Page 2 / 3 1ページ目から読む

Roi Anthony
圧倒的な王道の黒さ

 アンソニー3兄弟から成るヴォーカル・グループ、レジットのバリトン・リードとして日本のR&Bリスナーからも熱烈な支持を集めるロイ・アンソニー。そんなルイジアナきっての熱血ソウル男が、グループの復活盤『New Beginning』(2013年)を経て、5年ぶりのソロ作『Gonna Do Me』を発表した。2008年の初作、2010年のセカンドに続き、フル・アルバムとしては3作目。リリースは今回も自身のモーヒッツからで、聴く前から傑作と確信できるのは、過去作で証明していたブレのなさゆえだ。

ROI ANTHONY Gonna Do Me Mo-Hitz(2015)

 JBの声を引用し、盟友Yラックがラップで斬り込むトラッピーなミッド“Shine”を筆頭に、先行発表していたオージェイズ風スムース・ステッパーの表題曲やデレゲーションの名曲を意識させるメロウ・チューン“Wifey Type”など、オールド・スクール要素の塗し具合は今回も絶妙。雄々しくもエレガントな深い色気を湛えたヴォーカルも絶好調で、ゲストに常連の地元仲間たちを迎えて、流行に惑わされず俺流ソウルを貫きながら現行シーンに対峙する姿勢はR&Bシンガーの鑑と言いたくなる。以前別タイトルで発表していたレジットとジーントの客演によるNOLAバウンス×ゴーゴーなアップ“Can't Hate On Me”や、1年前にリサの曲として助演していたデニース・ウィリアムズ曲のリメイク“Cause You Love Me”といった既発音源も含めて余裕綽々な歌を聴かせる充実作。いま〈ブラック・ミュージックとは何か?〉と問われれば、タイリースの『Black Rose』と共にこのアルバムを差し出したい。 *林 剛