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KING OF DIGGIN'が繋ぐ和モノ・グルーヴの世界!

 〈現場〉と繋がる底知れないヴァイナルの鉱脈を、指先を真ッ黒に汚しながらディグし続けて30年。海を越え、世代を越えてその名が知られる〈KING OF DIGGIN'〉ことMUROが、昨年秋の『Super Animated Breaks & SFX~30 Years and still counting~』に続いて〈和モノ〉で構成したミックスCD『DIGGIN' JAPANESE POPS MIXED BY MURO』を届けた。ここでミックスされているのは、由紀さおり“こころもち 気まぐれ”(1976年)からラテン・フレイヴァーのミディアム・チューンへとリアレンジされた佐野元春“ヤングブラッズ”の2011年ヴァージョンまでと年代だけ見ると幅広いが、中心は〈70年代後半から80年代中期あたり〉の、J-Popと呼ばれるずっと以前のジャパニーズ・ポップス。

MURO DIGGIN' JAPANESE POPS MIXED BY MURO ユニバーサル(2016)

 「同時代のアメリカものを掘ってたらここに辿り着いたというか、笠井紀美子さんが入口だったかな。その時代の音楽、特に今回は誰でも知ってるようなメジャーな方ばかりではないので、僕自身もリアルタイムで聴いていなかったアーティストも多いんですよ」。

 60年代後期のグループ・サウンズ以降、フォークニュー・ロックニューミュージックといった新しいムーヴメントが生まれていくなかで、邦楽ポップスの伴奏はオーケストラからバンドへと主流が変わっていった。その移り変わりのなかでソウル、ファンク、フュージョン、AORなど海外のトレンドを吸収しながらセンスを磨いていったスタジオ・ミュージシャンたちによって豊潤なグルーヴを得たのが、〈その時代〉のジャパニーズ・ポップス。大橋純子小林泉美りりィ桑名晴子尾崎亜美水越けいこ原久美子ほか〈DIGGIN' JAPANESE POPS〉に収められたシンガーのバックでも、土屋昌巳を擁した美乃家セントラル・ステイション坂本龍一伊藤銀次も名を連ねるバイ・バイ・セッション・バンドティン・パン・アレーなどなど、錚々たるミュージシャンが腕を振るっている。

 「レコードを手に入れたときに〈これ、土屋昌巳さんが書いてる!〉とかね、そういう驚きはいっぱいありました。もちろん、自分のレコード箱から抜いて選んだ曲なので、実際に現場でもかけてるし、そのなかでも最近は、笠井紀美子さんの“二人ぼっちのHEAVEN”や亀渕友香さんの“コーヒールンバ”みたいなレゲエっぽいものをよくかけますね。コテコテのレゲエじゃなくてね、リズムの解釈が独特というか、消化しきってないところがむしろ良くって」。

 〈その時代〉の和モノがゲンバで頻繁にかかるようになったのは、90年代半ば頃から(95年にオープンした渋谷・Organ bar.が当初、拡散の中心だったかと)。あれからときが経ってシーンもひとまわり以上しているが、昨今のリイシュー事情を見ると、その盛り上がりは新しい世代にも広がり、さらに大きくなっている印象を受ける。

 「海外のDJとかも、情報をすごく欲しがってますね。90年代は、海外だと日本語ラップにしても聴いてもらうのが大変だったんですけど、いまは逆に欲してる感じです。デイム・ファンクがやってるブギーのイヴェントに出させてもらったときも、角松敏生さんや吉田美奈子さんの曲で盛り上がったりとか、どこかの国のDJが和モノのエディットを出してたりとか、ここ数年、注目されてる範囲が広がってる感じがしますよ」。

 他社音源で続編も期待したい〈DIGGIN' JAPANESE POPS〉だが、今回のリリース元でもまだまだ繋ぎたい音源はいっぱいあるようで。

 「エキスプレス・レーベルアリスオフコース寺尾聰など在籍)の音源とか。あと、今回収録する予定だった野口五郎さんは、五郎さんだけでミックスしてみたいですね」。

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