃマズイよね〉みたいな作品が、今年はいつもより少ないんじゃないかと思って」
北野「個人的に、邦楽は特に〈これ!〉っていうものがいままでより少なかったと思います」
山西「だから、リストのかぶってるものが多い印象だったってのは、ちょっと意外ですね」
出嶌「たぶん、昔よりも票が集中しやすくなった感じなんじゃない? 話題作とそうでないものの差が異常になっていってる気がする。ここ数年このページで言ってるけど、昔のTVは人気番組の視聴率が60%あったとか、そういう感覚」
山西「確かに、いろんな年間ベストとか見ても、ケンドリック・ラマーとテイム・インパラが軒並み上位に入ってる感じでした。日本のメディアでも同じような感じになるんですかね」
出嶌「Rolling Stoneの1位って何?」
土田「アデルでした」
出嶌「何も言えねえって感じだね。申し訳ございませんでした、みたいな。よくわかんないけど」
北野「ただ、そのRolling StoneとかNMEとかいろいろ見てたら、上位にフリート・フォクシーズのドラマーのファーザー・ジョン・ミスティがあって、そこは日本とは温度差があるというか」
山西「日本ではさほど話題にならなかったですね。こういう反応を受けてここから話題になるのかも」
出嶌「そうやって温度差があるぐらいが安心するわ。じゃあ、個人的にはどういう感じの2015年だった?」
北野「僕は……去年からの流れの感じなんですけど、80年代のディスコ/ブギーに影響を受けたような動きが、タキシードを筆頭にさらに増えた年というイメージがありまして……クール・ミリオンとか。そういうのを踏まえて、邦楽ではそういう音を採り入れる例が本当に多くなっていて。こういう言い方が正しいかわかんないんですけど、日本のロック・バンド方面の人にも〈ブラック・ミュージック〉が顧みられるようになったっていうのが、2015年の印象のひとつとしてありました」
出嶌「邦楽というよりは、インディー・ポップ寄りの日本のバンドの人たちという印象だよね。J-Pop全般で言うなら、いまさらナニ言ってんの?的な感じだから」
土田「ディスコ、ブギーに限ったことではなくて、〈ブラック・ミュージック〉で言うなら近年のジャズ的なものであったりとか、あとはヒップホップ~ネオ・ソウル的なものも含めてそうですね。海外の動きとして、ディアンジェロやロバート・グラスパーの大きいリリースもあったので、取材の時などに話題に上ることも多かったように思いますし。例えばceroは、2013年末のシングルからそういう話はしていて、その方向性の集大成が『Obscure Ride』だったりするので、その流れでいうなら2015年のアイコンではあると思うんですけど。ただ、そういう流れはもう普通になったというか、いまは頻繁にトレンドとして話題にのぼることはない感じですね」
出嶌「みんな同じように形容されすぎたり、何でも〈シティー・ポップっぽい〉とかになったりして、受け手も本人たちもアレになったところはあるかもね。昔の〈俺を渋谷系と呼ぶな!〉とか、ネオ・ソウル系の人の〈俺はネオ・ソウルじゃない!〉を思い出す感じだな」
山西「長生きはするもんですね」
土田「まあ、〈シティー・ポップ〉っていう謳い文句で出てくるアーティストさんも前ほどは見なくなりましたし、ちょうどそのceroなどを紹介した〈都市インディー〉の特集をやった頃が爛熟期だったような気がしますね。で、その流れの大トリみたいな位置付けの作品が、この間リリースされた星野源さんのアルバムなんじゃないかな、と」
出嶌「オザケンが紅白に出るような感じだよね」
土田「そうなんですよね。私もなにぶん『LIFE』世代だったりするので……〈都市インディー〉ものは懐かしさ込みでの楽しさっていうのがあったんですよね。そのなかでも、ceroもそうですけど、入江陽さんとかツチヤニボンドみたいな新しいジャズを個性的に採り入れている人たちが、自分的にはハマりました」
出嶌「あんまり話すと年齢もバレるからアレだね。他の流れでいうとどんな感じだったのかしら?」
山西「90年代後半から2000年代頭にかけてのポップ・パンクやメロコア/エモコアがキテるって、前に土田さんと話してて。それは邦楽の話だったんですけど、海外でも同じような流れがあるのかな~と感じてました。ファット・レックの25周年のイヴェントがあったり、自分の世代も関係あると思うんですけど、横山健さんの新作を聴いて〈改めてハイスタから聴き直したくなっちゃった!〉みたいに言っている人が周りにいたり。あと、ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーのアルバムにグッド・シャーロットの兄弟が参加してたりとか、確かオール・タイム・ロウもかな!? 1D以降のエモいパワー・ポップみたいな流れもあって、2014年末のマクバステッドっていうトピックもありつつ、またポップ・パンクの時代がくるのかな、って思いますね。例えばゼブラヘッドを聴いて、やっていることは前と変わっていなくても、妙にイマっぽく感じるというか。で、新年はシンプル・プランやブリンク182のアルバムが登場予定……みたいな」
土田「ゼブラヘッドはMAN WITH A MISSIONとも共作してるし、パンクがまたくるかな?って思ってたんですけど、結局そこまではいかなかった(笑)。ただ、横山健さんのリリースは大きかったですね。あとPIZZA OF DEATHから出たWANIMAも凄く話題なので、一部のアーティスト単位では注目度は上がってたように思うんですけど。ただ何となく思ってるのは、WANIMAや04 Limited Sazabysももともとはメロディック・パンクって言われてた人たちなんですけど、それがもうひと回り大きい意味でのロック・リスナー層にも届いたっていう意味で、界隈では注目のニューカマーだったのではないかと」
山西「メタルコアはちょっと難解なところがあるというか、どんどんテクニカルな方向に進んでる気がしてて。こういうタイミングにみんなでワイワイ歌えるもの、それこそヴァンプスとかああいう楽器を持ったボーイズ・バンドの影響で、メジャー感のあるパンク・バンドがボーンとブレイクしてくれたら嬉しいです。昔のグリーンデイみたいに」
土田「あと、まったく違う話ですけど、私が100枚に選んだなかではヒップホップとR&Bがここ数年でいちばん多かったんですね」
山西「私もヒップホップは多かった!」
土田「ケンドリックとか、ジョーイ・バッドアスとかキッド・インク……日本だとOMSBさんもそうですね」
山西「あとはエイサップ・ロッキーが出て、ドレイクもそうですし、ドクター・ドレーがあってゲームがあって、フェティ・ワップもあって。メジャーなモノしか追ってないですけど、1年通じてUSヒップホップのビッグ・タイトルが続いた。リュダクリスのアルバムとか凄い好きでしたし」
北野「僕は日本語ラップのほうが聴いた作品数は多かったですけど、実際USのヒップホップって盛り上がってる感はあったんですか?」
出嶌「デカいのが多かったというのはあるよね。最初の話に戻るけど、デカいものが異常にデカく見える雰囲気は強まってるから。とはいえ例年以上にアルバム作品としてカッコ良い佇まいのものが多かった気はするし、ジョーイとかフェティ・ワップとか待たれてた人がちゃんと出してくれて嬉しかった。ニューカマーってことだとトラヴィス・スコットとかもそうだよね。それで言うと、個々が注目してたニューカマーって誰になる?」
山西「私はメーガン・トレイナーですかね。シングルの印象で前の年っぽい感じもするんですけど、来日もあったし、年末にスヌーピーの映画も日本公開されて印象が強かったです」
北野「個人的にはORESAMAのポジティヴっていうか衒いなくポップスをやってる感じが凄い良いなって思ってて。I Don't Like Mondays.もそうなんですけど、そういう人たちのやることがスタンダードになればいいなって思っています」
土田「私はぼくのりりっくのぼうよみです。所属レーベルのCONNECTONEも含めての話になるんですけど、ラインナップを見ると、まずは作品の良さで勝負しようっていう気概のようなものを感じていて。Awesome City Clubとsympathy、SANAGABAN.、あとはRHYMESTERも所属してるんですけど、レーベルとしても推したいですし、ぼくりりさんはシンプルに良いメロディー、良い曲で〈J-Pop〉に斬り込んでいこうとしているように思うし、宇多田ヒカルや米津玄師、RADWIMPSなんかが引き合いに出されてるように、そういう可能性のあるアーティストだなって」
山西「いいタイミングで表紙にできて良かったですよね。出嶌さんの最優秀新人賞は?」
出嶌「よく聴いてたのはウォンテッド休止中のネイサン・サイクスかな。“Kiss Me Quick”がヤバくて……アルバムを出してないからbounce的にはアレだけど。チャーリー・プースもアルバムは年明けだし。誰だろうね」
北野「新人というわけじゃないですけど、Theタイマンチーズなど定期的にリリースがあったParty Gun Paul絡みの作品はどれもおもしろかったです」
出嶌「日本語ラップはいろいろいい感じの動きが多かったよね。作品にどう跳ね返ってくるのかまだわかんないけど、〈UMB〉からTVの『フリースタイル・ダンジョン』までMCバトルが盛り上がったのは大きいことだね。リスナー層も昔より幅が広がってるし、2WINみたいにリリースもしてくれる人が増えると嬉しいね」
北野「OTGや電波少女も良かったし、いろんなタイプの人が増えましたよね。あと、ChakiさんがBENIさんのトラックを手掛けてたり、『CONCRETE GREEN 13』に参加してたり、YENTOWNは来年さらにきそうかなっていう感じです」
出嶌「新顔だけじゃなくtha BOSSのようなヴェテランの作品もあったし、AK-69もいつもながらに良かったし、鎖GROUPとかDREAM TEAMとかレーベルごとの動きもあるし、新旧いろいろ特集とかしたかったけど今年はムリだった。新年はYENTOWNとKANDYTOWNに期待で」
土田「どれがいちばん良かったですか?」
出嶌「作品性の高いアルバムだと、表紙もやったOMSBと、あと、灰色デ・ロッシの『空 -kara-』はめちゃくちゃハマってるね。自分にとっての今年っぽいノリはその2枚でした」
山西「そんなふうにダラダラ話してたら、ページがもう残りわずかになってきたので、そろそろまとめてください」
土田「2016年がどうなるのかとか、具体的な像ってあまり思い浮かばないですよね。2015年からの延長でいくのかなっていう感じはします」
山西「去年があったからこそ今年があるみたいな、途切れてはないっていうだけで」
土田「どのトピックやジャンルでも、いろんな流れがずっと続いてきての現在、みたいなところで」
出嶌「確かに、呼び名とかアングルは変わってもAOR~シティー・ポップの話とか、ディスコが~とか、80年代が、90年代が、とかいう話はずっとしてるからね。そのなかで個々がどういうものに注目していきたい感じ?」
土田「さっきの話の続きになるんですけど、ヒップホップとかR&Bとか、いまさら楽しいなって思ってきているところが個人的にはあるので、もっとちゃんと聴いていきたいです、っていう小学生的な締めですかね(笑)。あと、楽しみなアルバムは入江陽さんです」
山西「オミーが良いなって思って、R・シティも良いなって思ったんですよ。エイコンみたいな感じの音はずっとあったと思うんですけどね。でも、オミーやR・シティが好評で、その流れのなかでオミーと同じマネジメントのサマンサJが、いよいよ2016年にアルバムを出してくれたら、より流れが変わってくるのかな。レゲトン周りの音の感じも全部合わさって、レゲエ・フュージョンやトロピカル・ポップみたいな音がもっと盛り上がってほしいなと思ってます」
北野「僕は日本でいうと男性のダンス&ヴォーカル・グループですね。Da-iCEの新作がちょうど出るんですけど、EXILE TRIBE周りとはまた違う雰囲気でいろんな男性グループが、XOXやX4などいろいろ出てきてるので注目しています」
山西「私もそのあたりをページでやってほしいです。出嶌さんは?」
出嶌「こういう時にドレーとディアンジェロがいると便利だった」
土田「毎回〈今年もディアンジェロとドレーが出ませんでした〉みたいな話で逃げてきてたじゃないですか。その2枚とも出た今年っていうのは何なんだろうっていうのはありますね」
出嶌「そうねえ。あと、本当に待ってたジョデシィも出たから、2015年は幸せな一年だったね。なんで、新年も好きなものが聴ければいいし、リスナーの皆さんがトレンド云々じゃなく自分の好きな作品に出会えるのがいちばんだと思います!」