mature R&B cells
【特集】R&Bの品格
ブームやトレンドの趨勢はともかく、注目すべき作品はどんどんリリース中! この季節がよく似合う、成熟したアーバン・ミュージックの真髄を、あなたに
ということで……bounce2015年12月号の続きです。というか前号の時点で紹介予定だったものが延期してしまったため、ページごと今号に延期した格好になっています。ただ、そのおかげで、間に登場した大粒の作品たちも併載することができました。自他共に認めるキングからキャリア20年の歌姫、シーンの看板を張るエースたち、それぞれの傑作(ホントに!)が揃ったこの冬のシーンを楽しみましょう! *bounce編集部
★Pt.1 アヴァントのコラムとディスクガイド(1)はこちら
★Pt.2 ブラクストンズのコラムとディスクガイド(2)はこちら
★Pt.3 ベイビーフェイスのコラムとディスクガイド(3)はこちら
★Pt.4 エリック・ベリンジャーのコラムはこちら
★Pt.5 アンジー・ストーンのコラムはこちら
★Pt.6 クリス・ブラウンのコラムはこちら
★Pt.7 R・ケリーのコラムはこちら
★Pt.8 モニカのコラムはこちら
★Pt.10 オーガスト・アルシナのコラムとディスクガイド(5)はこちら
Jeremih
真夜中の甘い歌心
現代的なR&Bシンガーの王道を考えるとして、TGT世代に続く三羽烏がトレイ・ソングズ、オーガスト・アルシナ、そしてクリス・ブラウンだというエントリーに異論はないだろう。彼らはいずれも基盤となるシーンで別格の人気を誇りつつクロスオーヴァーも経験し、ラッパーとのコラボ需要が異常に高いという共通点もある。で、その条件下で一人加えて四天王を選ぶなら、このジェレマイを推すリスナーは多いのではないか。R&Bチャート首位を12週独走した“Birthday Sex”(2007年)で華々しくデビューを飾った彼。“Down On Me”がヒットした2作目『All About You』(2010年)以来アルバムは延期を重ねていたものの、その間も客演中心に露出を続け、2014年には“Don't Tell 'Em”を大ヒットさせている。で、今回サプライズで出た『Late Nights: The Album』は、2012年の同名ミックステープの時点から予定されていたサード・アルバムだ。

すでに公開済みの曲もありつつ、スムースで柔和な色男を気取るセンシュアルな音世界は一貫。タイ・ダラー・サインにジェネイ・アイコというゲストの顔ぶれはR・ケリーの新作ともかぶるが、その『The Buffet』にジェレマイ自身も招かれたことを思えば、R師匠との世界観の密な繋がりも感じられるだろう。ロマンティックな夜更けをエロティックに彩るのに絶好の逸品だ。 *出嶌孝次
Roi Anthony
圧倒的な王道の黒さ

アンソニー3兄弟から成るヴォーカル・グループ、レジットのバリトン・リードとして日本のR&Bリスナーからも熱烈な支持を集めるロイ・アンソニー。そんなルイジアナきっての熱血ソウル男が、グループの復活盤『New Beginning』(2013年)を経て、5年ぶりのソロ作『Gonna Do Me』を発表した。2008年の初作、2010年のセカンドに続き、フル・アルバムとしては3作目。リリースは今回も自身のモーヒッツからで、聴く前から傑作と確信できるのは、過去作で証明していたブレのなさゆえだ。

JBの声を引用し、盟友Yラックがラップで斬り込むトラッピーなミッド“Shine”を筆頭に、先行発表していたオージェイズ風スムース・ステッパーの表題曲やデレゲーションの名曲を意識させるメロウ・チューン“Wifey Type”など、オールド・スクール要素の塗し具合は今回も絶妙。雄々しくもエレガントな深い色気を湛えたヴォーカルも絶好調で、ゲストに常連の地元仲間たちを迎えて、流行に惑わされず俺流ソウルを貫きながら現行シーンに対峙する姿勢はR&Bシンガーの鑑と言いたくなる。以前別タイトルで発表していたレジットとジーントの客演によるNOLAバウンス×ゴーゴーなアップ“Can't Hate On Me”や、1年前にリサの曲として助演していたデニース・ウィリアムズ曲のリメイク“Cause You Love Me”といった既発音源も含めて余裕綽々な歌を聴かせる充実作。いま〈ブラック・ミュージックとは何か?〉と問われれば、タイリースの『Black Rose』と共にこのアルバムを差し出したい。 *林 剛
ディスクガイド:現行R&Bのスタイリッシュなスタンダード(4)

初期ウィークエンドやドレイクに通じる陶酔ラップ・シングとアンビエントな意匠を充満させた、ルイヴィルの新人による逸品。デビューの足がかりになった“Don't”はマライア・キャリー“Shake It Off”を引用したものだが、ネタに頼るどころかドロドロに溶かして甘く耽美な自家製リキュールにしたかのよう。他にもある90~2000年代R&Bの引用はどれも酩酊感たっぷりの聴き心地だ。今様R&Bの美学を象徴する一枚。 *池谷

ジョン・ハートあたりと同じく、いわゆる〈R&Bay〉系と括れるベイエリアのシンガーが、ミックステープやEPの配信音源を再編集した初のフィジカル作。単にシンギン・ラップとも呼び難いフリースタイル調の歌い口は路上感と甘味を兼備していて、ここに参加のエリック・ベリンジャーやティーフライと持ち味を近くするものだ。妖しいスナップにソウルを揺らす様子は最近のクリス・ブラウンやタイ・ダラーにも当然通じる。 *出嶌

EDM界隈の客演などダンス・サイドの活躍も華々しいが、R&B復権の担い手という矜持はどのアルバムでもしっかりと示してきたニーヨ。ファンの体験談を元にしたストーリー集というコンセプトのこの6作目では、アンビエントなサウンドにも優美なメロディーとスウィートな歌声を乗せて、彼ならではの美意識で統一している。お約束のマイケル・ジャクソンへのリスペクトは“Take You There”などに明らか。 *池谷

シカゴの社会問題を扱ったスパイク・リー新作映画のサントラ。マリ・ミュージックらの参加もあるが、真実味を持つのはシカゴ出身者による楽曲だろう。R・ケリーは同郷の女性MCティンクを迎えて、ベースラインが躍動するハウス調のメッセージ・ソング“Put The Gun Down”を語るような落ち着いたトーンで奉唱。ファルセットで歌うサム・デュー、教会風のバラードを熱唱するジェニファー・ハドソンにも胸打たれる。 *林