2024年の流れから生まれたオーセンティックなR&B作品の一部を紹介!

KEHLANI 『CRASH』 Atlantic(2024)

最初のミックステープ『Cloud 19』での登場からちょうど10年という節目に届けた4作目。〈Coolie Dance〉使いのビッグ・チューン“After Hours”を筆頭とする00年代モードな振る舞いを中心に、オークやキャンパー、ディクソンらと組んだクールな歌唱の芯は変わらず。この後のミックステープ『While We Wait 2』ではフローとも共演していた。

 

MARSHA AMBROSIUS 『CASABLANCO』 Aftermath/Interscope(2024)

元フロエトリーの名シンガーがアフターマスと再契約して放った6年ぶりのソロ作。ドクター・ドレーの全面采配による重厚なサウンドはソウル古典や90年代ヒップホップを素材に編み上げた壮麗な仕上がりで、凛とした歌声も相まってスロウバックなノリを格調の高さに転換している。時代の流れとは無縁の芸術性を伴って響く堂々の佳作。

 

LALAH HATHAWAY 『Vantablack』 SoNo(2024)

グラミーの〈最優秀R&Bアルバム〉部門にノミネートされてもいる7年ぶりのアルバム。コモン&ラプソディ客演の冒頭曲から意識の高いソウルフルな個性を響かせ、MCライトやフォンテ、ウィローらゲスト陣とも持ち前の包容力でしっくり絡んでいる。キャットパックでのアルバムも印象深かったフィル・ボードローが大半の楽曲を共同プロデュース。

 

JAZ KARIS 『Safe Flight』 MNRK(2024)

トム・ミッシュらとの共演で知られたブリット・スクール出身のシンガーによる初のフル・アルバム。足回りに地元ロンドンっぽさも体現しながらキャンパーやトーン・スティスらと絡んだLAのモードにも穏やかに馴染み、従来のイメージ以上にオーセンティックなR&B作品に仕上がっていた。ジューン・フリーダムやマヘリアとのコラボも好相性。

 

JACQUEES 『Baby Making』 Cash Money/Republic(2024)

いまやキャッシュ・マネーを代表する男となったアトランタの自称〈King Of R&B〉による4枚目のオリジナル作。10代でデビューしてきた頃から00年代マナーへの憧れを無邪気に表現してきた人だけに、インティメイトなスロウ主体の今作でもトレイ・ソングズら先達の作法も血肉化されている印象だ。確立されたジャクイース節が楽しめる一枚。

 

LUCKY DAYE 『Algorithm』 Keep Cool/RCA(2024)

アナログしか一般流通しないのは……とも思いつつ、スタイリッシュに現行R&Bの前線を走る男の2年ぶり3作目。引き続きDマイルがほぼ全曲を手掛け、ブルーノ・マーズが共作したトラディショナル路線の“That’s You”からファンク、ロック的な作法まで楽曲は多彩。こちらもグラミーの〈最優秀R&Bアルバム〉部門にノミネートされている。

 

TUXEDO 『Tuxedo IV』 Funk On Sight(2024)

メイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンの人気コンビによる4作目。ディスコ/ブギーの拡散と定着によって受け手の感覚も多様になったのかもしれないが(?)、リロイ・バージェスやバトルキャットらを交えて80年代のコンテンポラリー感覚や広い意味でのタイムレスなファンクを導入したスムースな振る舞いは、言うまでもなく偉大な先人たちへの華やかなオマージュに溢れている。