自身のルーツを丹念に掘り起こしながら、独自性の探究と〈お遊び〉を繰り返した70年代。触れれば彼とわかる〈ナイアガラ・サウンド〉を完成させ、ジャパニーズ・ポップスの金字塔を打ち立てた80年代。沈黙の続いた90年代、2000年代……そして2013年冬。〈十二月の旅人〉が北へと還ったあの日から2年以上の時を経て、永遠の別れを告げたはずの彼から便りが届いた。32年ぶりの〈ニュー・アルバム〉を契機に、その旅路を振り返る
★Pt.1 コラム〈大滝詠一の足跡〉はこちら
★Pt.3 ディスクガイド〈耳で聴いたピープル・トゥリー〉、コラム〈オマージュから見る大滝詠一の残したイメージ〉〈作家としても眩いスポットを浴びた〈ロンバケ〉以降の大滝詠一〉はこちら
★Pt.4 新作『DEBUT AGAIN』のコラムはこちら
DISCOGRAPHIC Eiichi Ohtaki
大滝詠一を知るための10枚
記念すべきソロ第1弾。はっぴいえんどのメンバーが全員参加しているが、アカペラで始まり、ソウル・テイストな“指切り”やオールディーズ風味の“恋の汽車ポッポ第二部”など、音楽性はより幅広い印象。ラストの〈お遊び〉も含め、どこを切り取っても大滝印の大傑作。 *栗本
自身が設立したナイアガラ・レーベルからの初ソロ作。前作でトライしたソウルやファンクのエッセンスが強調され、独自のポップセンスと見事にマッチ。ニューオーリンズ風“福生ストラット(パートII)”やラテン・テイスト“恋はメレンゲ”など躍動感に満ちたナンバーが満載。 *栗本
才能ある3人が楽曲を持ち寄った企画色の強い作品だが、山下達郎と伊藤銀次のソロ活動への前哨戦となったことでも重要。大滝作品は3曲のみだが、布谷文夫をヴォーカルに迎えた“ナイアガラ音頭”は強烈なインパクトで、後のノヴェルティー・ソング路線の発火点に。 *栗本
大滝がDJを務めていたラジオの番組名を冠したソロ第3弾。実際にナレーションやジングルを織り交ぜて、楽しい構成になっている。沢田研二への提供曲“あの娘に御用心”やオールドタイミーな“ニコニコ笑って”といった秀曲もあり、単なる企画モノの範疇を超えた名作。 *栗本
CMソングのみを集めた珍しいアルバム。1曲数十秒の楽曲も多く含まれているが、そこに注がれた音楽的な養分は濃厚。有名な〈サイダー〉のシリーズに代表されるように、その後の楽曲制作のプロトタイプともいえるサウンドを多数聴けるのが貴重。続編もリリースされた。 *栗本
ジュリー・ロンドン『Calendar Girl』をモチーフにした企画モノ的趣向だが、“ブルー・ヴァレンタイン・デイ”“真夏の昼の夢”といったメロディー・タイプの曲やスペクター風“青空のように”など〈ロンバケ〉への布石も。70年代ナイアガラの最高傑作と呼べる出来映え。 *久保田
和製リゾート・サウンドの完成形であり、日本のポップス史における金字塔。松本隆の詞世界、フィル・スペクターに影響を受けたナイアガラ・サウンド、大滝のクールな歌唱法など、それまでの研究が結実して名実ともに代表作となった。“君は天然色”もシングル・ヒット。 *栗本
6年ぶりとなったトライアングル企画は、ブレイク前の佐野元春と杉真理を起用。3人で歌った“A面で恋をして”が大ヒットし、彼らをスターダムにのし上げるきっかけとなった。大滝曲も“オリーブの午后”や“白い港”といった名曲が収められており、ソロ作同様に人気が高い。 *栗本
〈ロンバケ〉で完成させたナイアガラ・サウンドの続編的な内容で、生前最後のオリジナル・アルバムとなった。ここでも松本隆によるストーリー性の高い歌詞が重要な役割を担っており、“夏のペーパーバック”や“1969年のドラッグレース”といった名曲が評価されている。 *栗本
劇的に音楽的志向を変化させた70年代から辿るオールタイム・ベスト。シリア・ポールに託した“The Very Thought Of You”や、『EACH TIME』以降の数少ない新録曲だった“幸せな結末”“恋するふたり”など、現行カタログでは入手困難な重要音源もここで逢える。 *久保田
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ALBUM
多羅尾伴内楽団 Vol.1(1977)
多羅尾伴内楽団 Vol.2(1978)
DEBUT(1978)
LET'S ONDO AGAIN(1978)
NIAGARA CM SPECIAL Vol.2(1982)
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