僕達にとって、日本の夏は特別なものだ。
思い返せば2007年に完全DIYで行なった初めての日本ツアーも夏だった。
そして紆余曲折を経て2013年に〈FUJI ROCK FESTIVAL〉に初出演、2015年には〈SUMMER SONIC〉の〈Hostess Club All-Nighter〉に出演、そして今年は3年ぶり2回目の〈フジロック〉出演が決まった。

日本の夏が冬より切なく感じるようになったのは、明らかにロンドンに移住してからのように思う。あれだけ五月蝿かった蝉の音は、気を抜くと涙腺にまでひっかかってしまいそうだし、いままで地球外にでもいたのではないかというぐらいの重力を感じさせる夏の湿気ですら、とても愛しい。

僕は日本の一時帰国を〈仮出所〉に例える。別にロンドンが牢獄と言いたいわけではないのだが、それぐらい非日常的な時間になるのだ。今回僕は、その仮出所期間を最大限に活かすべく、1か月に合計6プロジェクト、約20本のライヴのブッキングを入れた。地下労働施設が限られた地上滞在期間で、伊藤カイジが仲間達の借金返済をめざしてギャンブルに励んだかの如く、音楽的に充実させると同時に、極限まで自分を追い込みたかった。

共作者、共演者、そして毎日まったく違う現場から新しい自分を見つめ直し、一回壊してでもミュージシャンとして、人として成長したかった。強いて言えば、〈フジロック〉前に17本ぐらい入っていたため、その日までにも成長して仕上げたかった。

今回はそんな各プロジェクトをなぞりつつ、僕にとって人生最高のライヴとなったと言い切れるほどの、BO NINGEN〈FUJI ROCK FESTIVAL '16〉の〈WHITE STAGE〉をお話の締めとして、お送りしていこうと思う。予想以上に長くなってしまったが、正直どこも削りたくない。もう個人のブログにまとめて書けよ、という幻聴が聴こえてくる長さである。長いと感じた方は、後日公開される後編の〈フジロック〉のくだりを読んでくれれば問題ない。

2007年の我々

 

6月29日:KISEKI w/Maison Book Girl @新宿Motion

今回の滞在の個人的一発目は、食品まつり a.k.a foodmanとのDuoであるKISEKIのライヴから始まった。オマケに僕がいま一番推しているアイドル・グループ、 Maison Book Girl(以下、ブクガ)とのアイドル現場対バンである。

このKISEKIというユニットは毎度即興であるが故、毎回ライヴの模様が違う。むしろハプニングやヒューマン・エラーのなかでグルーヴを探していくという意味で〈奇跡〉という名前をつけた。
この日は我が親愛なるブクガ、そしてブクガヲタに向けたアイドル音楽への可能性をブチまける、ラップが多めなセットとなった。ブクガとのコラボは、〈とにかく好きにやってください!〉という無茶ぶりにもかかわらず、最強のポエトリー・リーディングを乗っけてくれた。また是非ともコラボしたい才能である。アイドル音楽を敬遠してる方も、騙されたと思ってチェックしてみてほしい。

喜びを隠せない筆者とブクガ、そして不審者丸出しの食品さん
 
Maison book girlの2016年のEP『summer continue』収録曲“lost AGE”
 

“lost AGE”の筆者によるRemix。後付けでサクライさん(サクライケンタ、Maison book girlのプロデューサー)の許可を得たが、元々は作品のコメントをお願いされていたにも関わらず、〈Remix作っちゃった〉と勝手に送りつけたものである

 

6月30日:食品まつり @渋谷glad

2日目は前日に続き、食品まつりとのライヴ。ただこの日は、ベーシスト/MCとして彼のステージにゲストで参加するという形であった。そして現場はこれまたマイ(ウー)メンであるところのあっこゴリラちゃんの生誕祭、Hip Hopの現場である。こちらもマイメン・GezanのマヒトによるHip Hop名義=peepow、そして僕が昔からずっと音源を聴きまくり、どうしてもライヴを見たかったOMSBのライヴも。どこまでも熱いKMC、そして締めのあっこゴリラちゃん。
僕が日本でPhysicalを感じるリアルなミュージシャンが全員集まっていたと言っても過言ではない。ステージでも客席でも踊りに踊りまくり、打ち上げでもサイファーしまくりと、最高な1日であった。ありがとう、そしておめでとうあっこちゃん。

リハ前に当日のBeatを作る食品まつり。作ったやつは下のVideoで聴けます
 
当日のダイジェスト(2分22秒頃から) 

 

7月1日:KISEKI @大阪・心斎橋Stomp

場所を大阪に移し、KISEKIの初大阪ライヴ。この日は食品まつりの最新作『ez minzoku』のリリース・パーティーであり、大阪のFootwork現場初体験でもある。

食品まつり a.k.a foodmanの2016年作『ez minzoku』収録曲“Beybey Feat.Taigen Kawabe From Bo Ningen”。食品さんの最新作、要チェックである。僕もこの1曲目でゲスト・ヴォーカルとして参加させて頂いている
 

僕は普段イギリスにいるので、 独自の進化を遂げる日本のFootwork/Jukeシーンに大変興味があったものの、SoundCloudにあがる音源や、TwitterまたはFacebookでしか動向をチェックできておらず、アイドルとHip Hopに続いてこの日の現場を物凄く楽しみにしていた。結果、DJのサウンドチェックから踊りまくり、呑みまくり、フロアでアカペラ・サイファーをしまくった結果、完璧に出来上がってしまい、朝方遊びに来てくれたSeiho君にラップで絡みだしたり、テキーラのショットを呑んだ瞬間に反転、安全地帯へリバースするという曲芸も披露。危うく〈MCショットtheマーライオン〉という 二つ名をゲットしそうになる。

ライヴの模様。朝方カプセルホテルのサウナにて酒を抜き、仮眠してから観光し東京へ帰る
 

 

ハロー著作権 in 西成japan
 
 
潰れる筆者&観光

 

7月3日:KISEKI @仙台

仙台は我々BO NINGENにテキーラを教えてくれたAOBA NU NOISEという大好きなクルーがいる、大好きな街である。

その首謀者こと Kamata君率いるWaikiki championsのイヴェントにお呼ばれした。KISEKIとしてのほか、僕はDJ、食品まつりはソロ・セットもプレイ。出演者とお客さんの垣根が最初からなく、最初から最後まで可能性が拡張されていくパーティーとなった。最後は食品さんのJ-pop DJで締め。

打ち上げまでの移動中、〈club snoozer〉で仙台に来ていた田中宗一郎氏に再会。最高に酔っぱらっていたため、先日のSeiho君に引き続き、久しぶりの再会とリスペクトをラップに込めてお届けする。笑顔で受け止めてくれた田中宗一郎氏には改めて感謝(と謝罪)をお送りしたい。周りのバンドマンの方から浴びた〈BO NINGENのヴォーカルってこんな人だっけ?〉という視線(四川)も含め、筆者はいくら酔っぱらっても全て覚えているスタイルなのである。

筆者のラップ、毎日違う現場で得るものを伝えるフリースタイル
 

翌日は長距離バスで帝都に帰るも、夜にBO NINGENのインタヴューが入っており、撮影もあるとのことで、さすがにボロボロのままでは行けない。ということで、東京到着と同時に二人で渋谷の銭湯にくりだす。実はここ、僕が産まれてから中学二年生頃まで過ごした地元であるのだが、この銭湯は行ったことがなかった。30歳になってマイメンと共に地元の銭湯に初めて入るというのも感慨深いものである。

改良湯
 

この日は食品さんのススメで水風呂に初挑戦。確かに、熱いお湯と交互に何回も入っていると頭がパキパキしてくる。僕達のように、ドラッグもやらなければ合法/脱法モノにも手をつけない健全な方々にはオススメのトリップ方法である。でも心臓が弱い方は気をつけてね。

 

7月5日:DJ @月見ル君想フ

この日はおやすみホログラムというアイドルと、ザ・ビートモーターズというバンドの異種格闘技イヴェントにオープニング/転換DJとしてお呼ばれした。

そしてこれが、自分のDJ史上でも選曲が非常に難しい現場となる。オープニングから最初のバンドに繋ぐまでも難しかったが、バンドからアイドルへ転換する際にどのような選曲をするかで非常に頭を悩ませた。

自分がDJをする際に、いかにお客さんが知らないであろう曲を、雰囲気を壊さずにご紹介できるかというところに気を遣っている。自分がお客さんで聴く際、待ちに待ったtuneが来た時に興奮するのは勿論だが、同時に新しい音楽との出会いも求めているからだ。

転換中、次に出演するおやすみホログラムをかけるわけにはいかないし、何かとバチバチすることも多いアイドル現場。〈現場とは違うアイドルの曲をかけて、Twitterでdisられた〉という友人の証言もあるので、適当に好きなアイドル曲を流せば良いわけではない。結果、Deep Medi系統の渋い系及び、Andy Stottなどの透き通る系Bass Musicと、少し落ち着いてる系のアイドル曲を混ぜることで対応した。事前におやホロのファンは元研究員(BiSのファン)が多いという情報も得ていたので、僕が一番好き、かつそこまでBiSっぽくない “太陽のじゅもん”を流した。安易ではあるが、〈おっ〉と思わせられていたら嬉しい。

おやすみホログラムの2016年のライヴ映像
 

ちょっぴり楽しみにしていた、おやホロのライヴ(バンド・セット)は予想以上に楽しく、僕も客席で飛び跳ねたり横のヲタさんと肩を組ませてもらったりと、最大限に楽しませてもらった。

そして月見ルはやっぱり雰囲気がいいな〜。

おやホロの2人と撮ってもらいました。ち、近い……

 

7月6日:BO NINGEN w/ Mouse on the Keys @渋谷La.mama

そしてついにやってきた、今回一発目のBO NINGEN。
〈VS〉シリーズ第1戦目の相手は、数か月前にロンドンでライヴを拝見していたMouse on the Keys。ちなみに今回の〈VS〉シリーズは全バンドが初シングル・マッチであった。

我々は日本でのライヴのほうが緊張する。凱旋、日本語の意味を全て理解されてしまう等の要因もあるが、日本のライヴハウスの作り、お客さんの集中力、広義に渡れば日本の音楽文化の話まで言及することになってしまうので、そこらへんはMikikiで行ったCrossfaithとの対談を参考にして貰うとしよう。

★参考記事
Crossfaith × BO NINGEN、海外で必要なのは〈気合い〉! バンド界の日本代表が、世界を舞台に高い目標を達成できる理由

そんなこんなで、リハはいつも以上に緊張していたの憶えている。それでも本番が始まってしまえば、課題は残りながらも初期衝動が入り交じるライヴに。Mouse on the Keysはポスト・ロックの枠を越える演奏力と表現力があるバンドであり、小さい箱で観てさらにダイナミクスとパワー感が伝わってきた。

2017年1月25日にリリースされるMouse on the Keysの新EP『Out Of Body』収録曲“Earache”

 

7月7日:Yosuke Torii @CALM & PUNK GALLERY

今年3月に行ったPrimal Screamとのツアーに同行し、そのツアーとメンバーのロンドンにおける生活風景を撮影した鳥居洋介による写真展〈BO〉、及び写真集「BO」のオープニング・パーティーがCALM & PUNK GALLERYで行われた。

鳥居君とは長いもので2013年の〈フジロック〉で出会って以来、3年の付き合いだが、今年のツアー同行、オフ時に筆者の部屋で行った共同生活により、さらに絆が深まった。ライヴ写真のエッジの尖り方は言わずもがな(本稿後半の〈フジロック〉での写真は全て彼の撮影したものである)。

今回の展示/写真集で注目したいのは、ステージ以外でのメンバーの表情である。彼氏か彼女、または家族にしか引き出せないような表情の写真が非常に多い。写真集「BO」のほうは在庫が残り少ないが、まだ発売中なので是非チェックしてみてほしい。

★写真集「BO」の詳細はこちら

自分自身の写真も含めて、恥ずかしくもあるが大好きな写真達(展示と写真集では写真のチョイスが異なります)
 
遊びに来ていただいた宇佐蔵べにさん(あヴぁんだんど)

 

7月8日:KISEKI @東京・Forestlimit

この日はロンドンからの盟友であるFumie Cが企画する〈BANG THE NOISE〉に、またしてもKISEKIとして出演。2日前のバンドの現場とは打って変わって、この日は関東Gorge勢がブッキングされたイヴェントである。

Gorgeというジャンルについては説明すると長くなるので、横着な方はこちらのまとめへ。もっと突っ込んで脳と耳を騙されたい方は、国内唯一の専門レーベルGORGE.IN公式サイトを参考にどっぷりハマってほしい。

志茂田景樹をラッパーとしてGorgeに引き摺り込んだ張本人・HiBiKi MaMeShiBa氏と、即興を得意とする東京アングラDJ特攻隊長のDJ MEMAI氏との、敢えてお互いのスタイルをリサーチせずに臨んだという即興DJ対決。非常にスリリングでいて、物凄く刺激的であった。これからDJを始めたい方は、これを観てDJという概念を一度壊してからDJを初めてほしい。(あらゆる邪悪な理由で)DJ始めました。という知人がいたら、この日の動画を見せて反応をチェックほしい。その友人とあなたの関係性が見えてくるはずだ。

DJ MEMAI x HiBiKi MaMeShiBa @Forestlimit
 

そして僕が一番期待していたのが、クラーク内藤氏である。一人でバッキング・トラックを操りながら歌う、彼のようなソロのスタイルの場合、カラオケにならないようにする一番大事な要素とはなんであろうか。

僕はPhysicalであるか否かであると思う。前記のあっこゴリラちゃんのイヴェントに出ていたMC全員にも言えることだが、皆Physicalであり、会場でライヴをする意味が伝わってくるが故に踊れるのだ。体型の話ではなく音が、パフォーマンスが肉体的なのである。そして、奇抜な動きをすれば良いというわけでもない。そういう意味でも、クラーク内藤氏のライヴは非常にフィジカルだった。そして〈この人、絶対にうちのドラマーのMon-chanと気が合うだろうな〉と心の中で思ったのだが、予想通り2人は意気投合して、この日、そして帰国前のBO NINGENのイヴェントの打ち上げでも熱心に笑顔で話しているのを見かけて、ニヤニヤ頷く筆者であった。

クラーク内藤の2015年のライヴ映像
 

そんなライヴが続いたあとで、KISEKIもフィジカル度を増さなければ嘘になる。この日は食品さんもマイクを持ち、2MCスタイルで攻めに攻め、母親が観に来ているのも忘れて色々と恥ずかしい単語まで溢れ出ていたという。それもこれも食品まつり氏のおかげだ。色々な意味で自分の壁が壊れていくのを感じた。

 

7月9日:Taigen Solo @新宿LOFT

前日は〈BANG THE NOISE〉の主催の2人、Yuki、Mon-chanを含む仲間内数名で、会場周辺で始発を待ったのだが、この日のイヴェントの会場入りが14時だということが判明する。そして食品さんの提案で、新宿LOFTの近くのサウナに泊まることになった。今回の大阪、仙台なと、地方で泊まることはあれど、東京にいながらサウナに泊まるのは初めて。

サウナで流れるEXILE TRIBE主演映画「HiGH&LOW THE MOVIE」のトレイラーがいろいろな意味で強烈だった。

そしてそのまま恒例の水風呂に入る。食品さんが言うところの〈臨死体験〉を楽しんでいると、おっさんが頭から突っ込み全身潜水。その波紋で我々は現世に引き戻された。

前回は水風呂だったが、今回の 初体験はサウナの大型仮眠室である。新宿でもかなり大きなサウナであったため、100人は優に越える人数が寝ている。そしてみんな鼾が尋常でない。微妙な仕切りはあるのだが、タコ部屋の雑魚寝ってこんな感じなんだろうな。と、非日常感のなか就寝。

翌朝、先に起きたので食品さんを起こそうとするも、横の方が睡眠時無呼吸症候群だったようで〈む“う”っ“!!!!がコッ!!!ぼごっ”!!!!〉という轟音アラームにより食品氏も無事起床。爽やかな気分でライヴ会場入りを果たした。

しかし、サウンドチェックで問題が起きる。僕の愛用しているループ・マシンが壊れて動かなくなったのである。翌日から機材も変えていないので、Laptopなどもなく、これはピンチ。結果、食品まつり氏にヒューマン・サンプラーになっていただくことにより、無事ステージをこなす。30分セットでアカペラ部分が10分はあったであろう、チャレンジングなソロ・ライヴとなった。

 

7月12日:BO NINGEN w/tricot @代官山UNIT

〈VS〉シリーズ第2戦は、スロバキアのフェスで初めて会ったtricot。対バンが決まる前から、彼女達のヨーロッパ・ツアーで撮影されたこのPVを観まくり、聴きまくっていた。

tricotの2016年のEP『KABUKU EP』収録曲“節約家”
 

彼女達のバッキバッキのライヴを最初から最後まで鑑賞。やはり自分の足で海外ツアーをしているバンドは性別関係なく、サヴァイヴァル力みたいなものを感じる。

そんなtricotのステージを観ながら衣装に着替え、ストレッチもステージ脇で行い、そのまま気合いを入れて自分達のライヴをする。本当に楽しみにしていたからこそ、殴り合いで負けるわけにはいかない。

対バンとはこのようであるべき。と噛み締め、楽しい時間は一瞬で終わってしまった。いつかまた、再戦希望です。

 

7月13日:EROS ERRORS @阿佐ヶ谷harness

この日はAcid Mothers Temple総帥、河端一氏 とのDuo=EROS ERRORSの1st Album『Physical Eros』Launchパーティー。

こちらのCDは限定300枚プレスにして、シリアル・ナンバー入り、B5ピンナップ・ジャケット仕様。〈過去2度のライヴ音源を編集、更に吉田達也のドラムもオーヴァーダブされ、破壊力も更に増幅! 世代を越えたサイケデリア達の邂逅、暗黒面より光明界へ至らんとする恍惚曼荼羅!!〉

ということで、現在会場販売のみ。筆者の来日公演(次はいつだよ)か、河端さん関連の現場でゲットしてほしい。

表ジャケ
 
裏ジャケ
 

Mainlinerの時もそうだが、河端さんには本当に色々なものを引き出して貰える。特に僕は即興中、理論等で考えるほうではないのだが、一緒に演奏していて自由を与えて貰える。自分は大学在籍中にDavid Toopの即興Workshopの授業で自分の即興演奏についての地盤が出来たと思っているのだが、食品さんや河端さんと即興でDuo公演をさせて頂くうちに、まだまだ拡張していってるのを感じ、嬉しい限りであります。

 

7月14日:Mainliner @UFO club

前日に続いて河端さん、そして志村さん(みみのこと、ex Acid Mothers Temple)を加えてのMainlinerとして1年半ぶりのライヴである。このMainliner、ご存知の方も多いと思うが僕は2013年に加入。ベース/ヴォーカルとしては2代目でして、加入当時はかなりのプレッシャーがありました。

初代はHIGH RISEとしても有名な、言わずと知れた南条麻人氏。Mainliner初期の名曲にして、90sサイケの金字塔。ヴォーカルもベース・ラインも色気がヤバイ。

Mainliner“Black Sky (from mellow out)”
 

この曲を聴いてもらっても分かる通り、Mainlinerは1曲の長さが大体20分ぐらいあり、同じリフが永遠と続くミニマル・サイケ・ミュージックである。BO NINGENを中距離走(×曲数)に例えるならば、Mainlinerは長距離マラソンである。腕への負担も半端なく、あの河端氏をして〈これまでで演奏が一番辛いバンド〉と言わしめるこのプロジェクト。演者もお客さんもランナーズ・ハイになってなんぼのグルグルサイケ空間、僕も1年半ぶりに酔わせて いただきました。

 

7月16日:KISEKI @名古屋JB's

本当に色々なところに挟まってくるKISEKI、この日は食品さんの地元である名古屋でのライヴ。さらに名古屋Hip Hopの聖地であるJB'sでのステージである。ライヴ5連発の初日の出番が28時、さらに即興で1時間というのは大変に鬼畜であったが、踊りまくった後にどのようなライヴができるのか挑戦でもあった。

そしてこの日はLILYちゃん(Seapunkの開祖として知られるUltradamonが性転換して帰ってきた!)from USA、KISEKIは食品さんは地元だが僕はfrom UK、日本フットワーク第一人者であるD.J.Fulltono氏 from 大阪、フットワーク任侠アニキことCRZKNY(くれいじーけにーちゃん)from 広島、そしてそれを迎え撃つ名古屋勢という、まさにベース・ミュージック宇宙戦争と言っても過言でないメンツ。これを一晩に呼んで、DJとしてもブチあげてくれた GOODWEATHERのERI氏にはガチな感謝とリスペクトしかない。

そして名古屋勢のSOMA奏間はロンドン時代の音楽仲間でもある。住む国は違えど、低音で宇宙をめざしていると世界のどこかで会えるものである。僕は過去にクロアチアの〈Dimension〉という低音フェスに出演した際、ステージでサウンドシステムのクルーとして来ていた高校の同級生と再会したこともある。

僕がイギリスに行ってからベーシストとして多大なる影響を受けた低音音楽だが、日本で体験できるだけでもありがたい。それなのに、一晩でこれだけ色の違う低音音楽を聴けるとなれば、自分のライヴ前であろうと踊るしかあるまい。踊りまくったのちに1時間のライヴ(28時開始)は正直かなり疲れたが、素晴らしい低音体験により、とても清々しい朝を迎えられた。

ウルトラデーモンの2012年のEP『Step Into Liquid』収録曲“Step Into Liquid”
 

LILYがUltrademonだった時代からの1曲。Vaporwaveと並び、 Seapunkもインターネットの歪さが表れた音、そしてヴィジュアルである。筆者はこのようなピュアさと悪意、それすらもまとまってミュータントになっている音楽シーンが大好きだ。

本当に最初期から日本のFootwork/Jukeを支えるFulltono氏、今年の10月には食品まつりと共にPolandで開催された〈Unsound Festival〉への出演も果たし、12月にはLAでの〈Low End Theory〉を含むUSツアーも行っている。この2人が世界に羽ばたいていくのは、日本の誇りである。

DJ Fulltonoの2016年のBoiler RoomでのDJセット

 

7月17日:Mainliner @難波Bears

そんな低音体験を終えて少し仮眠、そして電車で2時間半ほどかけて大阪へ。2週間前に自身がショットtheマーライオンと化した大阪へ再上陸である。

大阪のアングラ聖地、難波bearsでMasonna大先生との再会を果たした。この日のMasonna氏は2分20秒という、氏にしてはかなりのロング・セットであった。しかもSTOP & GO的な構成など、かなりの新境地。本人に伝えると笑顔で「今年はこんな感じでいこうかなと思って」と嬉しそうに話してくれた。

10年前にMasonna氏のこのビデオを観て、僕の音楽、パフォーマンスに関しての価値観は180度変わったと言っても良い。ノイズだけでなく、ロックの大先輩なのだ。

そんな短距離走中の短距離走であるMasonna氏のライヴの後に、マラソン的なMainlinerのパフォーマンス。本当に今回、毎日のブッキングが絶妙すぎた。


7月18日:Mainliner @神戸Helluva Lounge

関東にお住まいの方には東京のForestlimitに行くのをオススメしたいのだが、関西地方にお住まいの方にはぜひとも、神戸Helluva Loungeに足を運んで頂きたい。この2店の共通点は、日本にいながら外国にいるような感覚が味わえる、貴重なスポットというところだ。雰囲気やかかっている音楽だけではなく、カルチャーとして日本の音楽シーンとは一線を画している。

Helluva Loungeからは、バンドと共に関西のカルチャーを育てていこうとい気概を感じる。とても色が濃いお店ではあるが、音楽が好きであれば必ず同調できる。と、筆者は思う。この日はそこでRuinsの吉田達也氏と再会した。河端さんとのEROS ERROSの1stアルバムにて、吉田氏にマスタリングを頼んだのだが、なんとアルバムの大半をしめる2曲目に「ドラム入ってたほうがいいかなと思って」という理由により、ドラムがオーヴァーダブされていた。

たぶんマスタリングを頼んで、ドラムが入って返ってくるのは世界初だと思う。しかもそのドラムが、テンポも拍も変わりまくっている僕と河端さんの音にピッタリ合っているのだ。楽曲として良い方向に昇華したのは言うまでもない。

Ruinsが93年にサンフランシスコで行ったライヴ映像
 

長いことRuins Aloneという吉田氏のソロ・プロジェクトとして活動していたRuinsであるが、期間限定で 第3期ベーシスト増田隆一とのRuinsが活動再開するとの大ニュースが。12月4日には高円寺SHOWBOATでもライヴが行われた。ズルい! UKにも来て!!!

そしてこの日でMainliner千秋楽。今回は3発だけだったけど、新しいことをいっぱい学びました。プライヴェートでは、この日のライヴ前に人生で初めての競艇場に行く。よりによって人生初が尼崎競艇場である。ここでは公開できないようなおっさんの罵声など、最高の音素材が録音できたので、7,000円スッたけど心は穏やかに大快晴。

 

7月19日:Taigen Kawabe Solo @大阪

翌日は大阪に戻り、Kill My 27というバンドにソロで呼んで頂く。この日は自分のライヴの後、Kill My 27のステージにも飛び入りでヴォーカル参加させて頂いた。そして、今年のSavagesツアーから導入した時代遅れのiPhone 5sの液晶がついに割れる。過酷なツアーの身代わりになってくれたのだと思いたい。

そして、この日はまた物凄い再会をすることに。Facebookで数か月前に連絡をくれていた小学生の同級生との、本当に何年ぶりだ?という再会である。しかもその同級生がやっているバンドが 空間現代という、かなり近いところのシーンにいるバンドであったことに驚きを隠せない。前々からmentionしている通り、僕が通っていた和光高校出身のバンドで交流があるのは、先輩のTHE BAWDIES、在日ファンク(トランペットの村上基は同級生)、後輩にOpen Reel Ensemble、OKAMOTO’S、チャランポランタンなど、数えればキリがないほどいるのだが、まさか小学校の同級生がこんなにカッコ良いバンドを第一線で続けているとは! 数年前からBO NINGENのTaigenはあの〈大元(筆者の名前の漢字はこう書きます)〉ということに気付いていたが、何か音楽的に交わるまで連絡するのはダサい!と、時を待ってくれていたらしい。そしてロンドンでのライヴが決まりそうとのことで、連絡をくれたのだ。こんなに嬉しいことはない。

空間現代の2015年のライヴ映像
 

ライヴ後はカプセルホテル(今回のツアーでどっぷりハマってしまった)の天然温泉とサウナにて、その感動を噛み締めながら身体を浄化させる。翌日はついに、5連戦最後となる渋谷WWWでのBO NINGEN公演だ。

後編へ続く

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。〈フジロック〉やオーストラリアの〈Big Day Out〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、2014年に最新作『III』をドロップ。さらに、37分に及ぶ大曲となる盟友サヴェージズとの共作シングル“Words To The Blind”を発表。そして、2016年には日本限定のミニ・アルバム『Kizetsu no Uta / Live in Paris』(ソニー)をリリースし、2年ぶりに〈フジロック〉へ出演。現在は今年2度目となるプライマル・スクリームのUKツアーに帯同中! そのほか詳しい情報はこちらへ!

BO NINGEN“Kizetsu no Uta”