©Fredrik Bengtsson

MAD PUNKS LAUGH!!
ヴァイアグラ・ボーイズと発展形を提示した2020年代ポスト・パンク

 ポスト・パンク――70年代後半、パンクの後に発生したこの潮流は、ファンクやディスコ、ダブなどの影響を受けながら、パンク的でありつつ、より先鋭的な音楽を生み出していった。以降も、直球の初期衝動と尖ったアイデアとを柔軟に(というか歪に)共存させ、〈ポスト・パンク〉と呼ばれたバンドは後を絶たない。2020年前後にもファット・ホワイト・ファミリーら〈ウィンドミル〉勢、ダブリン発のフォンテインズDC、米デトロイトのプロトマーターらが注目を集め、現在においてもインディー・ロックのモードとして、色濃くあり続けている。

 2025年は、ポスト・パンクを志向していた近年のバンドが、さらなる発展を遂げた一年だったと言えるだろう。ダブリン出身のマーダー・キャピタル、南ロンドンのシェイムは、共にジョン・コングルトンを招き、音楽性を広げた新作を完成。また、ブライトンのスクイッドは3作目で室内楽的なアレンジを取り入れ、優美なアンサンブルを奏でた。エレクトロニクスを導入した緻密な音作りの下で、ポスト・ハードコアからダンス・ミュージックまでを往来するヤハウェ・ネイルガンやモデル・アクトレス、アヴァンさとポップさが人懐っこく同居するウォーター・フロム・ユア・アイズらUS勢の傑作も忘れ難い。

 だが、そのなかでも特に鮮烈な印象を残したのは、ヴァイアグラ・ボーイズが4月に発表した『viagr aboys』だ。多くのメディアで年間ベストにも選出されている同作の日本盤が、2026年1月27日に東京・渋谷Spotify O-EASTで予定されている初来日公演を記念し、1月9日にリリースされる。

VIAGRA BOYS 『viagr aboys』 Shrimptech/Year0001/Silent Trade(2025)

 2015年にスウェーデンのストックホルムで結成されたヴァイアグラ・ボーイズは、スポーツにまつわる単語を列挙し、マチズモを戯画化したディスコ・パンク“Sports”と、同曲収録のファースト・アルバム『Street Worms』(2018年)が話題に。その後は、アミル&ザ・スニッファーズのエイミー・テイラーを迎えてのジョン・プライン“In Spite Of Ourselves”のカヴァーなどダウナーなムードを強めた2021年の『Welfare Jazz』、電子音楽やダブの要素を精緻に折り重ねた2022年の『Cave World』と、一作ごとに異なるモードを打ち出してきた。

 そして、この4作目『viagr aboys』でもまた、バンドは新境地を開拓している。ペレ・グンナーフェルトが共同プロデュースを務めている点はこれまでの作品と同様だが、プロダクション重視だった前作と比較して、今回はラフでワイルドな演奏を前面に打ち出した印象だ。ソリッドなギターとビートが伴走する“Man Made Of Meat”、焦燥感たっぷりの“You N33d Me”、シンセ・リフが中毒性の高い“Dirty Boyz”など、パンキッシュでダンサブルな楽曲は、聴き手のフィジカルな快感に訴えかけてくる。その一方、サックスやハンドクラップ、コーラスが強烈なサイケデリック・ジャムを醸し出す“Best In Show Pt. IV”、マーシー・プレイグラウンドの“Sex & Candy”を下敷きにした“Pyramid Of Health”、ピアノ・バラードの“River King”などでは、内省的な表情も見せている。

 なお、今回の日本盤は、ボーナス・トラックとして4曲を追加。注目すべきは、英ラフ・トレード・ショップ限定LPの特典CDに入っていた“Therapy”の別ヴァージョン“Therapy II”が収録されていることだろう。ポゴ・ダンス必至のバンガーとしてファンのなかで話題になった曲だが、現在サブスクなどでも未配信。にもかかわらず、最近のライヴではときおり披露されているので、来日公演前に聴いておくのがオススメだ。