久方ぶりの〈人生一度きり〉になります、ドラムスのMonnaです。
筆を執った今日という日は英国としてはなかなかに珍しい麗らかな、春。日本はちょうど満開の桜と美酒を片手に宴を催す方達の笑顔で溢れている頃でしょう。
ライヴ、フェスティヴァルを活動の主軸に置く我々にとって、どうしても帰国する季節の優先順位は夏が先のため、春の帰国というのをここ何年も経験できていないのが悔やまれます。
ああ、お花見いいですね。
否!
それはのちに必ずや実現するとして、今年の夏〈FUJI ROCK FESTIVAL〉への出演が決まったのですから、何を言っておるのだ自分は、です。2013年以来2度目の出演ということで、我々の気持ちはとても高揚しているわけです。〈フジロック〉20周年という記念すべき節目に!
この素晴らしいフェスティヴァルを多くの方々と共に共有できることを楽しみにしているわけですが、あまり羽目を外しすぎませぬよう。友人と2004年に遊びに行った際は、興奮しすぎて各人がテキーラをショット7杯という知能指数0の妄挙にでてしまい泥酔。夜中の3時頃に寒さで目覚めてみると隣は、川。うっかり寝返りでも打とうものなら今頃苗場の木々の養分にでもなっていたかもしれませんね、ははは。苗場の、フジの神様、自分を生かしてくれてありがとう。恩返しは演奏で。
さて、前回のYukiの回がパリのライヴ前で終わっているので、そこから始めさせてもらいます。
記憶にも新しいパリでのテロ事件(いきなり重いですね)、その当日に同じエリアでライヴを経験しているという、海馬が引きずり上げてきた前回の陰惨な記憶に若干気分も重かったのですが、ツアー・マネージャーのドクター・キコ、BO NINGENとサヴェージズのメンバー、そして彼女たちのクルーという素晴らしいチームのお陰か、とても前向きでいられました。むしろそんなことがあったから進まねばいけないわけですしね、平和的に。
とりわけサヴェージズのツアー・マネジャー、ロビンの気配りに我々はどれだけ助けられたか。正直これまでの経験上、サポート・アクトというのはツアーに付随する〈こぶ〉程度に扱われることもしばしば。そんななか、彼女は常に気を配ってくれていて、不備不満のないように配慮してくれるし、時にはさりげないジョークでチーム全体を和ませてくれます。
そこで思惑、我々はステージ上にのみ存在するわけではなく、舞台裏や楽屋、会場間の移動中、宿などもツアーの一部であり、その環境の良さも悪さも掬い上げ、吸収し、放出するというサイクルで動いています。呼吸するように。粗悪なものを偏食していると体調にも精神衛生的にも良くないように、素晴らしい環境があってこそ良い演奏はできるというもの。
つまりロビンの配慮によって我々もモチヴェーションを保つことができ、彼女たちと共にお互いに干渉し合うことで大きく温かなうねりのあるツアーを作り上げられたと思います。
よって、激しい素粒子の交換が起こり、ライヴのヴェクトルは天空へとアセンション。サヴェージズの最終曲“Fuckers”では共に演奏もでき、最高の一夜でした。
今回のサヴェージズとのツアー、2月18日から3月17日の1か月間に全20公演。上はストックホルムから下はミラノまで、UK、ヨーロッパを文字通り縦横無尽に駆け巡ります。そうなるとやはり身体と心は少しずつ蝕まれてゆくわけであります。
ですがそこにこのブログでも度々登場する我らがツアー・マネージャー、ドクター・キコがまた手腕を振るって我らを窮地から救ってくれるのでした。時系列はバラバラですが、その数々をご紹介します。
まず、特に印象に残るのはツアー終盤に連れて行ってくれたドイツ、バート・ヴェーリスホーフェンというミュンヘン近くの町にあるスパ。Therme(テルメ)という名のこの巨大な施設、平たく言うとスーパー銭湯的なものにあたりそうですが、簡単に説明すると大きく2つのエリアに分かれていて、施設全てを老若男女共有。水着着用が義務づけられたエリアとそうでないエリア、つまり一糸まとわぬ状態です。
解放感が素晴らしかった。いやらしさなど微塵も感じません。
この施設の看板はボッティチェリの〈ビーナスの誕生〉がモチーフで、中世から受け継がれる昔からの慣習がやはり根底にあるのだろうとか、まるで自分がそのルネッサンスの絵画の一部になったようだとか、想像しながら。最初は少し戸惑っていましたが、キコがタオルを払い去って生まれたままの姿で快活に小走りしながら浴場に飛び込んでいくのを見て、我々の羞恥心は音を立てて崩壊。多くの人が入浴する、温水プールのような大浴場に浸かりながら全裸でビールを飲む5人。今思うとすごい画ですよね、ははは。
そしてサウナはなんと10種類以上、初めてサウナをハシゴしました。最高でした。なかにはワークショップをやっているサウナもあって、インストラクターの方が説明、そしてパフォーマンスをしてくれるのですが、音楽は何故か壮大なヘヴィー・メタル。斬新な組み合わせです。
さて、心身ともに癒されたあとに向かったのは
この日の全員の安眠は保証されたわけです。
フランス、シャルトルにあるノートルダム大聖堂。世界遺産にも登録されているのも納得の、重厚かつ壮麗な建造物でした。
このシャルトルという地は、前にフランスのフェス回りの時にも紹介したアルコール度数55%という小粋な飲み物シャルトリューズ発祥の地でもあるので、もちろん痛飲。深い眠りに落ちたことは想像に容易いかと。
現代音楽/電子音楽の重要人物、カールハインツ・シュトックハウゼンが教えていたというドイツ、ケルンの大学へ。
覗いた教室ではちょうどテストの最中だったようで、その緊迫感に映画「セッション」を思い出す。
そしてドイツといえばシュニッツェル。
と共にケルン名物、ケルシュ・ビール。
ふたたびドイツ、デンマーク国境近くの町、リューベック。スウェーデンまでの移動途中の中継地として一泊。
やはり肉、牛のホホ肉。
つまり言いたいことは、このツアーで少し体重が増えたということです。これは稀で、普段あまり食べたいものが見つからない、もしくは落胆することが多いので、自然に減少傾向にあったのですが、毎回美味しい食事にありつけるよう手配してくれるキコに感謝。
最後はイタリア、ミラノ。
ちょうどこの日の公演終了後、12時を過ぎるとサヴェージズのドラマー、フェイの誕生日だったので、楽屋でサプライズ・バースデー。
次の日はデイオフということもあり、キコの友人マッシモ宅へお邪魔します。
その後、彼の友人たちが集うパーティーへ。
ヴァンでの移動中には、ドイツ入国と共にスピーカーから大音量でクラフトワーク“Autobahn”、スウェーデン入国と共にアバ“Dancing Queen”など、狙い澄ましてきて我らを笑わせてくれるわけです。
それがドクター・キコ。愛すべき男です。
他にも書きたいことは多々ありますが、読み疲れしてしまうのもなんなので、散文的な写真の羅列で失礼します。
我々はこれで一先ずツアー終了となりますが、サヴェージズの旅はまだまだ終わりません。これを書いてる今も、勇ましくアメリカ・ツアーを続けてくれていることでしょう。合掌。