インタビュー

知的で官能的なヴォーカリスト、リズ・ライトの魅力がラリー・クラインによって引き出された新作『Freedom & Surrender』

(C)Jesse Kitt

 

知的で官能的なヴォーカリストの新作はラリー・クラインがプロデュース!

LIZZ WRIGHT Freedom & Surrender Concord/ユニバーサル(2015)

 『フリーダム&サレンダー』は、リズ・ライトの最新作にして最高傑作。前作から5年の間に成熟したリズの魅力が、名匠ラリー・クラインの手によって十二分に引き出されている。ラリーはジョニ・ミッチェルマデリン・ペルーメロディ・ガルドーを手掛けてきたことで知られるが、なぜこれらの才媛の魅力を最大限引き出せるのだろう。リズの意見を聞いてみた。

 「ラリーはこれまで色々なタイプのアーティストを手掛けているけど、各自の個性を前面に打ち出すことを第一義と考え、彼自身は陰に隠れている。にもかかわらず、どのアルバムからも彼の美的センスが伝わってくる。今回私は彼と一緒にアルバムを作って、このことを身をもって感じた。初めてラリーと打ち合わせを兼ねたランチをした時、“あなたは気の強い女性がお好きでしょ。だったら私と一緒に仕事をしましょう”とからかったんだけど(笑)、それはさておき、彼は人間に対する関心が強く、誰でも受け入れる。そして現場では、すべての人に気配りし、それぞれに対して最良の接し方をする。もちろん、ラリーは音楽のことを深く理解しているプロデューサーだけど、とにかく度量が大きく、人とのコミュニケーションが上手。この点がいちばんの才能だと思う」

 リズの主たる音楽的バックグラウンドは、ゴスペルだ。だからこそ彼女の歌は敬虔な祈りのようであり、包容力にあふれ、清廉さを漂わせている。が、それでいて最新作におけるリズの歌は、これまでになく官能的でもあり、この点にもっとも“成熟”を感じる。

 「成長するにしたがって、聖と俗を相反するものではなく、シームレスなものとして受け入れることができるようになった。だから現在の私の歌を、そのように感じてもらえるのでしょう。そもそも私の音楽は折衷主義に基づいたもので、この点に対して批判的な意見もある。でも宗教音楽の中には、祈りや瞑想のための静かな音楽もあれば、踊ったり全身を使って神を讃える激しい音楽もある。だから私の音楽がさまざまな幅広い音楽の折衷であるのは、自然なことだと思う」

 休日は自然に囲まれた環境の中で過ごし、朝目覚めた時はアルヴォ・ペルトを聴く。つまり静謐なクラシックを。一方、ブランディを聴きながら散歩することもある。リズの中に音楽のジャンルの壁は存在しない。彼女はカエターノ・ヴェローゾのファンでもある。

 「カエターノのことは、12年くらい前から好き。そして私がもっとも好きな歌手の一人は、彼のプロデュースでデビューしたヴィルジニア・ホドリゲス。ええ、いつか機会があれば、カエターノやミルトン・ナシメントの曲を録音したいと思ってます」

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